9月28日にOPECが原油生産の減産を合意したとの報道を受けて、エネルギーセクターの株価は軒並み上昇しています。
OPEC報道によってWTI原油価格は1バレル44ドル台から、48ドル台まで急伸しました。
原油減産はあくまでも概要の合意に過ぎず今後の行方はまだ不透明です、そもそもの減産幅も大きくはありません。今回の合意を以ってしても原油需給が急速に改善するとは期待されておらず、2017年後半くらいまでは高くて60ドルくらいまでで推移するのではないかというのが、市場のコンセンサスのようです。
急激な原油価格上昇はなくエネルギーセクター銘柄も上り一本調子とまではいかないでしょう。しかし、これから中期的に見ればエネルギーセクターは魅力的だと思います。
エネルギーセクターETFであるXLEの2016年初来リターンは19.4%とS&P500の7%を大きく上回っており、生活必需品や公益事業と並ぶ高リターンです。生活必需品や公益は割高感があるとずっと言われていますが、エネルギーセクターは20%も株高になった今でもまだまだ買い場だと思います。
PERは40倍と一見高く見えますが、これは悲観的な利益に基づいての数値なので決して割高であることを示しているわけではありません。むしろエネルギーセクター株はPERが高いときが買い場であるケースが多いくらいです。
原油価格は目前はまだ供給過剰気味ですが、徐々に過剰供給は解消される見込みです。バンクオブアメリカ・メリルリンチのステラジストは2016年末に1バレル54ドル、2017年末に69ドルを見込んでいます。
エネルギーセクター株の株価はやはり原油価格によって大きく上下することが不可避ですので、いくら今後期待できるからと言ってポートフォリオの半分以上をエネルギー株にすることはお勧めできません。買い過ぎには歯止めをかけつつも、積極的にエネルギー株を仕込んでおく価値はあると思います。
WSJ推奨エネルギー株
WSJでは、今後成長が期待できるエネルギー株として以下をピックしています。
ティッカー | 会社名 |
ECA | エンカナ |
SWN | サウスウエスタン・エナジー |
SM | SMエナジー |
CLR | コンチネンタル・ソリーシズ |
APC | アナダルコ・ペトロリアム |
WLL | ホワイティング・ペトロリアム |
この中で、サウスウエスタン・エナジー(SWN)とアナダルコ・ペトロリアム(APC)の2つを取り上げて財務データを見てみました。
サウスウエスタン・エナジー
サウスウエスタン・エナジーは天然ガスの探鉱・開発を行っている独立系のエネルギー会社で、アーカンソー州とペンシルベニア州でシェールガス生産を行っています。
売上規模は年間3千億円前後です。
SWNのEPS推移ですが、2015年度にマイナスになっています。
(単位:百万USD)
過去10年のキャッシュフローです。
フリーキャッシュフローが恒常的にマイナスですし、2014年は大きなマイナスとなっています。
この会社、どうやら過去10年ずっと無配のようです。もちろん自社株買いはなし。
アナダルコ・ペトロリアム
アナダルコ・ペトロリアムは天然ガス、原油、コンデンサートを探査、開発する大手独立系石油会社です。
過去10年のEPSですが、やはり2015年マイナスとなっています。
(単位:百万USD)
キャッシュの推移ですが、フリーキャッシュフローは恒常的に低いし2015年は大きなマイナスです。2015年度に至っては営業CFまでマイナスとなっています。
アナダルコは配当は続けてきましたが、2016年は残念ながら減配になる見込みです。自社株買いはゼロではないですが、非常に少ないです。
XOMやCVXが安心です
確かに短期的な大きな反発を狙うならWSJが挙げているような銘柄も悪くはないと思いますが、長期投資対象として保有し続けようと考えているなら、エクソンモービル(XOM)やシェブロン(CVX)が妥当だと思います。
これはエクソンモービルのキャッシュフローです。
(単位:百万USD)
エクソンモービルも確かに原油安の痛手を受けていますが、フリーCFはしっかりプラスを保っています。
これはエクソンモービルの株主還元指標です。
配当性向は高まってきていますが、増配を続けています。自社株買いにも積極的です。
エクソンはロックフェラー系譜の最大手石油会社です(ロックフェラーは昨年エクソン株をすべて売却してしまいましたが)。エクソンの経営にはロックフェラーの保守的な財務管理方針が浸透しています。だからこそ市況が悪化した昨今、無理することなく設備投資を抑制してしっかりキャッシュを確保し、株主に還元もできているのです。
会社設立の歴史、過去の業績を考えればやはり長期投資対象として買うべきエネルギー株はエクソンモービル(XOM)だと思います。
あるいは同じスタンダード石油の系譜を組むシェブロン(CVX)もいいと思います。シェブロンは直近はフリーCFこそマイナスに転落していますが、依然として増配を続けておりこちらもエクソン同様に財務管理に定評のある会社です。
エネルギーセクターは有望と言われており、急反発する可能性のある小型株やシェール業者株を狙いたくなる気持ちはわかります。しかし、長期投資対象を仕込んでおきたいならばエクソンモービルかシェブロンを選んでおくべきだと思います。
もちろんこれは長期投資の話であり、短期的に値上がり益を狙ってWSJ推奨銘柄を仕込むこともありだと思います。ただそれは必ず短期投資と割り切って、満足のいく値上がり益を確保できればすみやか売り抜けるべきです。
こんにちはhiroさん
個人的にはBP,RDS-B,XOM,CVX,TOT(TOTAL)等のセブンシスターズ系だけにしたほうが無難な気はしますね!!
どうもこんにちは。
そうですね、長期保有なら旧セブンシスターズ系の方が安心できそうですね!
石油エネルギーの需要が将来どうなるかわかりませんが、本業のみに集中して不況時にはきちんとコストを絞って配当を出すエネルギー企業には長期投資妙味ありと判断しています。
最近はシェール革命がありますが、イノベーションが少ない点も好感しています。
イノベーションなくして社会の発展はありませんが、イノベーションなきところに長期投資の利益はあると踏んでおります。