このブログで生活必需品セクターをメチャクチャ推しています。

それはシーゲル教授の『株式投資の未来』で生活必需品セクターは市場平均を大きく上回ることを知ったからです。

プロクター&ギャンブルやコカ・コーラなど生活に身近で親しみがあり、だからこそ今後も圧倒的なブランド力で市場を席巻し続けるてキャッシュを稼ぎまくると確信しているからです。

しかし実は、その生活必需品セクターよりもパフォーマンスが良いセクターが存在します。
ヘルスケアセクターです。

以下の表は1957年〜2003年のS&P500、ヘルスケアセクター、生活必需品セクターのインフレ加味後の実質年間リターンです。

S&P500 ヘルスケア 生活必需品
10.85% 14.19% 13.36%

(出典:『株式投資の未来』 より抜粋)

生活必需品セクターの13.36%という数字も驚異的ですが、ヘルスケアセクターはそれを更に上回り14.19%となっています。

歴史に答えを求めると、生活必需品セクターよりもヘルスケアセクターを選好すべきです。
にも関わらず、私は『株式投資の未来』を読んだ後に購入したのは生活必需品セクターのETFでした。

なぜより高いリターン実績があるヘルスケアセクターを積極的に買っていなかったのか。
それはヘルスケアセクターが今後50年も過去と同様に際立って高いリターンを株主にもたらすのか一抹の不安があったからです。
別にシーゲル教授の分析を疑っているわけではありません。
何となく、直感です(笑)。

製薬会社ってもの凄く研究開発投資が必要なんですね。
特許期限切れ後の後発薬の脅威もある。
製薬会社のBS見たらわかりますが、自己資本比率は高めです。
これはリスクが高い事業内容だから財務リスクはあまり取れないからです。
生活必需品セクターほど永続的なキャッシュ稼得能力はないんじゃないか、と何となく考えていたわけです。

だからヘルスケアセクターETFに手を出すのをためらっていました。

でも考えてみて下さい。
アメリカのペンシルベニア大学ウォートンスクール教授が膨大な時間を投じて調査した結果と、ただの平凡リーマン個人投資家に過ぎない私の根拠のない直感と、どちらが正しいのか?
言わずもがな。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。」と言いますが、愚者でさえ経験に学ぶのに、経験どころか単なる直感に頼ってヘルスケアセクターを避ける理由があるでしょうか。

最近、ヘルスケアセクターETFを買おうかと検討中です。

バンガード、ステートストリート、ブラックロックと各社ヘルスケアセクターETFを販売しているので、どれを買うのが最もいいか検討してみました。

  [VHT] vs [XLV] vs [IXJ]

検討対象となるヘルスケアセクターETFは以下の3つ。

会社 ティッカー 名称
バンガード VHT バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF
ステート・ストリート XLV ヘルスケア・セレクト・セクター SPDR ファンド
ブラックロック IXJ iシェアーズ グローバル・ヘルスケアETF

 

すべて文句なしの超優良ETFです。
どれを買っても大きな失敗にならないのは初めからわかっています。

でも大切なマネーを投じる予定なので、どれが最も適切な投資対象かしっかり比較検討します。

 

投資対象国

バンガードVHTとステート・ストリートXLVはアメリカの企業のみが投資対象です。

対して、ブラックロックのIXJはアメリカのみならずグローバルに投資しています。

IXJ

 

ティッカー 投資対象国
VHT アメリカ
XLV アメリカ
IXJ グローバル(アメリカ、イギリス、スイス、日本等)

IXJのみアメリカ以外も含むグローバルに投資できます。

IXJはグローバルに分散投資できていて一見すると優勢に見えますが、私は米国外にも分散しているからといってそのETFが優勢とは判断しません。
アメリカのヘルスケア企業大手はグローバルにビジネスを展開していますし、そもそもアメリカ以外の日欧各国のリターンが高い歴史実績があるわけでもありませんから。

 

上位投資銘柄

具体的な上位保有銘柄を見ていきましょう。

バンガード VHT

 

ティッカー 会社名 比率
JNJ ジョンソンエンドジョンソン 10.0%
PFE ファイザー 6.1%
MRK メルク 4.9%
GILD ギリアド・サイエンシズ 4.4%
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 4.1%
AMGN アムジェン 3.8%
BMY ブリストル・マイヤーズ・スクイブ 3.6%
MDT メドトロニック 3.5%
AGN アラガン 3.5%
ABBV アッヴィ 3.1%
Others その他 47.0%

VHT銘柄

上位銘柄はジョンソンエンドジョンソンやファイザー、メルクなどヘルスケア業界の巨人達です。
安心して長期保有できる黄金銘柄と言えます。

 

ステートストリート XLV

 

ティッカー 会社名 比率
JNJ ジョンソンエンドジョンソン 11.9%
PFE ファイザー 7.9%
MRK メルク 5.8%
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 5.0%
BMY ブリストル・マイヤーズ・スクイブ 4.5%
MDT メドトロニック 4.5%
AMGN アムジェン 4.3%
GILD ギリアド・サイエンシズ 4.3%
AGN アラガン 3.8%
ABBV アッヴィ 3.6%
Others その他 44.4%

