バフェットが保有するUSバンコープ株の一部を売却したという報道を見ました。保有割合を10%未満にしてSECへの報告義務を免れるための売却だろうという見方が多いですが、バフェットがお気に入りの銀行株を売ったというのはちょっと驚きです。

だからというわけではありませんが、私も保有する商業銀行株、具体的にはウェルズファーゴ(WFC)をこのままホールドするか、それとも他の銘柄と入れ替えるか悩んでいます。PER1桁台なんて当然になっている米銀行株。特にWFCは売られており、配当利回りは9%を超えています。

The バリュー株といった感じでインカム投資家には垂涎の的ですが、その裏にはリスクがあります。

資本という商品はどれくらい社会に必要とされるのだろうか?

コロナ禍にもかかわらず、マイクロソフトやアップル、アマゾンといった大手ハイテク企業の株価は堅調です。特にアマゾンは史上最高値を更新しており破竹の勢いです。

リモートワークが一気に浸透しマイクロソフトの生産性改善ツールやクラウドの需要は高まっています。リアルで会う機会が減る中、デジタル空間での繋がりを媒介するiPhone(スマホ)の役割はさらに大きくなっています。アマゾンのネット通販は言わずもがな。

人々に必要とされる商品、サービスを提供できる企業が利益を上げて成長できます。株主も報われます。ハイテク企業の株価上昇はバブルではなく、莫大な利益の取れるビジネスの成長という背景があります。

エネルギー株が下落しています。私が保有するエクソンモービル(XOM)も例外ではありません。5月16日現在、年初来で30%近く下落。同業シェブロン(CVX)も20%の下落しています。

航空機や車での移動が減少している上に、サウジ等のOPEC加盟国やロシア、アメリカで思うように減産がまとまらず、大幅な供給過剰になっているからです。そもそも、原油の生産って急に止められないみたいですね。タンカーや大きなプールに余った石油を保管している状態です。原油先物は一時マイナス圏に突入するという異例の展開もありました。

社会からの需要が減っている商品を取り扱う企業の利益は減少し衰退していきます。そうやって世の中のビジネスの新陳代謝が起こり、資源が効率的に配分されるのが資本主義経済です。

さて、商業銀行の商品とは何でしょうか? アップルにとってのiPhone、エクソンモービルにとっての原油に相当するものは何か。

それは資本です。銀行は企業や個人に資本を貸し、そのレンタル料(利息)を受け取ることで収益を上げます。目に見えない資本というお金、データ、信用が銀行の商品です。

銀行の収益悪化は中央銀行のせいだと言われることがあります。確かに、日銀やFRBのゼロ金利政策が、民間商業銀行の資産利回りが減少させている面はあります。しかし、銀行にとっての貸出利率を左右する長期金利は中央銀行ではなく市場が決めるものです。

銀行の低迷は中央銀行のせいではなく、そもそも世の中が資本という商品を必要としていないからです。石油を求める人が減ってエネルギー株が暴落しているのと同じロジックです。結局、社会が必要としていない商品を提供する企業は衰退するという資本主義のルールに沿った動きということです。

昨日、NewsPicksでインドア垂直農業というテーマの記事を読みました。完全に室内型の農業で、都会の狭い場所でも1年中栽培できる方法です。土地を耕す必要がないうえ、AIを兼ね備えたロボットが種まきから除草、栽培までやってくれるそうです。農業ってなんか興味あるんですよね、私。

農業というと一家総出で農作業に汗をかき、、というイメージがありますが、現代テクノロジーを使えばもっと効率的にやれるということですね。スマート農業です。

そうやって、あらゆる仕事の領域で人の労働が不要になりつつあります。他人の労働力に頼らなくてもビジネスを発展させられるなら、銀行から資本を調達する必要がなくなります。無論、ロボットやAI技術を買うために資本は必要です。ビジネスにおいて資本が完全に不要になることは考えられませんが、その需要は右肩下がりだと思います。

ベーシック・インカムというのは、資本不要社会が必然的に行き着くところだと思います。資本=労働ですから、資本不要→労働不要→ベーシックインカムてな感じです。

以下のグラフは政府、家計、企業の過去10年の債務増減です。下の先進国を見て欲しいです。

(ウォールストリートジャーナルより)

先進国ではこの10年民間債務と企業債務が減少する一方で、政府債務が増加しています。つまり、経済へのマネー創造の役割は銀行ではなく政府が担ってきたということです。この流れはアフターコロナの世界でさらに加速すると私は予想しています。「大きな政府」になるということです。

この10年景気回復局面だったにもかかわらず、民間債務が減ってきたという事実があります。これは資本という商品が段々と不要になっていることを意味します。とは言え、経済取引のためにお金自体は必要なので、政府債務は増加しています。企業も政府も債務を減らしてしまったら、経済は縮小しちゃいますから。

これからも政府は紙幣を刷り続けるでしょう。でも、それは必ずしもマネーの減価に繋がらないと思います。政府政務が増えても民間債務が減れば、結局マネーの総量はそれほど増えないからです。なので、私は米政府がこれだけ大盤振る舞いをしても、急激なインフレは起きないだろうと素人ながら予想してます。

資本のニーズ減退は一時的なものか、それとも構造的なものなのか。後者の可能性が高いと見ています。だとしても、それを十分織り込むほど株価が安くなっていれば、銀行株への投資は悪いものではないはず。JPモルガン、バンクオブアメリカ、ウェルズファーゴ等の大手銀行は資本も厚く、当面は減配の心配はなそうですし。

商業銀行のビジネスが衰退方向なのはほぼ確実かなと思ってます。労働が不要になるにつれ、民間銀行の信用創造は必要なくなります。代わりに政府が信用創造するようになるはずです。ただ、民間銀行の信用創造機能が全く不要になるわけではないです。そんな極端なことは考えてません。

うーん、銀行株ってどうなのでしょうか。こんなに不安が大きい領域であえて投資をする必要はないかなと思う時もあります。低PER、高配当が魅力ですぐには手放せない、ってのが本心です。

割安株投資は難しいなって思います。日に日に株価が落ちるのを見るのはしんどいです。いつか上がる、という確信があるわけでもないし。配当は魅力的ですが。