「はれのひ」問題と仮想通貨NEM流出問題について

振袖販売・レンタル業「はれのひ」が破産手続きを開始するとの報道がありました。雲隠れしていた社長さんもようやく姿を現し、会見を開き謝罪していました。顧客は当然納得できないでしょうが、とりあえず一歩前進です。

報道によると負債総額は10億円超で内訳としては、
・銀行借入  3.8億円
・仕入れ先等 1.8億円
・未払税金  0.6億円
・未払賃金  0.2億円
・顧客払込金 3.0億円
などだそうです。

個人の被害額は3億円とかなり大きいですが、この中での弁済順位は残念ながら低いです。

破産者の財産を可能な限り換金して債権者に弁済することが破産の目的ですが、優先して弁済される債権があります。最優先は破産管財人や裁判費用で、次が税金(租税債権)と社員の給料(労働債権)です。

未払税金と未払賃金だけで0.8億円ありますが、社長個人の資産は「不動産はなく、預金は数十万円のみ」とのことみたいで、顧客被害額3億円がすべて弁済されるのはかなり難しいのではと思います。

「てるみくらぶ問題」も同じ類ですが、こういう時顧客は泣き寝入りするしかないことが多く、ホントにお気の毒です。その業者を選んだ顧客にも一端の責任があると言う人もたまにいますが、やはりそれは酷で、顧客としてはただただ不運でお気の毒としかいいようがありません。

こういうのってお客が事前に対策できることではありません。私の友人も3年ほど前に、海外旅行のチケットを取り次いだ会社が急に音信不通になり20万円ほど損したことがありました。あまり名前の知らないマイナーな業者だったけど、金額が安かったから選んだと言っていました。

客側で出来る対策としては、あまり名前が知られてない信用力のなさそうな業者にお金を預けないということくらいですかね。

とは言え、振袖業者ってどこか大手があるというより、小規模で展開している業者がたくさんあるという印象があります。まさか自分が契約した業者が当日逃げるなんて思いもしませんよね。

複数の業者に分散して発注するなんて当然無理なわけであって、どこか一つの業者を選んで数十万円という大金を預けるしかありません。

 

 

最近大々的なプロモーション活動で口座開設数が大きく伸びているコインチェックで、仮想通貨NEM(ネム)が流出する事件がありました。金額はなんと580億円と、3億円事件がかわいく見える金額規模です。

このNEMの事件についても、やはり顧客は運が悪くお気の毒という思いはあるものの、仮にポートフォリオ全体が痛むくらい損をしていたとすれば、顧客自身のリスク管理にも問題があるだろうと思います。某お笑い芸人の方は貯金すべて消えたとツイートしたそうですが、まだ仕事のネタになるだけマシかもしれません。

仮想通貨も金融投資の一部です。きちんと分散投資することは重要です。ポートフォリオ全体の何%を仮想通貨にするのか、その中でいくつの通貨に分けて投資するのか、といったことを考えることは重要かと。

一発ドカン!と当てるのがこういう投機取引の面白さでもあるでしょうから、各個人の責任の下でそれを追求するのは全然構わないと思います。が、どれくらいリスクがあるのかきちんと定量的に把握しておくことは大切です。

目的次第ですかね。デジタル通貨という技術の未来を信じて仮想通貨に長期投資する人は、やはり複数のコインに分散投資した方がよいかなと思います。一方で「もっと高値で買ってくれる人がすぐに現れるだろう」という短期的な値上がり期待で買う人は、特定コインに集中投資でもいいと思いますが、機械的な損切りや最大損失額の把握を行うことが重要になります。

今回の事件はテールリスクに該当するような事象だとは思いますが、事前に分散投資して対策していた人は被害を最小限に抑えることができたはずです。

ところで、本日報道がありましたが、NEM流出被害分については、会社財産できちんと保証されるみたいです。これはホントによかったです。自分の財産を失って絶望していた人もきっといたでしょうから、きちんと返金されるというニュースを見て安心しました。返金されて当然という見方もあるでしょうけど、こういう事件はだいたい顧客は泣き寝入りするケースが多いし、正直私もきっとそうなっちゃうだろうと踏んでいたので、返金が決まって良かったです。「はれのひ」社長にも見習って欲しいですな。

 

金融投資は、せっかく分散できるんだから分散しておきましょう。

少し金融投資の勉強をした人なら、株式投資で分散投資をするなんて当たり前のことかもしれません。

しかし、世の中を見渡せば分散投資できることなんてほとんどありません。人生、常に何かを選んでそれに全リソースを投入せねばならないケースの方が圧倒的に多いです。大学は入試までは複数の学校を同時に受験できますが、入学するのは一校だけです。就職先も最終的に一つに絞る必要があります。結婚相手も複数持つことはできません。

そう考えると、人生って常に集中投資ですね。最初のステップで複数の小さなチャレンジ(分散投資的な)をすることはあっても、最終的には一つの分野、一つの会社に自分の時間・お金を集中投資することになります。私は「会計」という分野にかなり集中投資してきました。それぞれが、自分の仕事領域でプロになることで経済全体の厚生が高まります。「比較優位」って奴ですね。

金融投資は分散投資が可能な稀有な分野です。

金融投資以外の人生の大半では集中投資を余儀なくされます。「選択と集中」なんて言葉がありますが、そりゃ「選択」したらそれに「集中」するのはある意味で当然です。会社もキャリアも結婚も子どもも、現代は比較的自由に選択できる時代です。画一的な人生スタイルというものはなく、自分なりの価値観を持って自分が納得する人生を送っていく必要があります。

何かを選択する=集中投資する
だと僕は思っています。数多くあるものから選択するんだから、必然的にその選んだものに集中投資することになります。

東京にも住みつつ、福岡にも住みつつ、札幌にも住みつつ、カリフォルニアにも住む、なんてこと普通は無理なわけです。大富豪の自由人なら可能かもしれませんが。サラリーマンも頑張りつつ、起業もやるなんて普通は無理です。どちらかを選ぶ必要があります。

そうやって、私たちは無意識的にある選択肢を捨て、ある選択肢を選んでそれに集中投資しています。22歳の時に選んだ会社を40年勤め上げるなんて、これ以上ない集中投資です。

自分という身が一つである以上、人生は集中投資の連続です。自分の選んだ選択肢を信じて前を向いて進むのみです。以前、既婚者の方が「一度結婚したら、周りに綺麗だな~と思う女性がいても一切見ない!」という主旨のことを言ってたのを思い出します。

金融投資、株式投資って「選択」する必要がありません。あれもこれも選ぶことができます。コカ・コーラ株とペプシコ株とで無理して一つを選ぶ必要はなく、欲しけりゃ両方買えます。株と債券も両方持つことができます。

ファイナンス理論的にも、銘柄を分散させることで同じリスクの下でリターンを高めることができることが分かっています。概ね10銘柄以上に分散して投資すると分散効果がはっきり表れます。

分散投資できるって素晴らしいことだと思うんですよね。人生振り返ると、いつも集中投資だったと思いませんか? A高校かB高校かどちらか選びなさい?といったように。でもそれは仕方ないです。そういうもんですから。

金融投資、株式投資って分散投資ができる素晴らしい世界です。
AもBもCもDも全部総取りできる世界です。しかも、総取りした方がリスク調整後のパフォーマンスが改善するというおまけ付きです。

人生は集中投資の連続で疲れるもんですから、金融投資くらいゆっくり分散していきましょう。