XLV銘柄

 

バンガードVHTと構成銘柄は全く同じです。
若干構成比比率が違います。
ギリアド・サイエンシズ(GILD)の順位がVHTが4位なのに対して、このXLVは8位です。

 

ブラックロック IXJ

 

ティッカー 会社名 比率
JNJ ジョンソンエンドジョンソン 7.96%
NOVN ノバルティスファーマ 5.32%
PFE ファイザー 5.26%
ROG ロシュ 4.61%
MRK メルク 3.91%
UNH ユナイテッドヘルス・グループ 3.30%
BMY ブリストル・マイヤーズ・スクイブ 2.99%
MDT メドトロニック 2.97%
AMGN アムジェン 2.91%
GILD ギリアド・サイエンシズ 2.89%
Others その他 57.9%

IXJ銘柄

 

IXJはアメリカ以外にもグローバルに投資しているので、当然VHTやXLVにはない銘柄が含まれています。

VHTとXLVにはなくてIXJのみに含まれる主要米国外の会社は、スイスのノバルティスファーマ(NOVN)と同じくスイスのロシュ(ROG)です。

日本の会社では、アステラス製薬や武田薬品、大塚製薬などがIXJ構成銘柄に含まれています。

 

総括

3つのETFとも主要構成銘柄はほぼ同じです、当然ですが。
構成比トップはいずれもジョンソンエンドジョンソン(JNJ)です。

IXJのみスイスの巨大製薬企業であるノバルティス(NOVN)とロシュ(ROG)が含まれているので、これらのスイス企業も投資銘柄も含めたい人はIXJが選択肢となります。

VHTとXLVの上位構成銘柄はほぼ同じと言えます。
後で触れますが、VHTは下位銘柄に大型株以外の中小型株も含まれていますが、XLVは少数の大型銘柄のみで構成されている点が異なります。
ただ両社はほぼ同一と解釈して問題ないと思います。

VHT≒XLV
VHT,XLV + ノバルティス + ロシュ ≒ IXJ

 

投資銘柄数

投資は少なくとも10〜20銘柄に分散することが大切です。
数銘柄に集中投資する戦略はバフェットやケインズほどの見識と先見性がない限り、控えたほうが賢明です。
自分の考えが正しいと過信することは危険です、そういうのを行動ファイナンスの世界で「自信過剰」と言います。

最初はETFで分散投資したほうが賢明だと私は思っています。

3つのETFが何銘柄で構成されているのか見てみます。

VHT XLV IXJ
336銘柄 58銘柄 90銘柄

VHTが際立って多く336銘柄もあります。

最も少ないのが58銘柄のXLV。

一見銘柄数が最も多いVHTが優勢に思えるかもしれませんが、分散投資によるリスク低減効果は20銘柄を超えると急速に小さくなるので、VHTもXLVもあまり変わらないと思います。

結論として、3つのETFとも適切に分散投資できているということです。

 

経費率

投資成績は市場次第で管理不能です。
投資した後は市場の動きは見守る他ありません。

投資家が管理できるのは経費だけです。
管理できる経費はなるべく安く抑えることが鉄則です。

長期投資の敵は手数料と税金です。

特に清算まで永久的に発生する信託報酬には気を配る必要があります。

経費率を比較します。

VHT XLV IXJ
0.09% 0.14% 0.47%

最も安いのはバンガードの0.09%。
なんと0.1%を切っておりさすがバンガード。
驚愕の低コストと言えます。
100万円投資したとして、年間経費は900円。
ランチ1回分です。

次はステートストリートのXLVで0.14%
さすがにバンガードには敵わないものの、十分長期投資に値する低コスト。

最下位はIXJの0.47%
IXJは米国以外にも、スイスや英国、日本などグローバルに投資しているので経費率が上がってしまうものと推測されます。
グローバルに投資しているからと言えばこの経費率も許容しなくてはいけないかもしれませんが、0.47%というのは長期投資銘柄の経費率としてはやや高いと言えます。

VHT > XLV >>> IXJ

 

純資産金額(流動性)

実際に株式取引をしてみると痛感しまうが、流動性は非常に大切です。
流動性が低い国内ETFなど売買するときはとても疲れます。

流動性が高いと面倒な時は成行注文もできますし、安心感があります。

米国ETFは日本のETFに比べて格段に流動性が高いですが、やはり商品によってまちまちではあります。

流動性は基本的にそのETFの純資産規模に比例します。

3つのETFの純資産規模を比較します。

VHT XLV IXJ
52.34億米ドル 132.07億米ドル 15.86億米ドル

ステートストリートXLVが最も大きく132億ドル(約1.4兆円)。

次にバンガードVHTで52億ドル(約5,500億円)

最も小規模なのがブラックロックのIXJで16億ドル(約1,700億円)

どのETFもそれなりの規模はあるので清算される心配は不要ですが、純資産額には結構な差があることがわかります。

長期投資では頻繁に売買するわけではないので、そこまで流動性に過敏になる必要はありませんが、流動性が高いに越したことはないです。

XLV >> VHT >>IXJ

 

分配金利回り 予想外に低い数字で驚いた!

