動画ストリーミング大手のネットフリックス(NFLX)が時価総額でウォルトディズニー(DIS)を追い抜きました。小さなDVDレンタル事業から始まった新興企業が、スターウォーズやミッキーマウスなど世界中で愛される有名ブランドを保有するディズニーを遂に追い越しました。未だにトヨタ自動車が時価総額トップの日本ではあり得ないこと。資本主義大国アメリカのイノベーション力を痛感します。
ネットフリックの成長力は凄まじく、その成長はまだ止まりそうにありません。米国外を中心に契約者数は順調に伸びており、月額単価を上げても顧客が逃げません。
ただ、私は長期投資目的という前提を置きますが、ネットフリックよりも圧倒的にウォルトディズニーを選好します。どちらかに投資しろと言われれば、100%ウォルトディズニーです。長期保有が前提ですよ。
「過去の遺産」で稼げている企業に長期投資できると株主は儲かる。
長期投資に向いている銘柄を探す上での一つの観点が、「どれだけ過去の遺産で稼いでいるか」という点です。「過去の遺産」とはブランド力とも言い替えることができます。要はシャカリキ頑張らなくても、チャリンチャリンお金が降ってくる状態が作れているかということです。
短期的な投資リターンはマーケットの心理状態(つまり株価変動)が支配しますが、長期的な投資リターンを決めるのは経済学です。冷徹な数字がすべてを決めます。赤字を垂れ流している企業でもマーケットの将来期待が高ければ株価は上がって時価総額はウン兆円になることもあります。テスラとか。ただ、ず~っと赤字ならば株価はいつか落ちます。配当も出るわけはなく(長期)投資家は損をします。
個人の家計改善では、
・収入を上げる
・支出を減らす
・運用利回りを上げる
のどれかに焦点を当てることになります。
これは企業も一緒です。企業は家計より図体が大きくなって会計処理も複雑になりますが基本は同じ。支出を最小化しながら、収入を最大化できる企業の株主リターンが大きくなります。実際はここに投資額、買い値の議論が入ってきますが、基本は儲かる会社に投資すれば株主も儲かるわけです。いたって単純な話です。
投資を抑えて支出を減らしつつ、でもガッチリ儲かっている会社。都合が良すぎるように聞こえるかもしれませんが、あるんですよ、こういうチート企業が一部に。反則じゃないかって思うようなチート銘柄に長期投資できると、株主は儲かります。なぜなら、繰り返しですが、長期投資のリターンを支配するのは経済学だからです。
無形資産償却で見分ける、「過去の遺産」で稼げている優良企業。
「過去の遺産」で稼げる企業は、資本支出(投資)が少なくても稼ぐことができるわけですが、それをどうやって見分ければいいのか。色んな視点があります。ROIC(投下資本利益率)を見るとか営業CFマージンを見るとか。
今回はちょっと変わった視点をご紹介します。無形資産償却費に着目します。「へ~、こういう視点もあるんだな~」くらいに思ってもらえればうれしいです。ま、気楽に読んで下さい。
「過去の遺産」は無形資産として企業の財務諸表(バランスシート)に表れています。無形資産はすべてBSに計上していいわけではありませんが、対価を支払って買い取った無形財産はBSに無形資産として計上することができます。
無形資産の金額そのものを見るのも一つの方法なのですが、PL(損益計算書)で無形資産をどれだけ償却しているかを見るのも有益です。BSの無形資産残高に比べてPLの無形資産償却費が少ない企業は、価値の高い無形資産(=高品質な過去の遺産)を保有している傾向にあります。
NY上場企業は米国会計基準(US-GAAP)を適用しています。米国会計基準は無形資産を一定の年数で償却することを求めていますが、その年数は各企業が実態に応じて決めることができます。もちろん最後は監査法人がチェックします。あと、価値が永続する、ないし、いつまで価値が継続するか推定できないと判断された無形資産は償却しないことも可能です。つまり、一度計上した無形資産を半永久的にBSに計上しておく処理も認められています。
ここから面白いことがわかります。少し上に赤字で書いた点ですが、遠い将来まで経済価値が残り続ける無形資産を持つ企業ほど、BSの無形資産残高に比べてPLの無形資産償却費が小さくなります。
価値のある無形資産ほど償却年数が長くなり、結果として無形資産償却費が小さくなるからです。償却年数が長いと、1年当たりの償却費用は減りますよね。1億円で取得した特許を5年で償却すれば1年当たりの償却費は2,000万円ですが、50年で償却するなら1年当たりの償却費はたったの200万円で済みます。
さて、ウォルトディズニー(DIS)とネットフリックス(NFLX)、それぞれの無形資産残高(BS)と無形資産償却費(PL)を見てみましょう。
(単位:百万ドル)
ティッカー | 無形資産残高 | 無形資産償却費 | 償却比率 |
DIS | 14,476 | 196 | 1.4% |
NFLX | 14,682 | 6,198 | 42.2% |
いかがでしょうか?
この表から何を感じますか?
