年収を以下のように分解してみます。
年収=付加価値 ×(1-搾取率)
付加価値とは仕事を通じて会社の利益にどれだけ貢献したかを表したものです。搾取率とは貢献した利益のうち、資本家に吸い取られる割合です。労働者に残るのは資本家が吸い取った後の利益です。つまり「1-搾取率」が労働者の取り分ということ。
付加価値が1000万円で搾取率が70%なら年収は300万円になります。
300万円=1000万円×(1-70%)
1000万円の付加価値を生み出す従業員に1000万円の年収を払ったら(=搾取率0%)、会社の経営は立ち行かなくなります。原価でモノを売るようなもんです。会社に貢献した利益以上の年収をもらうのは不可能である以上、労働者が雇用主(資本家)に搾取されるのはやむを得ないことです。
搾取率が高ければ高いほど、労働者の年収は低くなります。普通はなるべく搾取されたくないと思うでしょう。でも、働きやすいホワイトな環境を手に入れるためには搾取率を高めることです。
たとえば、年収500万円の例を考えてみます。色んな「年収500万円」があります。
(単位:万円)
年収 | 付加価値 | 搾取率 |
500 | 700 | 29% |
500 | 1,000 | 50% |
500 | 2,000 | 75% |
500 | 5,000 | 90% |
500 | 10,000 | 95% |
500 | 50,000 | 99% |
下にいくほど付加価値(利益貢献度)が上がっていきます。にもかかわらず、年収は500万円で一定なので搾取率は上がっていく構造になっています。
会社に5億円の利益をもたらしたのに年収500万円しかもらえないなら、搾取率は99%にもなります。一方で、利益貢献が700万円しかない場合は同じ年収500万円でも搾取率は29%にまで低下します。搾取率29%とはかなり低いですね。労働者の取り分は71%ということです。資本家より労働者の分け前の方が多いです。
搾取率が低い方が得した気分になるかもしれませんが、それと引き替えに職場はブラックになりがちです。使い捨てられるリスクが高いです。従業員のためにしっかり教育を施そうというインセンティブも雇用者側に起きづらいです。もし辞めるなら、別の誰かをまた採用すればいいやくらいに思われます。なぜなら、労働者一人が生み出す付加価値が小さいからです。
搾取率が高いと損した気分になるかもしれませんが、資本家に骨の髄まで吸い取られる代わりに労働環境はホワイトになります。社員教育も充実しています。なぜなら、労働者一人当たりが生み出す付加価値が大きい仕事は専門的な知識、スキルが必要になることが多いからです。また、労働者がたくさんの付加価値を生んでくれると、手厚い福利厚生や教育制度を整えれるだけの資金力が生まれます。
搾取率を高めて資本家を喜ばせた方が労働者は大切に扱われます。とは言え、あまりに搾取されて自分の年収が下がり過ぎるのも嫌なもんです。やっぱ、働いた分だけ給料上げて欲しいです。でも、高収入だからって毎日長時間労働で激務過ぎるのは嫌です。
と、こんなわがままばかり言ってもしゃーないですね。自分の中で丁度いいと思える比率を見つけるしかありません。
外資保険のような歩合制の賞与が大きい仕事は搾取率が低めです。稼いだ分、労働者は報われます。しかし、競争は激しくホワイトな労働環境とは言い難いでしょう。日本企業のメーカーの営業ではトップクラスの営業成績を収めても、賞与がせいぜい数十万円上乗せされるだけです。たくさん会社の利益に貢献しても労働者の収入は大して上がりません。搾取率は高いです。その代わり、雇用は安定しておりリストラされることも少ないです。ギスギスせずに働きやすいことが多いです。
ホワイトな労働環境を手に入れ、かつそれなりの年収をもらうためには、付加価値を上げつつ搾取率も上げることです。しっかり会社の利益に貢献しているけど、その利益の大半は資本家に献上する。資本家に吸い取られた後の労働者の収入もそれなりの金額が残る。ちょっとフワッとした表現ですが、こんな感じが理想じゃないでしょうか。
付加価値が高く搾取率は低い企業、つまり投資銀行のトレーダーように実力主義で給料が決まる仕事の場合、上手くいけばガッポリ稼ぐことができますが、下手すれば首切られます。仕事のストレスも多いです。
ビジネスリスクを負っていない労働者という立場である以上、楽して大金を稼げることはあり得ません。年収を上げるために資本家の搾取率を下げると、どうしても仕事のストレスが増えます。
サラリーマン投資家の私としては、付加価値と搾取率がともに高い職場を選んでホワイトな労働環境を手に入れることが重要だと言っておきたいです。ホワイトな労働環境にいた方が金が余りやすく、結果として投資に回せるお金が増えるからです。なんでホワイトな職場だと金が余りやすいかと言えば、余計なストレス発散に金を浪費することが少ないからです。労働力の再生産コストを低く抑えることができるからです。
もちろん、給料や労働環境だけで仕事を選ぶわけではありません。好きな仕事か否か、やりがいを感じれる仕事かどうか、という点も大切ですね。あくまで仕事で種銭を貯めて株式投資を続けやすいという観点のみで言えば、付加価値と搾取率が共に高いホワイト企業がオススメというだけです。