3つのETFの分配金利回りを比較します。

VHT XLV IXJ
1.06% 1.47% 3.06%

これはちょっと驚きの結果になりました。

VHTとXLVの分配金利回りはそれぞれ1.06%、1.47%とかなり低いです。
ヘルスケアセクターにはジョンソンエンドジョンソンなど成熟バリュー銘柄も多いので、少なくとも2%台の分配金利回りはあるだろうと予測していましたが、かなり低かったです。

対して、IXJは3%超とVHTとXLVを圧倒しています。

ん、何かおかしいかな?
IXJはスイスのノバルティスなど含まれていますが、上位構成銘柄は他2つと似通っています。
ここまで、差が出るものでしょうか?

それにしてもVHTの分配金利回りは低すぎないか?

この数字のデータソースは『米国会社四季報』なのですが、もしかしたら情報がおかしいのかな。
もし情報に間違いがあったら修正しておきます。

とりあえず今の情報が正しいとすると、
IXJ >>> XLV > VHT
という結果。

 

過去10年間リターン

過去のリターンが今後も続く保証はありませんが、過去の歴史を把握しておくことは大切です。

3つのETFの過去10年間のリターンを見てみます。

VHT XLV IXJ
10.09% 10.86% 8.14%

VHTとXLVは構成銘柄がほぼ同一なだけあって、リターンもほぼ同一。
経費率が高いにも関わらず僅かにXLV優勢。
大型株が強かったのでしょう。

グローバルに投資しているIXJはやや出遅れています。
2%リターンが低いのは結構悪いなという印象。
わずか2%と思うかもしれませんが、10年間複利で2%の差は結構な金額差になるものです。

XLV > VHT >>>> IXJ

 

総合結果

以上の比較をもとに、3つのETFの総合比較をします。

独断ですが、こんな感じで点数付けをしました。

総合結果

 

点数

VHT XLV IXJ
12点 13点 11点

 

かなり拮抗した結果。
すべて優良ETFなので、かなりレベルの高い争いとなっています。

1位はXLVで13点。
2位はVHTで12点
3位はIXJで11点。

ヘルスケアセクターETFに投資するならステートストリートのXLVが最も良い選択と言えそうです。
ですが、差は僅少です。

コストを重視するならバンガードのVHTに投資するのも、もちろんOK。

IXJは経費率が高いうえに過去リターンも相対的に悪いので、よほどスイス企業や日本企業をポートフォリオに含めたいという希望がない限り、選択肢から外してよいと思います。

  歴史に学ぶならヘルスケアは外せないが…

冒頭でも言いましたが、歴史上ヘルスケアセクターは最も高いリターンを投資家にもたらしました。

なぜ多額の開発投資が必要なヘルスケアセクターのリターンは高いのか。

ヘルスケア業界は、たしかに、いくつもの課題に直面している。
新薬開発コストは増大する一方で、訴訟の脅威がつきまとい、大衆薬との競合から厳しい値下げ圧力にさらされている。とはいえ、社会の高齢化を考えれば、ヘルスケア需要は今後増大するとみて間違いない。医薬品、病院、介護施設ほか、医療機器の需要も伸びるだろう。
(中略)
バリュエーションが過去の長期的な平均を大きく踏み越さないかぎり、向こう50年にかけて市場平均を上回る公算が高い。

(『株式投資の未来』 P288より抜粋)

VHTやXLVの現在(2016年6月)のPERは20倍弱であり、バリュエーションが過去の長期的平均を上回ってはいません。

ヘルスケアセクターの歴史的高パフォーマンスを鑑みると、ポートフォリオの一部にヘルスケア企業を含めないのは愚かでしょう。

S&P500ETFを買っても一部はヘルスケアセクターが含まれますが、それでは弱いと思います。
ここで紹介したヘルスケアセクターETF(VHTやXLV)の購入を推奨します。

推奨なのは間違いなのですが、この記事を書きながらちょっと購入に迷いが出てきました…。
それは分配金利回りが低すぎる点です。
1%台はちょっと想定外の低さでショック。

別に分配金を少なくして利益を内部留保したとしても、それをきちんと資本コスト超えるリターンで再投資して将来の配当増になれば理屈上は問題ないのです。
ですが、シーゲル教授が伝える最良の投資方法は高配当のバリュー銘柄に長期投資しして配当再投資を繰り返すことです。

ただそのシーゲル教授自身がヘルスケアセクターETFを推薦しているのですがね。

うーん、ちょっと迷いますね〜。
ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)の個別株を買うのもいいかな。
JNJなら配当利回りは3%弱はありますし、典型的な大型優良バリュー銘柄ですし。

またこの辺りの投資を行った時はブログで随時報告していきます。