トランプ大統領の政策不透明感が残る中、NYダウは2万2千ドルを超えて史上最高値を更新しています。NYダウはS&P500指数もアウトパフォームしています。これはボーイング、アップル、マクドナルド、ユナイテッドヘルス、スリーエムの株価上昇が大きく寄与しているためです。

NYダウ構成銘柄が順調に株価を上げる中、大きく出遅れている銘柄があります。
IBMです。

IBMの株価下落は2つのイベントが影響しているように思います。

一つがバフェットが売却したことです。
バフェットは8100万株保有していたIBM株を約30%売却しました。

二つ目が決算発表です。
IBMは2017年第2四半期決算を発表しましたが、依然として事業改善の兆しが見えていません。当決算で21四半期連続の減収となりました。

年初来のIBM株価チャートです。

7月半ばの決算発表以降も、株価はダラダラと下落しています。

昨日(8月7日)もIBMの株価は下落しており、1.2%減の143.47ドルで取引を終えています。

 

 

 

マーケットの反応とか、マーケットは悲観的とか、しょっちゅうマーケットという言葉が出てきます。経済ニュースの中でも頻繁に使われるこの「マーケット」という言葉。

とても便利ですね。マーケットという言葉は市場全体を指しています。要するにマーケットとは株式市場で売買している世界中のすべての投資家ということです。

私もワン・オブ・マーケットですし、あなたもそうです。

「マーケット・・」と言いますが、実際には個々の機関投資家、個人投資家がいるだけです。それらを総称してマーケットと呼んでいるだけですよね。

株価はなぜ動くのでしょうか?
株価の理論価格について、将来配当の割引現在価値がどうこう言いますが、ああいうのは結果論としての机上の計算に過ぎません。

日々株価が変動するのはその株に買い注文を入れる人、売り注文を入れる人がいるからです。日々の株価はその日の需給によって変動しているだけです。各投資家色んな思惑、お財布事情から株を買ったり、売ったりしています。

ある個人投資家は、「夏のボーナス入ったし、IBMの将来はよくわからんけどせっかく急落しているから下値拾ってみるか!」という気軽な感じでIBM株を買っているかもしれません。

ある個人投資家は、急に予定外の大型出費が発生してしまってやむを得ずIBM株を売却しているかもしれません。

ある個人投資家は、バフェットが売ったから不安だからとりあえず売っとくか、てな理由でIBM株を売却しているかもしれません。

あるファンドマネージャーは、IBM株は実は有望だと内心思っているけど、投資家からのファンド解約請求があまりに多く、やむなくIBM株を売却しているかもしれません。

平時のIBMの1日当たりの出来高は3~4百万株ほどです。株価145ドルで計算すると1日当たりの売買代金は500億円以上あります。コンピュータによる自動売買も含まれているでしょうが、毎日これだけの規模の取引が行われており、その取引毎に各投資家のストーリーがあるはずです。

あなたも色々と考えて悩んで、株を買ったり売ったりしていると思います。

一言でマーケットと言いますが、その裏には大勢の投資家の取引が実際に存在するわけですね。

 

さて、IBMのような大型株の株価が急落している時は、その下げはダラダラと長期間続く可能性があります。
それは、マーケットの中でも特に機関投資家の動きがそうさせます。

個人投資家の中には低位株ばかりを好んで取引する人が散見されますが、少なくともアメリカではそのようなアプローチは危険です。

その理由は年金などの場合、「株価が10ドルを割ったら、その株は売却すべし」という社内ルールを設けている機関投資家が多いからです。

『Market Hack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法』より

株価が一定以上下落すると機械的にその銘柄を売却する、という運用ルールを設けている機関投資家が多いそうです。

なので、機関投資家が運用対象としがちな大型株の株価が急落すると、その株価下落は慢性的に続きがちです。

これは個人的にも実感しています。
まだ個別投資歴1年ほどしかない私が言うのもなんですが。

下値を拾うと、そこからさらに下落することはこれまでも頻繁にありました。

逆に上値を追っても、そこからさらに上昇するケースが多い様に思います。実際に投資していませんが、ジョンソン&ジョンソンとかマクドナルドとか、そろそろ株高止まるだろうと思ってもさらにグングン株価が伸びていった印象です。

少なくとも短期的な目線で考えれば、下値を拾いに行くよりも上値を追いかけた方が精神衛生上はよろしいように思います。

マーケットが悲観的になっている銘柄を狙うのは長期的に見れば有効だと思います。その銘柄が営業CF・フリーCFともにプラスで過去の配当実績がしっかりした優良企業である必要がありますが。

ですが、株価が急落している銘柄を我先にとすぐに掴みにいくと火傷を負うかもしれません。
冷静に焦らずに、少し間を空けてから掴みに行ったほうが良さそうです。

機関投資家で一定の運用ルールを設けている場合、それに従わないと社内コンプライアンス違反になります。みんなサラリーマンですから、そのルールを破ってまで自己の主張を貫くメリットはありません。

個人投資家は投資ルールを設けていたとしても、そのルールを破ったところで誰に何を言われるわけでもありません。自由です。当たり前のように普段から自由に売買していると思いますが、その環境は機関投資家のファンドマネージャーから見ればとても羨ましいはずです。

「ちょっと投資してみるか!」と軽いノリで、一見火傷しそうな急落銘柄を掴めるのは個人投資家のメリットです。そのメリットは十分活かせばいいと思います。

ただ、急落銘柄を果敢に掴みに行くときはワンクッション置いてから突撃したほうが良いみたいです。

個人投資家が自由に売買できるというのは、メリットでもありデメリットでもあります。デメリットとは、誤った投資判断だとしても誰も指摘してくれないということです。あなたが損しても困るのはあなただけです。世界中の誰もあなたの投資パフォーマンスになんて興味ありませんから。

なので、冷静さを保ち焦らず、マーケットを客観視することを忘れないことが大切だと思います。