先ず驚いたのは、ネットフリックスの無形資産(コンテンツ資産)の規模はディズニーに匹敵する規模だということです。両社とも140億ドル強です。凄まじい投資額です。時価総額でディズニーを抜くだけはあります。
で、注目して欲しいのは償却費の方です。BSの無形資産残高は同じくらいですが、PLの償却費は圧倒的にネットフリックスの方が大きいですよね。その差は約60倍。
なんでこんなに差があるのか?
無形資産の償却年数が全く違うからです。
10-Kレポート(日本で言う有価証券報告書)を読んで確認しましたが、ネットフリックスは無形資産(コンテンツ資産)を最大4年で償却しています。一方で、ディズニーは非償却もしくは40年以内で償却しています。
NFLX | DIS | |
償却方法 | 4年以内で償却 | 非償却 or 40年以内で償却 |
ネットフリックスは莫大なコンテンツ投資を行っていますが、その投資がもたらす無形価値をたった4年でPLに落として費用処理しています。
なぜ、ネットフリックスはこんな早いペースで費用処理するのか?
いや、しなくてはならないのか?
それは、ネットフリックスのコンテンツ投資が今後何十年もキャッシュを生み続けると期待できないからです。確かに、テラスハウスなど独自のコンテンツ投資でヒット作を生み出して稼いでいますが、その資産がブランドとなって今後30年、50年も稼ぎ続けるとは期待されていません。少なくともネットフリックスの経営陣と監査法人はそう判断しています。だからこそ、たった4年で償却するという決断をしています。
つまりネットフリックスはやや自転車操業的な側面があるということです。投資を継続しないと今の収入水準を維持できないということです。まだ若い企業ですから仕方ありません。こうやって初期の莫大な投資が、いつか永続したキャッシュを生むブランドに化けます。今はそういうコンテンツ事業者としてのワイドモートを作り上げる途上の段階です。30年後にネットフリックの10-Kレポートを見れば、無形資産の償却年数はディズニーと同じ40年くらいに伸びているかもしれませんね。
一方で、ディズニーは償却していない無形資産もあるし、償却しているものでもその償却年数は最大40年とネットフリックスの10倍です。これは、ディズニーが保有する無形資産の価値がそれほど早いペースでは減価しないと判断されているからです。ディズニーの無形資産の内容まではわかりませんでした。ミッキーマウスやスターウォーズなどのブランドが無形資産の内容なのか、その詳細までは分かりませんでした。ただ、償却年数を見れば、ディズニーの無形資産が非常に価値あるものだということが一目瞭然です。
なんせ、ディズニーは140億ドルもの無形資産を持っていながら、毎年の償却費はたったの2億ドルしかないのです。ほっとんど償却してないに等しいです。今の無形資産を全部償却するだけで74年も掛かります。
長期投資目的なら、ネットフリックスよりウォルトディズニーの方が有望
ディズニーは「過去の遺産」で稼いでいます。営業CFは20%を超えています。今まで作り上げた無形価値(ブランド)がそれだけのキャッシュをもたらしています。こういう企業が、長期投資に向いている銘柄です。
将来のことはわかりません。「この銘柄が儲かる」とか安易なことは言いたくありません。ただ、長期投資が前提でメディア業界への投資を考えているなら、ネットフリックスよりもウォルト・ディズニーの方がかなり勝率は高いと思います。あくまで長期投資が前提ですよ。
目先の株価推移はネットフリックスの方が勢いがあって有利かもしれません。ただここで、もう一度思い出して下さい。長期投資リターンを支配するのはマーケットの感情ではなく、経済学(数字)でしたよね。これからもコンテンツ投資を続けないと稼げないネットフリックスと、「過去の遺産」で莫大なキャッシュを稼げているウォルトディズニー、どちらが経済学で考えて有利でしょうか?
さらに言えば、ネットフリックスのPERは100倍を超えている一方で、ウォルトディズニーのPERは13倍~14倍ほどです。長期投資なら、私なら迷わずウォルトディズニーを選択します。
>長期投資なら、私なら迷わずウォルトディズニーを選択します。
すいません、イラッとされるかもしれませんが、氏が選択して購入した銘柄のパフォーマンスはかなり悪いですよね…。
私も含めて、高配当を求める個人投資家って、高配当を求めるから負けるんだろうなって思います。あるいは成長企業を避けたり。
私は高配当とインデックス半々ですけど
いえいえ、これまでリターンが芳しくないのは紛れもない事実ですし、ポートフォリオもすべて公開している立場ですから。
「リターンは長期で見て欲しい」という言い訳をいつまで言えるかですかね~。
高配当銘柄のリターンが高いという理論的な根拠はありません。
歴史を振り返ると、高配当株投資はS&P500平均を超えたというデータ自体はありますが。
まあまあ理論的に説明できそうなことは、常に利益を上げれる優良株のみに適正株価で投資すればS&P500平均を超える可能性が高いということです。
ここが一番大事な点だと思ってます。利益利益利益です。
高配当を求めすぎると確かに負ける可能性がありそうですが、常に利益を上げている高収益な銘柄を求めている人は負けないはずです。
なので目先の配当利回りを追い求め過ぎずに、シンプルに優良企業に投資していくことが長期での高リターンに繋がると思ってます。
私はそれを頭では理解しつつ、実際にはできてないですね~。どうしても3%程度の利回りは欲してしまいます。そこが本当にこのままでいいのか、自分の投資方針の迷い悩みです。
高収益=高配当では無いと思うんですよね。
高配当かどうかは株価で決まる訳ですし。
つまり、市場からの評価が低く株価が低迷するほど高配当になる訳ですからね。
私は株主資本に対する配当額の割合を見るのは良いのでは無いかなと思っています。
つまり、ROEと似ていますが利益ではなく、配当金総額÷株主資本額です
この考え、どうですかね?
