あなたが給与所得者(=サラリーマン)なら、年収を上げる努力をするより、節約を頑張った方が効率的にお金を貯めることができます。なぜなら、どれだけ生活経費を削減してもあなたの所得は上がらず、結果として税金も上がらないからです。個人の節約には税務メリットがあるということです。

税金は収入ではなく所得に掛かる

株式投資をやってるあなたにこんな事を言うのは「釈迦に説法」かもしませんが、一応の説明です。税金は収入ではなく所得に掛かります。収入は売上高、所得は利益と読み替えてOKです。厳密には違いますが、ざっくり理解としてはそれで問題ありません。

企業の法人税は税引前純利益に一定の調整を加えた法人所得に法人税率を乗じて計算されます。マーケティングや研究開発、採用増などでお金をたくさん使えば使うほど企業の利益は少なくなります。利益が減ると国家に収める法人税の額も少なくなります。

利益が少ないどころか、マイナスになると税金を払う必要すらありません。利益に関係なく発生する外形標準課税というものもありますが、利益(所得)を課税対象とする税金はゼロになります。中小企業の6割超は赤字法人で法人税を納めていないという統計データもあるくらいです。

金を使えば使うほど利益(所得)が減り、税金も減る。中小企業のオーナーがベンツやBMWに乗っているのは、儲かっているからというより、所得を圧縮して税金を減らしたいからという理由もあるようです。まあ、個人的にはいくら所得を減らすためとは言え、不必要に高額な買い物をするのは本末転倒ではないかと思いますけどね。

利益=売上高-費用
費用削減で利益が増えれば税金は増える。
費用増加で利益が減れば税金は減る。
これが原則です。

給与所得は費用(給与所得控除)が固定

所得に対して税金が掛かるのは私たちサラリーマンも同じです。年収300万円とか500万円と言っているのは、所得ではなく給与収入(額面)です。企業でいう売上高に相当するものです。

その額面年収から費用を差し引いて給与所得(利益)が計算され、その給与所得に税率を乗じて所得税が算出されます。

この費用がくせ者です。企業の世界とは違います。サラリーマンが年収から差し引いてよい費用の金額は、年収に応じて固定値として決まっています。給与所得控除と呼ばれます。

国税庁ホームページより)

たとえば、年収500万円だと給与所得控除は500万円×20%+54万円=154万円となります。500万円(給与収入)から154万円(給与所得控除)を差し引くと346万円になります。この346万円に税率をかければ所得税が計算されます。この所得税率も超過累進課税と言って、所得に応じて異なる税率が適用されます。この記事では詳細は省きます。

ここで強調しておきたいことは、年収500万円の人にとって154万円という給与所得控除は常に固定ということです。売上高から控除できる費用は固定されているのです。これは企業の損益計算ではあり得ない、給与所得者だけに認められた(強制された)奇妙な制度です。

費用とは収入を得るために要した費用です。トヨタ自動車にとっての費用は車を製造する工場、機械の減価償却費、人件費、部品代などです。これらの費用が増えれば利益が減って税金も減ります。

では、私たちサラリーマンが給料を稼ぐために要した費用とは何でしょうか。スーツ、シューズ、ネクタイ、ワイシャツ、仕事の勉強のための書籍、、他には何があるでしょうか。そもそも、労働力を回復するためという意味では住居費、食費だって経費と解釈することもできます。年1回の海外旅行も仕事を頑張るためのリフレッシュと解釈すれば、サラリーマン稼業の経費と言えるかもしれません。

と、どこまでを経費にしていいかは解釈が難しいですね。また、サラリーマンは源泉徴収制度で税金に対して思考停止になるように仕向けられているので、自分で必要経費なんて計算して欲しくないのが税金を徴収する側の国家の本音です。というわけで、サラリーマンの必要経費は年収に応じてざっくり計算するように法律で決まっているわけです。それが給与所得控除です。

節約して投資の種銭を貯める

冒頭の話に戻りますが、だからサラリーマンは節約が得なんです。いくら節約しても給与所得控除の金額は変わらないからです。給与所得控除は額面年収のみによって決まります。

企業がコストを削減すれば確かに利益は増えますが、それに応じて税金も増えます。コスト削減した分がそのまま利益に残るわけではありません。一方で、個人はコスト削減した分がそのまま手元にキャッシュとして残ります。なぜなら、コストを削減しても給与所得控除は減らず、所得税が増えることはないからです。

こういった奇妙な税制があるが故に、個人は法人よりも経費削減の効果が相対的に大きいです。節約は収入アップよりも効果的なんです。収入が上がれば容赦なく税金も上がりますが、費用が減っても税金は変わりません。

株式投資は先ずは100万円程度の種銭を貯めないと始まりません。数万円から徐々にスタートするのは問題ないとして、早いとこ100万円くらいの元本は確保したいところです。そのためには、地味な解決策ですがやはり節約することです。無駄なお金は使わない。「資本主義の罠」にはまらないこと。

どこまで節約するかは人それぞれですね。あまりに質素な生活をし過ぎてQOLが下がり過ぎるのも微妙ですしね。まあ、若い内はボロ家に住んででもお金を貯めた方が後々楽できますよ。体はお金より大事な資本だから、食費は削り過ぎない方がいいと思いますが。

私は25歳前後の頃、家賃1万円(水道光熱費込み)の超おんぼろ社員寮に住んでシコシコと貯金してました。冗談じゃなくってホントに独房みたいな部屋です。数年前に取り壊されました。あの頃の独房生活があったから、そこそこの金融資本を蓄積することができました。後悔はしてません。人生のどこかでストイックに頑張る期間があってもいいと思います。