株式投資を始めてから現代の貨幣、お金とは何なのか真剣に考えるようになりました。色んな本も読んできました。なぜ考えるようになったかと言うと、将来のインフレが自分の投資利益(実質リターン)に影響するからです。どれだけ考えてもマクロ経済なんて予測できるとは思ってないですが、自分なりの考えは持っておきたいなと思い。あと、単純にお金って意外と奥が深いなあという興味心もありますかね。

さて、新型コロナウイルスによるロックダウン等で経済活動は一時停止状態になっています。生活に困窮する人を救済するため、アメリカ政府は現金給付を含む2兆ドル以上の財政出動を決めました。日本も紆余曲折あって全員に10万円支給となるみたいです。正直私は困ってませんが、くれるなら貰います。せめて貯金はせずに投資か消費に使いたいです。

このように大規模な財政政策によって紙幣が刷られると、インフレが懸念されます。インフレとは物価が上がることですが、裏を返せば貨幣価値が下がるということです。

インフレ:物価上昇=貨幣価値下落
デフレ:物価下落=貨幣価値上昇

お金の量が増えればその相対的価値が下がって、物価が上がる可能性があります。一部の識者もインフレ懸念を訴えています。ブリッジウォーターのレイ・ダリオ氏は「現金はゴミだ!」と言っています。

私なりに考えたんですが、別に学術的な根拠とか何もないですが、インフレは起きない可能性の方が高いという結論に達しました。ただの素人意見ですが。

先ず、銀行の日銀当座預金残高を増やしてもインフレが起きないことは日本で実証済みですね。異次元緩和で2%のインフレを達成すると、2013年に日銀は宣言しましたが成果は乏しいです。金利が下がり銀行に紙幣が積み上げられても、それが貸出を通じて市中経済に出回らないと実質的にマネーの量は増えません。

今回はその一歩先を行きます。財政政策は紙幣を刷るという意味で金融政策を伴いますが、実体経済に直接マネーを投入するという点でよりインフレ的です。財政政策とは銀行ではなく政府が行う信用創造です。

もはやマネーは銀行のシステム内に留まらずに、個人や企業といった経済主体の手に渡ります。しかも異例の規模です。となると、インフレは避けられないという意見は確かに納得感があります。

でも、なんか脳内で思考実験を繰り返せば繰り返すほど、インフレは起きそうにないと思っちゃいます。

物価は需要と供給と一致点で決まります。需要>供給となれば物価が上がります。政府が国民や企業にお金を配ったら、食品や飲料、ガソリンなどを中心に需要が増えます。でも、それで物価が上がることはないかなと。

今回のパンデミックでみんな貯金しそうです。ロックダウンが解除された途端に、「よっしゃー、今まで我慢してきた分消費しまくるぜー!」てな感じで、旅行やショッピングの需要が急増するとは思えません。

企業の投資もより慎重になると思います。居酒屋などの飲食業が苦しい立場に置かれていますが、その一因としてそれらが日銭商売という点があげられます。一部の大企業チェーンでなければ、売上がなければ3ヵ月も資金繰りが持たない事業主は大勢います。コロナ後に店を再開するにしても、今後は今までより潤沢な運転資金を確保しておこうとするでしょう。

そんな感じで世界全体的に貯蓄が増える気がします。すでに長寿化で貯蓄率が高まっていましたが、その流れが加速しそうです。

財政出動でお金を経済に放り込んでも、それがグルグル世の中を回ることはない気がします。慎重にゆっくり使われるでしょう、きっと。テクノロジーの発達で供給側の生産性が上昇し続けているのもあって、ちょっとお金を配ったところでインフレが起きるほどの需要超過にはならないと思います。

マネーの量自体はインフレと直接関係ない気がしてならないです。国民一人に1億円配るとか、そこまでやると別ですが。それよりもマネーの流通スピードだと思うんですよね。経済学者のミルトン・フリードマンは「インフレはいついかなる場合も貨幣的な現象だ」という言葉を残していますが、それよりもインフレは人間心理的な現象という側面が大きいと思います(←アメリカを代表する古典派経済学者に盾突くw)。

お金が増えても、それが勢いよく消費に使われないとインフレは起きないです。個人も企業も支出には慎重になりそうですよね、今回の件で。将来を気にせずお金を使おう!という明るいマインドになるとは思えず、さほど物価は上がらない気がします。

なので、長期債の価値が急に毀損することはないかなと。低金利はしばらく続く可能性が高いと踏んでます。