配当は下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル

米株のP/Eは歴史的な高水準にあるというのは承知していましたが、まさかこれほどの暴落を今年経験できるとは夢にも思いませんでした。2月後半に3万ドル目前だったダウ平均は、3月中旬に2万1千ドル台を付けました。30%に迫る下落率。個人的な感覚としては「調整」ではなく「暴落」です。「大暴落」ではないけど。

これで暴落を経験できた投資家にレベルアップできました。聖剣3でいうところで、1回目のクラスチェンジをした心境です(レベル18)。ファイターからグラディエーターになりました。デュエリストを目指すべく精進します。

さて、シーゲル先生は『株式投資の未来』の中で配当は下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセルになると言っています。ちょっと長いですが引用します。

相場が下落する局面で、配当はとくに2つの役割で投資家に貢献する。まず再投資を通じて保有株を余分に積み増せるので、これがポートフォリオの価値下落を受け止めるクッションとなる。下落局面に再投資を通じて保有株を積みます配当の働きを、わたしは「下落相場の安全装置(プロテクター)」と呼んでいる。

しかも、買い増した株式は、相場がいったん回復すれば、下落に対するクッションどころではない役割を果たす。保有株数が増すほど、将来のリターンが加速するからだ、つまり配当再投資は、下落局面でプロテクターとなり、株価がいったん上昇に転じれば、「リターンの加速装置(アクセル)」となる。配当を支払う銘柄が、市場がサイクルを繰り返すうちに、最高のリターンをもたらすのはこのためだ。

『株式投資の未来』第10章より抜粋

本で読んだことをいまリアルに実感できています。昨年2019年末時点の保有株の時価は約2700万円で、年間配当は100万円に行くか行かないかくらいでした。ポートフォリオの平均配当利回りは3.7%でした(100万 / 2700万)。

それが今はどうでしょうか。現在、S&P500指数は年初から20%ほど下落していますから、私の株式時価も同じ程度目減りしているとしたら配当利回りは4.6%にまで上昇している計算になります。あ、ネット証券を見れば保有株の時価は正確にわかりますが、惨状を見たくないので推定計算で勘弁を。

4.6%って大きいですね。税金無視すれば、配当を再投資するだけで5%近く株式資産を増やせるわけですから。こういう時に諦めずにコツコツ配当再投資を繰り返すことで効率的に保有株数を増やすことができます。そして、それが上昇相場のアクセルになる。

自社株買いも下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセル

シーゲル先生は配当にしか言及してませんが、私は配当だけでなく自社株買いも下落相場のプロテクター、上昇相場のアクセルになると言いたいです。自社の未来に自信のある企業の経営者は、今回の下落局面でいくらか買い戻しを実施しているかもしれません。それも配当再投資と同じ効果があります。いや税金がかからない点を考慮すれば、自社株買いの方が効果が高いくらいです。

自社株買いのデメリットは再投資先を自分で選べない点ですね。配当ならどの銘柄に再投資できるか自分で決めれます。ただし、税務メリットは自社株買いに分があります。

配当を出してないけど自社株買いを行っている企業を見かけることも結構あります。代表的なところではグーグル親会社のアルファベットです。アルファベットの自社株買い金額は年々増加しています。

FY19の自社株買い規模は180億ドルを超えており、これはアルファベット全体の税引き後利益の54%に相当します。

アルファベット株から配当はもらえないから、今みたいな下落局面で配当再投資はできません。しかし、自社株買いという名の企業自らの配当再投資が行われています。

配当だけでなく自社株買いも重要です。配当が多い少ないではなく、総株主還元が多いか少ないかに注目した方がいいと思います。大半の米国企業は配当と自社株買い両方行っています。

ある程度歴史のある還元ステージの米国企業に投資している場合、「株式益回り≒総還元利回り」だと考えて差し支えないと思います。なぜなら、多くの企業が純利益の100%を株主還元に回しているからです。低利で負債を調達することで、純利益を超える株主還元を実施している企業も珍しくありません。

私の場合、昨年末時点の保有株の益回りは6.5%でした(つまりPER15倍ちょい)。それが今回の下落で益回りは8.1%にまで上昇しています。総還元性向100%と仮定すると、総還元利回りが8.1%ということになります。この8.1%のうち4.6%は配当として3.5%は自社株買いとして再投資されます。

保有株式の8.1%に相当する金額がマーケットに再投資されるわけです。今の下落局面がダラダラ続いてくれれば、この地道な再投資が将来の上昇相場のアクセルになるのは間違いありません。

暴落は読めません。ほぼフルインベストでバイ&ホールドを続けると決めている私のような投資家は、暴落に遭遇しても追加の投資資金はそれほど持ち合わせていません。とてももどかしい。でも、それでも3か月毎に振り込まれる配当、自社株買いだけでも結構な再投資効果があります。

暴落前に売って底値で再びマーケットに参入するというのは難しい特殊解です。少なくとも凡人の私には無理。たまたま1回上手くいったとしても、次の暴落では失敗しそうです。再現性のある一般解は、やはり優良株をぎゅっと握り締めて配当を再投資すること、企業の自社株買いの恩恵を受けることだと思います。

配当が入金されるドル口座に20万円ちょっと貯まっていたはず。しっかり再投資していきたいと思います。