アメリカの4月度消費者物価指数は予想以上の上昇となりました。前年同月比+4.2%、前月比+0.9%。

コロナで消費が落ち込んだ前年との対比は置いておくとして、前月から1%弱も物価が上がったのは結構なインパクトとして受け止められています。

中身を見ると、中古車販売価格の寄与が大きいようで一時的な要因かもしれません。が、予断はできません。FRBは一時的と言ってますが、著名なヘッジファンドマネージャーの多くは一時的ではないと主張しています。

FRBが2023年よりも前に利上げをせざるを得ない状況に追い込まれるシナリオも、投資家として想定しておきたいところ。だからって投資戦略が大きく変わるわけではありませんが。

物価上昇の報道を受けて、米株は大きく売られました。日本株も連れ安。今日のニュースは「インフレ懸念で株価下落・・」というタイトルが並びました。

少し立ち止まって考えたいのですが、なぜインフレ懸念で株価は下落するのでしょうか?

物価が上がるということは、企業の売上高、利益も増加すると捉えることができます。利益が増えるなら株価はむしろ上がる、という見方もできそうなものです。

株価=将来キャッシュフロー / 割引率

インフレは分子(将来キャッシュフロー)、分母(割引率)、両方に影響を与えます。

投資家がインフレを懸念して期待インフレ率(=ブレークイーブンインフレ率)が上昇すると、長期金利も上がります、理論的には。実際、10年債利回りは上がりましたね。

金利(割引率)が上がると将来キャッシュフローの現在価値が小さくなります。つまり株式価値は小さくなります。

一方で、前述の通り、物価が上がると将来の企業の名目利益が増えるので、それは株式価値を押し上げる要因になります。

が、やはり金利上昇懸念の方が強く株価は下がっている、というのが現状です。

そもそも、金利が上がって景気の腰が折れてしまえば、将来利益はむしろ下がっちゃう可能性もあります。そういう心配事が増えることを考えると、やはり今みたいな局面は株価には逆風と言えます。特に株式価値が将来利益に依存しているグロース株は。

さらに言えば、インフレによって企業の名目利益が増えると、株主の税負担が増えます。それもインフレの悪い側面の一つ。

株式は長期的にはインフレに負けない性質があります。少なくとも利息が固定された債券よりは遥かに強いです。

が、金利上昇によるリセッション懸念、税負担増による実質リターン悪化懸念の2つを考えると、インフレは株式にも幾分マイナスの影響があると言えます。

4月の物価上昇が一時的なものかどうか。どうでしょうかね。

ほぼ完全雇用だったコロナ前、インフレはほとんど問題になっていませんでした。そういう経済構造になっていることを考えると、私は一時的である可能性の方が高いと思っています。そう信じたい。わかりませんが。