リーマンショック以降、米国経済は回復が続いています。途中調整局面はあったものの、大きな暴落を経験することなく約10年が経過します。

以下は2008年1月1日から現在(2018年8月)までのNYダウのチャートです。


2009年3月に6500程度で底を打った株価は、FRBのQE政策(量的金融緩和政策)の追い風もあってグングン回復していきました。ご存知の通り今では25,000を超えています。10年で4倍になりました。

こういう株価チャートを見ると「そろそろ次の暴落があってもおかしくないかな~」、「今はもう割高かな~」と思うかもしれません。

しかし、チャートだけを見て株価の割高割安を判断することはできません。株価は企業の利益を裏付けとして値付けされています。そこで、企業の利益と株価の関係つまりPERを見ることが重要です。

私の意見としては、今のS&P500指数は割高ではありません。PERは確かに高いですが、低金利(低インフレ)であることを考えれば、高いPERも妥当だと考えているからです。

 

低金利を考慮すれば、今の高いPERも妥当。
1990年初頭、今と同じくらいのPERだったが、NYダウは爆上げした。

で、ですね、この記事を書くきっかけがあったんです。最近たぱぞうさんのブログに超興味深いデータが掲載されていてうおー!と一人で唸ってたんです。

すみません、勝手に記事のリンクを張らせて頂きます。

S&P500の150年チャートとPER推移(たぱぞうの米国株投資)

もうタイトルからしてそそられますw。

「え、S&P500のPER150年チャートなんて見れるの!?」って期待してクリックしたら、期待を裏切られることはなくホントにS&P500のPER推移150年分が掲載されていました。

たぱぞうさんが記事でご紹介してらっしゃった外部サイトがこちらです。
multpl.comというサイトです。

こうやって英語の海外サイトを発見できるのは羨ましいです。私は英語は基本苦手なので、企業のIR情報と年次報告書(10-Kレポート)くらいしか見てません。それもグーグル翻訳のサポートをなるべく利用して閲覧しています。

あ、で、このmultpl.comにあったS&P500のPER推移がこちらです。

めっちゃおもろいデータや~!(≧▽≦)
そっこーでお気に入り登録しました。

どうでしょうか、ITバブルの2000年前後、リーマンショックの2008年前後を除けば、今2018年は過去の推移と比較してもPERは高いです。実績PERで24.75倍。

チャートで見てもPERで見ても、確かに米株は割高な危険領域に入っている、、ように見えるかもしれません。

しかし、私は今のこの高いPERを危険視していません。それは今は過去に比べると遥かに低金利だからです。

時系列でPERを比較する時は、長期金利(期待インフレ率)を考慮する必要があります。金利が低いならば、PERが高くても(株式益回りが低くても)問題ありません。

では、過去の長期金利(米10年債利回り)の推移はどうなっていたのでしょうか?

さすがに過去150年のデータは探せませんでした。1920年~の約100年分の10年債利回り推移が以下です。


過去100年で見ても、現在の米長期金利は低い水準です。最近FRBが利上げしており、先進国でもっとも先んじて緩和的な金融政策から脱却を図っている米国ですが、それでも金利はこんなに低いのです。

特に1980年代からの急降下は印象的です。1980年代にはもっとも高い時で15%近い利回りがありました。私は生まれる(1987年生まれ)ちょっと前くらいですかね。

実際に、1980年初の米国では10%近いインフレが起こりました。その後1990年初まで4~5%の物価上昇が続きました。このように物価が上昇する局面では、株式の名目リターンも相応に高くならないと投資家は購買力を増やせません。

つまり、期待インフレ率が高く長期金利が高い状況ではPERは低く(株式益回りは高く)ないと、誰も株を買わないのです。


2018年現在のS&P500の実績PERは24倍で、直近では1980年代後半~1990年代前半の頃のPERと同じです。しかし、当時と今とでは長期金利(10年債利回り)の水準が全く異なります。当時は6%~10%ありましたが、今は3%前後です。

しかもですね、1990年代と言えば20世紀最大の上げ相場を演じた期間です。2000年にITバブルが崩壊するまで米株は上昇し続けました。今と同じPER24倍だった1990年代初めは夜明け前だったのです。「夜明け前が一番暗い」とはよく言ったものです。

以下は1990年~現在までのNYダウのチャートです。

赤枠で示した1990年代は大上昇相場でした。PER24倍のバリュエーションだった米株が、まさかこんな世紀の大相場を演じるとは誰が想像したでしょうか!?

当時のことは知りませんが、今と一緒でどちらかと言うと悲観論の方が多かったのかな~と勝手に推測してます。「そろそろ落ちるぞ!」と言われながら、21世紀になるまで上がり続けたのではないでしょうか。

それと同じことが今起こる”リスク”もあります。リスクとはボラティリティです。ボラティリティは下げ方向だけでなく、上げ方向にもあります。暴落に直面するのもリスクですが、上昇相場に乗れないのもリスクです。

FRBが利上げをストップすると予想される2019年から2020年あたりで、米国経済はリセッション入りするのでは、という意見をよく聞きます。まあ、そういうマクロ経済は誰も予想できませんね。

ただ、一つ言えることは、今のS&P500指数は低金利(低インフレ)を考慮すれば、過去と比較しても決して高いバリュエーションではないということです。長期金利が8%前後あった時と同じPERです。しかも、企業収益は堅調で予想PERは17倍まで下がります。

貿易戦争、トルコリラ暴落、FRBの利上げ、ドル高などなど2018年は昨年に比べてリスク要因が盛りだくさんです。ですが、どんな時も何らかのマーケット・リスクは話題に上がるものです。でないと、WSJやファイナンシャルタイムズは商売あがったりです。

この先、相場がどう動くかのか、暴落があるのかそれとも逆にメルトアップがあるのか、それは分かりません。ですが、単純にバリュエーションを見る限り、また歴史を振り返る限り、米国株に弱気になるべき時には見えません。「稲妻が走る瞬間」に市場に居れないと、リターンは著しく下がることが過去の研究でわかっています。今はどっしり構えて市場に居続けるべき時だと思います。