10年弱前でしょうか、村上ファンドとかホリエモンがメディアを賑やかせていたころ、「会社は誰ものか?」という記事がテレビでも、雑誌でもよく取り上げられていました。
大衆メディアのテレビでも話題に上がっていたくらいです。

株主のもの
従業員のもの
すべてのステークホルダーのもの
社会のもの

とか色々議論が出るわけですが、こんなの議論になること自体理解不能です。

会社は株主のものです。

だって、そもそも株式会社というのは複数の株主がお金を出し合って設立した営利機関ですよ。
その金額はバランスシートの資本金と資本準備金の金額をみればわかります。
もうこの事実だけでも、会社は株主のものであることは明白です。

上場すると株主は当初の出資者ではなくなっていくため、会社設立者という実感が本人的にも社会的にも薄れていくから、株主=会社所有者という意識も薄れていくだけです。
株式を購入するということは、会社の一部を保有することです。

バフェットは言っています。
「企業の一部を所有するつもりで株式投資に取り組めないのであれば、株式市場に近づいてはいけない」

アメリカでは従業員は利益を稼ぐための機械とみなされています。
対して、日本やドイツでは従業員は正社員であれば、長期雇用前提で比較的丁重に扱われますし、会社からの教育投資も手厚いです。

長期雇用されていて従業員(正社員)はハッピーかもしれませんが、それでも従業員というのは株主に経営を委託された経営陣が利益を上げるために採用したに過ぎません。

日本では会社は株主のものではなく普段から頑張っている従業員のものだと言われることがあります。
文化的・法律的に従業員の保護が手厚いということと、会社の所有者は誰かということは全くの無関係です。
日本でも間違いなく会社は株主のものです。

「会社は株主のもの」という意識が企業トップクラスにないことが、日本株長期低迷の一因です。
会社はただいいものを生産して利益を出すだけではダメです。
株主資本コストを上回る利益率を求められるのです。
だからROEを上げろという最近の風潮は正しいです。
余分なお金は株主に返しましょう。

資本主義社会とはリスクをテイクした者(株主)にそのご褒美を与える制度です。
何のご褒美かというと、リスクをとったことに対する報酬ですということです。
投資した企業の業績が悪くなれば株価下落という損失を被るし、倒産すれば全額パーになるわけですから、ご褒美を与えないと誰もリスクテイク(株式購入)をしなくなります。

アベノミクスで大企業の利益は過去最高を記録しているのに、庶民の生活はよくならないと言われますが、そりゃそうだろ、と思います。
こういう報道を午後のワイドショーでするならまだしも、日経新聞とかに掲載されているのを見ると萎えてしまいます。

日本では普通の庶民はほとんど株式を保有していないんですから、企業業績拡大の恩恵を受けられなくて当然です。
円安で儲かった大企業の所有者は株主なのですから、株主だけが儲かるのは必然です。
会社が儲かっても儲からなくても、従業員は固定給もらっておしまいです。
業績がいいと会社はちょっと多めのボーナスを支払いますが、たかが知れています。

その代わり、リーマンショックが起こって企業業績が悪化したときに真っ先に損失を被ったのは株主でした。
株価は半減したのですから、大ダメージです。

それに引き換え、会社の従業員は変わらず固定給を貰い続けることができます。
ちょっとボーナスが減るとか、残業申請できなくなるとかあるでしょうが、株主が受けた損害に比べればそんなの小さなことです。

これからは日本もアメリカ型の資本主義に近づいていくことは避けられません。
これは最近のウォールストリートジャーナルの記事抜粋です。

首相の目から見て恐らく最も重要なのは、企業は株主ではなく社員のためにあるという日本で一般的な考え方を終身雇用制度が助長していることだろう。首相が提案する労働市場改革は雇用主がより柔軟に雇用や解雇をできるようにするもので、「これはわれわれが望む国のあるべき姿ではない」という異論に直面している。

(ウォールストリートジャーナル日本版 『【寄稿】死にゆく日本の終身雇用「サラリーマン」』2016年5月31日 より抜粋)

 

アメリカ人は日本人よりも豊かで贅沢な生活をしています。
それは借金を厭わない文化もあるでしょうが、一番は普通の庶民が有価証券投資をしているからだと思います。

アメリカ人は普通に株式投資しています。
バンガードなどの優良なETFを長期保有している人など珍しくありません。
証券会社所属ではない独立FAも多く存在しています。
文化が「自己責任」なので、勉強も仕事も資産運用も皆必死です。

成熟社会の日本で国民一人一人が豊かな生活を取り戻すためには貯蓄から投資だというのは、正しいと思っています。
多くの人が基本的なファイナンシャルリテラシーを持ち、資本主義社会のルールを理解し、正しい理解でまっとうな長期株式投資をする。これによって増幅する国民経済厚生は計り知れないと思います。

今の日本の教育制度でこれを伝えるのは不可能です。
本を読むなり、ネットで調べるなりの努力が必要です。
本当はそんな努力しなくてもいいように義務教育で教えればいいのですが、文科省はそんな気ないようなので自助努力で頑張るしかありません。

資本主義社会のルールを知りましょう。
会社は株主のものである、という事実を理解してください。
このブログを偶然読んだあなた、今から真剣に株式投資の勉強をして(と言っても大した勉強は不要です)、自分だけでも周りの社畜同僚に抜け駆けして、豊かになることを目指してください。