企業は「税効果会計に関する会計基準」に従い、保有する有価証券の含み益について繰延税金負債を認識することで、前もってキャピタルゲイン税を費用認識している。

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は、いきなり何の話??
って思いますよね、すみません。

冒頭の文章は学術っぽくて読みにくい文章なのですが、言っていることはとても単純です。「株の含み益に掛かる税金は売却するまで発生しないけど、会計上は含み益が出た時点でその税金費用を認識しなさい」という意味です。

長期投資家にとって一番高く付くのコストは恐らく税金です。投資家は普段の家計管理の中で、キャピタルゲインに掛かる税金コストをきちんと管理できると良いと思います。

 

家計でも株の含み益に掛かる税金を認識しよう!(あなたの繰延税金負債はおいくら?)

あなたが保有するS&P500ETF、2017年は素晴らしい成績でしたよね(まだ2017年は終わってないけど)。2017年だけでS&P500指数は20%超も上昇しました。分配金と為替まで加味すればトータル・リターンはもしかしたら25%くらいあるかもしれません。

あなたが年初に保有していた100万円相当のS&P500ETFは現在120万円以上に増えているのはないでしょうか。凄いことですよね!普通預金金利が0.001%とかなのに、1年で20%以上のリターンを得ている人なんてほとんどいませんよ。労働で20万円稼ぐことがどれだけ大変なことか・・。

でもちょっと水を差すようで申し訳ないですが、20万円の含み益すべてがあなたのリターンではないですよね。そのうち、約20%は国家に帰属する利益です。利益には税金が掛かります。それは仕方ありません。経済的な付加価値には課税して、一度富を中央政府に集めて再配分することで国民間の貧富の差を調整して、みんながなるべく豊かに幸せに生活を送ることができます。

ただ、ラッキー?なことに含み益に掛かる税金(キャピタルゲイン税)は売却するまで発生しません。株を保有している間は、含み益には課税されません。これは株価上昇分もそうだし円安による為替差益分もそうです。実際に株式を売却するまで課税は発生しません。

とは言え、、含み益があるってことは潜在的に税金費用が発生していると解釈することもできます。S&P500ETFが100万円から120万円に20万円上昇するってことは、潜在的に4万円(20万円×20%)の税金負担が生じていることになります。実際の支払いは今ではないですが。

その潜在的な税金費用4万円を前もって認識しておこうと考えるのが会計の世界です。税効果会計と呼ばれるものです。実際に税金キャッシュアウトがなくても、その税金支払いをもたらす事象がすでに発生しているなら会計上の税金費用は先に帳簿にbookしておこうと考えます。

ちょっと仕訳で考えてみましょう。

S&P500ETFが100万円→120万円と20万円値上がりした場合、税金を無視すればこんな仕訳になります。

株式 20万円 / 株式値上がり益 20万円

借方:株式という「資産」が20万円増えます。
貸方:株式値上がり益という「収益」が20万円増えます。

この仕訳は正しいのですが厳密ではありません。20万円の株式値上がり益のうち4万円は国家に帰属するものです。投資家であるあなたが得られる真の利益は16万円だけのはずです。そこで、潜在的な税金費用4万円を繰延税金負債として計上します。

株式 20万円 / 株式値上がり益 16万円
        繰延税金負債  4万円

こう会計処理することで株式値上がり益は税金控除後の16万円となります。繰延税金負債4万円は国家への未払金を意味しています。いつか日本政府に納付しなくてはならない税金費用4万円をきちんと事前に認識しておこうということです。

30年以上米国株に投資し続ければ莫大な含み益が生じる可能性があります。私みたいに高配当株に投資していると、キャピタルゲインはあまり大きくならないかもしれませんが、S&P500やNYダウに投資している場合は嬉しいことに30年超も保有していればキャピタルゲインはかなり大きくなることが期待できます。つまり、キャピタルゲイン”税”もドンドン大きくなっていくと想定されます。

皮算用ですが、30年後あなたが保有するS&P500ETFの含み益が1億円に膨らんでいれば、2,000万円もの税金支払い義務を負っていることになります。

2,000万円の税金支払いってインパクト大きいですよね。だから、家計でその2,000万円の潜在的税金費用を予め認識しておくといいと思います。国家の徴税権は絶対です。国家に対する税金債務はきちんと家計の中で認識しておいた方がよいと思います。

私のオススメは自分のバランスシートを作成することです。バランスシートを作成することで、保有する資産、抱えている負債、ネットの純資産がいくらあるのか見える化できます。もしあなたもバランスシートを作成してみようと思うなら、右上の「負債の部」にはぜひ繰延税金負債を計上してみて下さい。税金コストをしっかり負債として認識してみて下さい。税金コストを可視化することは意義あることだと思います。

これは、私の2017年9月末のバランスシートです。3か月毎にMyバランスシートを作成して家計管理してます。
右上の黄色にした箇所が繰延税金負債です。これは私の株式含み益に約20%を乗じた金額です。仮に保有する株式すべてを今すぐ売却したとしたら発生する税金ということです。実際には売却しないので税金は払わないですが、帳簿上ではその負債は認識しておいた方がベターです。

こんな感じで含み益に掛かる税金をきちんと負債認識しています。負債に計上するということは、その分純資産が減るということです(純資産=資産-負債)。税金支払いは発生していないけど、どうせいつか払わなくちゃいけない税金だから、前もって会計上(バランスシート上)は認識しています。

キャピタルゲイン税について繰延税金負債を計上しておくことで、自分にいくらの税金支払い義務があるのかが見える化されます。

 

人生は数字で測れないことばかり。だからこそ、数字で判断できることはとことん数字にこだわる。

人の幸せなんて金で測れるはずがありません。幸せかどうかは人の感情次第ですが、感情を数字に置き換えることはできません。世の中、数字で(カネで)測れないことの方が圧倒的に多いです。だからこそ、数字で測定できる物事はほんの一部に限られるからこそ、数字で測れるものはなるべく厳密に計算しておいた方がいいと思っています。

経済的なことは数字で客観的に測ることができます。投資リターンも数字で計算可能です。税金は大きなコストです。利益の20%も持っていくのですから。その税金をきちんと家計でタイムリーに認識しておけるといいですね。

人生カネカネしたくはありませんが、カネで測れる経済的なことは冷静にクールに正確に計算しておきたいと僕は思っています。大学生の頃から会計の世界に入り浸ってもう10年以上になります。会計士を目指した動機は「初任給が高いから」という不純なものでした。会計の仕事を通じて社会に貢献したい、なんていうキラキラした理念は全くありませんでした。早く大人になって金を稼ぎたい一心でした。でも、結果として会計を勉強してホントに良かったと心から思っています。世の中のあらゆる経済取引を正確に数字に落とし込んでいくのはなんだか楽しいです。あと、人生の基盤である「経済・家計」をきちんと数字で考える力を養うことができたかなと思ってます。

ブログで情報発信できる時代に感謝しています。このブログがどれだけ世間の役に立っているかわかりませんが、投資ネタだけじゃなく会計的な考え方もドンドン発信していきたいと考えています。