先日、『ライフサイクル投資術』という本を紹介しました。若い内はレバレッジを掛けてでも株式のエクスポージャーを上げた方がいいと。決して過剰なリスクを取れという意味ではなく、投資期間全体の株式エクスポージャーを各年に均すべきで、そうすることでリスクを合理的に下げることができるというものです。

分散と言えば銘柄分散にばかり注目が集まりますが、それと同じくらい時間分散も大切。コツコツ投資することではなく、若い内は借金をしてでも株式エクスポージャーを引き上げることが本当の意味での時間分散だと。

なるほど、深イイ話。今まで相当数の投資本を読んできましたが、レバレッジ投資=時間分散という発想は初めて聞きましたし、かなり合理的で面白いなと思いました。

「ライフサイクル投資術」の実践は以下のステップで行います。

①現在保有している金融資産の時価を把握
②将来貯蓄の現在価値を算出する
③ポートフォリオに占める株式の割合を決める(著者推奨は83%)
④必要な株式エクスポージャー、つまり(①+②)×③を計算
⑤④が①を下回る場合、オプション等を利用してレバレッジかけて株式エクスポージャーを④に近づける。ただし、レバレッジ比率は最大でも2倍とする。

①は2,500万円
③は著者推奨の83%とします。

問題になるのは②です。将来貯蓄の現在価値なんてどうやって算定すればいいのか・・。転職は当たり前、企業ライフサイクルの早期化、家族形態の変化、そんな時代に将来の給料、ましてや貯蓄額なんて算定できるでしょうか。100歩譲って算定できたとして、現在価値に割り引くときに利率は何%に設定すべきか。

②(将来貯蓄の現在価値)はえいやでざっくり計算するしかないです。楽観ケース、普通ケース、悲観ケースなどパターンに分けて算出してみるとか。エクセルの数式を使えば、色んなパターンで計算できます。

複雑なので計算過程は省きますが、私は将来貯蓄の現在価値を以下の通り算出しました。60歳までの貯蓄から計算し年金は考慮外にしました。あ、あと一生独身の前提です・・。
・楽観ケース:10,200万円
・普通ケース:6,980万円
・悲観ケース:3,250万円

それぞれのケースで必要とされる株式エクスポージャーと、かけるべきレバレッジ(いくら借金すべきか)を算出してみます。

楽観ケース

①現在の保有金融資産
2,500万円

②将来貯蓄の現在価値
10,200万円

③株式の割合
83%

④必要な株式エクスポージャー
(2,500万円+10,200万円)×83%=10,541万円

⑤必要なレバレッジ額
10,541万円-2,500万円=8,041万円

8,041万円を借金するとなると、レバレッジ比率は2倍を超える。
よって、株式エクスポージャーはレバレッジ2倍の5,000万円とする。

普通ケース

①現在の保有金融資産
2,500万円

②将来貯蓄の現在価値
6,980万円

③株式の割合
83%

④必要な株式エクスポージャー
(2,500万円+6,980万円)×83%=7,868万円

⑤必要なレバレッジ額
7,868万円-2,500万円=5,368万円

5,368万円を借金するとなると、レバレッジ比率は2倍を超える。
よって、株式エクスポージャーはレバレッジ2倍の5,000万円とする。

悲観ケース

①現在の保有金融資産
2,500万円

②将来貯蓄の現在価値
3,250万円

③株式の割合
83%

④必要な株式エクスポージャー
(2,500万円+3,250万円)×83%=4,772万円

⑤必要なレバレッジ額
4,772万円-2,500万円=2,272万円

2,272万円を借金してもレバレッジ比率は2倍を超えない。
よって、株式エクスポージャーは計算通り4,772万円にする。

取れる株式エクスポージャーは意外と多い

楽観ケース、普通ケース、悲観ケースどのパターンでも、株式エクスポージャーは5,000万円ほど取るべきという結果になりました。レバレッジは悲観ケースでもMAXの2倍に近いです。人的資本の安定度が高いサラリーマンは、金融資本では思いのほかリスクを取っても問題ないということです。

リスクを取ってリターンを狙いにいくぞ!という発想ではなく、あくまでも将来貯蓄を予め株式マーケットに投入して時間を適切に分散しようという発想です。

とは言え、借金するという事実は変わりません。レバレッジ比率は最高2倍とは言え、相場が大きく下落すれば短期的な被害は免れません。米国がリセッション入りしたらS&P500指数は30%ほど下落すると、ブルームバーグは先日報道していました。2倍のレバレッジをかけていれば損失額も2倍も膨らみます。

時間分散のためとはいえ、今のバリュエーションでレバレッジをかけるのは合理的だろうか。この辺はよく考えて実践する必要がありますが、レバレッジをかける準備はしておきたいと思います。かつて一度諦めたレバレッジ投資ですが、また熱が高まってきました。

(関連記事)
黄金の扉を開ける賢者のレバレッジ投資術(ライフサイクル投資術)