昨日の日経の一面に目が留まりました。

脱化石燃料に向け環境負荷の高い企業への投資撤退の動き広まる

 

世界的に異常気象が相次ぐなか、気候変動リスクの回避へ投資マネーが動き出した。化石燃料などに関連する企業の株式や債券を売却すると決めた投資家は世界で900超、資産規模は約700兆円にのぼる。

(中略)

米ニューヨーク市の年金基金も18年1月に化石燃料企業からの投資撤退を決定、米エクソンモービルやシェブロンなど約190社、50億ドルが売却の候補となる。

(中略)

世界的にエネルギー関連企業の株価低迷が目立っているのは、環境負荷の高い企業に対する投資撤退の動きが広がっていることも背景にある。

日本経済新聞より抜粋

 

今年の夏はめちゃ暑いですよね。最近、少し和らいできましたが。

体調大丈夫ですか?
私は無駄にめっちゃ元気です!w

毎年毎年、異常気象と言われ続けて、もはや何が「異常」なのかよくわからなくなってきました。世界的な「異常」気象の影響もあってか、世界中のエネルギー関連企業が目の敵にあっているようです。

日経の記事によれば、大手の機関投資家が化石燃料企業への投資から撤退しているそうです。環境負荷の高いビジネスに賛同することはできないということが理由です。これもESG投資の一環と言えそうです。

2014年夏頃から原油価格が急落し、今も当時の1バレル100ドルには戻っていません。そこまで原油価格が上昇することは、少なくとも今後数年では難しいと思われます。

原油安に伴って、エクソンモービルやシェブロン、シュルンベルジェといった石油関連企業の株価も大きく下落し、投資家は痛手を受けてきました。原油安に加えて、日経の記事にある通り世界的にエネルギー株離れが推進されていることから、エクソン等のエネルギー関連銘柄は冴えない展開が続きそうです。

しかし、長期投資家にとって、マーケットから不人気になる銘柄・セクターは買いのチャンスとも言えます。株式リターンを決めるのは投資家の人気ではなく、顧客の人気です。お客さんがこれからも石油エネルギーを必要としている限り、エネルギー株の投資リターン(長期での)は安泰です。

「株式投資のリターンは、利益成長率の絶対値が大きいかどうかではなく、いかに投資家期待を上回る成長を実現できたかで決まる」

ジェレミー・シーゲル氏の『株式投資の未来』を読んで、もっとも勉強になったことがこれです。成長成長を追い求めるんじゃなくって、なるべく世間的に注目を浴びていない領域で地味に高収益を続けている銘柄にチャンスがあると理解しました。

こういう見識を持てたこともあって、私は数百万円保有していた新興国株式クラスをすべて手仕舞いました。今は米国株オンリーです。

ピーター・リンチもこんなことを言っています。

私が何より避けたいのは、超人気産業のなかの超人気会社である。

『ピーター・リンチの株で勝つ』より

エネルギーセクターは「超人気産業」になってしまいました。

投資家期待が下がっているからって、安易に飛びつけばいいとは思いません。その期待の低下が合理的な可能性も十分あるからです。つまり、いくら投資家期待が下がっているといっても、実際に将来の業績が低迷する可能性が大きいなら、それは割安になっているわけでも何でもないということです。

企業のビジネスの実態、将来性は何も変わっていないのに、投資家が一方的に悲観的になって株を売り払う時が狙い目です。

今回の投資マネーの動きは、やや政策的な感じがします。将来的に石油関連企業の収益が落ち込んで投資リターンも悪化するだろうという考えがあって、エネルギー株を売却しているようには見えません。金銭的リターンは横に置いて、環境保護のために機関投資家として行動しようというしています。

化石燃料が大気汚染や異常気象の一因になっていることは間違いないでしょう。あまり専門的なことはわかりませんが。

化石燃料から手を引いて社会を変えようという、気持ち思いは理解できます。自分たちだけじゃなくって、100年200年後の将来世代の利益まできちんと考える義務があります。特に豊かな先進国諸国に住んでいる私たちには、その義務があると思います。

幸運な1%として生まれた人間は、残りの99%の人間のことを考える義務がある。

ウォーレン・バフェット

現代の豊かで安全な戦争のない日本に生まれ育った私たちは、みな1%に該当すると思います。

化石燃料ではなく、もっとクリーンなエネルギーに転換しようという流れには賛同します。空気が綺麗な方が気持ちいいです。

一方で、経済発展を続ける中国やアジア新興国を始めとした地域では、今後も今以上に石油エネルギーを必要とすることもまた事実です。先進国も一緒です。世界のエネルギー源の85%は化石燃料(石油、天然ガス、石炭)です。再生可能エネルギーの割合はたったの3%に過ぎません。

まだまだ、従来のエネルギー関連企業は社会に必要です。これからも、鉱区権益の取得、探鉱、パイプライン敷設、油井掘削、石油生産といったビジネスは必要です。化石燃料なしで世界経済が回る日は、私たちが生きている時代には訪れないでしょう。

エクソンモービル、シェブロン、ロイヤルダッチ・シェル、BP、シュルンベルジェ、ハリバートン、コノコフィリップス、フィリップス66

これらエネルギー関連企業は社会になくてはならない存在です。

株式会社が存続するには、誰かがリスク資本を提供しなくてはなりません。70億人いる世界の誰かが株式を保有しなくてなりません。

株主は目立たない存在ですが、リスク資本を供給するという大切な役割を担っています。

皆が株を買いたい買いたいと言っている時、リスク資本が潤沢に供給されている時は、投資タイミングとして良いとは言えません。そういう時(投資家期待が高まっている時)は株価が割高になりがちです。

そうじゃなくって、みんなが「嫌だ、怖くてこんな企業の株持ちたくない」と思っている時に、株を買ってリスク資本を提供することは、とても社会的に価値があることです。なぜなら、どんな企業であれ常にリスク資本の提供者を必要としているからです。ビジネスリスクを負ってくれる株主の存在なしで、企業運営はできません。

株主がホントにこの世からいなくなったら、世界の仕事はストップします。株主って空気みたいな存在、居て当たり前の存在だから、普段はその重要性を感じないだけです。

世界的に高まる石油株への売り圧力は、石油株へリスク資本を提供することの価値を引き上げます。こういう時に「我こそは!」と名乗りを上げて、エネルギー関連企業にリスク資本を提供する人は将来報われると思います。ただし、株価低迷が長期的に続く可能性が高く、忍耐力が求められます。