はい、高収益=高配当(利回り)ではないです。
だからこそ、配当にこだわり過ぎずに高収益に着目した方が良いと思っています。
高収益を続けれる企業は、長期にわたって増配を続けることができますから。
配当利回りは時価純資産(=株価)と配当の比率を示しています。
利回りが高いということは株価が割安なのか、もしくは配当が多いのかのどちらかです。
コカ・コーラやフィリップモリスは配当利回りは高いですが、株価は少なくとも表面的なPERで見て割安とは言えません。
両社とも高い配当性向が高配当利回りをもたらしています。
>配当金総額÷株主資本額です この考え、どうですかね?
この式の分母の株主資本を時価にすると、それがまさに配当利回りですね。
配当利回りを根拠に投資することも意義はあると思っています。
特に成熟企業の場合、過去の配当利回りの推移を見て今の水準と見比べることは私はよくやってます。
分母の株主資本を簿価にすると確かにROE的な比率が算出できますが、その数字にはあまり意味はないかな~と個人的には思います。
優良企業ほど純資産の簿価と時価の乖離が大きくなって(つまりPBRが大きくなる)、純資産簿価の数字の意義がなくなっていきます。
そういう意味では、優良米国企業について表面的な自己資本比率とか見ても、実はあまり意味ないかもしれません。私はよく銘柄分析記事で自己資本比率に言及していますが。
純資産は時価で考えたいですね。
もちろん簿価ベースのROEが高いに越したことはないのですが。
高配当銘柄を活用してそこそこのパフォーマンスですか。私も配当欲しい人なんで気持ちわかります。ただ、小型、高配当ならそこそこ動きはいいと思います。B&Gfoods (bgs)という株ですが一時期3か月ほど前は23ドルほどで利回り8%ほどでしたが現在32ドルまで上がってます。20数%利益が乗ってて同じ時期に買ったfacebook よりも利益出てます。私の場合、高配当銘柄を現物で保有し、その現物株とその配当を活用して信用取引、CFD(インデックス)等でレバレッジかけてスイングをやってます。高配当銘柄の配当は5%超えるので、
レバレッジをかけた際の年利2~3%払ってもお釣りがくるわけですね。信用取引、CFDからも配当がくるので実際に1年持ち続けても払う利息は1~2%ほどだと思います。
正直、大型高配当銘柄は確かに動きは悪いです。ただ、言い換えれば動きが安定的であり、配当も安定なので信用取引の担保としては悪くないです。現物は基本的に完全な配当狙いなんで減配しない限り敗けではないと考えてます。もちろんキャピタルゲインを狙ったタイミングで買いますが(笑)。リスクはありますが配当とキャピタルゲインを両方欲しいのでこのように投資してます。ただ、現物オンリーの場合は、時価総額が小さい小型高配当、成長株もしくはグッドタイミングでの大型株への投資でないと両取りは難しいのではないかと思います。
コメント内容がとても米株”初心者”には思えませんw。
バフェットがクラフトハインツやアップルに投資しているのは、運用額が大きくなり過ぎて大型株しか選択できないという事情もあります。
個人投資家は時価総額がそこまで大きくない中型優良株にも柔軟に資金を配分できます。そのメリットを活かすのはGoodですね。
私は超大型株ばかりに投資しているので、個人投資家のメリットを捨ててるところがあります。
大型株は有名だからこそ買いが集まりやすくて、株価はそう簡単には安くなりません。規模が大きいのもありますが。
大型成熟型になればなるほど、投機の要素が薄まります。
よっておっしゃる通り動きが鈍く短期的な値上がり益を得るのが困難です。
大型株に投資する場合は根気強く長期で持ち続ける精神力が求められます。
ちょっとは投機的な要素も取り入れて、トレードを楽しむのもいいですよね。
そういうの興味あります。
もう少し仕事が落ち着いて時間が取れれば勉強してやってみたいです。
利回り8%の銘柄を買うのって結構勇気要ります。
そこまで高いと「もしかしたら減配するかも」とちょっと不安になります。
でも株価が上がればキャピタルゲイン+インカムゲイン両方ゲットできて儲かりますね。