株式の経済的意味をBS面から考える

2年くらい前のバロンズで読んだ情報ですが、S&P500指数構成企業の平均自己資本比率は約60%だそうです。逆算で負債の割合は40%です。図にするとこんな感じ。

エクイティ(株式)とは、このバランスシート右下の純資産に対する持分です。純資産に直接的な定義はありません。純資産は資産と負債の差額として定義されます。

純資産とは、資産と負債の差額をいう。

『財務会計の概念フレームワーク』より

つまり、株式(企業の純資産)を持つとは資産を持つと同時に負債を抱えることを意味します。たとえば、あなたがS&P500連動のETFに1000万円投資しているとしましょう。それは資産1,667万円と負債667万円(差額、純資産1000万円)を持っていることと同義です。

たとえ借金せずに手持ち資金の範囲内で株を買っているとしても、経済的実態を見れば間接的に借金を背負うことになります。と同時に保有株式の時価以上の資産を間接的に保有していることになります。だから、どんな優良企業、S&P500指数であっても株価の値動きは荒くなる時があります。ビジネスにレバレッジがかかっているからです。

株式を持つとは企業のビジネスを所有すること、バランスシートのすべてのリスクを背負うことです。資産だけでなく負債のリスクも当然引き受けることになります。

株式の経済的意味をPL面から考える

今はコロナ禍で将来の利益予想をするのは難しいですが、株式の予想益回りとして一旦7%を想定してみましょう。PERで言うと14倍台です。この7%というのは投資額に対する税引後利益の割合です。

S&P500指数に連動するETFに1000万円投資しているとします。7%を掛けると税引後利益は70万円となります。

S&P500構成銘柄の純利益率はどれくらいでしょうか。数年前に、日経でみかけた記事だと平均9%だそうです。まあざっくり10%としましょう。純利益70万円ということは逆算で売上高は700万円となりますね。

1000万円のS&P500ETFを持つということは、年間売上高700万円、利益70万円のビジネスを持っているのと経済的には同義ということです。


超簡単ですがこんなPLイメージです。

売上高が年間700万円とはスモールビジネスとしてはまあまあな規模です。平均的なラーメン屋は1日100杯くらい売れるそうです。一杯700円として1日あたりの売上高は7万円。1カ月で約200万円。年商2400万円ってところでしょうか。業界について詳しくはないですが、まあ大きくは外してないと思います。

700万円とは平均的なラーメン屋さんの3ヵ月半分の売上高に相当します。これだけの年商をただ株を保有するだけで稼げるって凄くないですか。

がんばって投資を続けて、保有ETFの時価が3000万円になったとします。そしたら、年間利益は210万円で売上高は2,100万円になります。

年商2,100万円のビジネスをゼロから興すのか、それともS&P500ETFを3000万円まで積み立てるのか、どっちの方が難しいか。ETFを3000万円も積み立てる方が難しいかもしれませんねw。でも、投資の方が再現性は高いです。真面目に働いて浪費を控えてコツコツ投資を続けるのみです。

コロナショックで株価がだいぶ下がっちゃいましたが、私の保有株式の時価は3000万円に届きそうなところまで来ました。その資産額どうこうよりもPL面を考えると感動が大きいです。自分は年商2000万円、純利益200万円のビジネスを持っている、そう考えると何だか自分がとても強くなったかのような錯覚を覚えます。

いや、それは錯覚ではないかも。勤め人としての労働収入に加えて、年商2000万円のサイドビジネスを持っていれば(しかも完全不労収入)、経済的にはかなりゆとりが生まれます。中の上くらいの贅沢をしてもお金に困ることはありません。

長くマーケットに居続けるコツ

人に安易に投資は勧めません。最近はS&P500指数やNYダウといった比較的安全な指数への投資ですら、自分から話を振ることはなくなりました。

相談を受けたら全力で応えますけどね。先日も45歳前後の上司から「コロナをきっかけに将来のために資産運用を考えてる。Hiroは投資に詳しいって噂やけどどうなん?」とスカイプメッセージが突然来まして、色々と相談に乗っていました。S&P500指数に連動する投資信託を推奨しておきました。もちろん、余裕資金の範囲で。

相談されない限りは株式投資の話はしない。お金の話が汚いとか思ってるわけじゃありません。株式の経済的本質を理解せずに「とにかく長期では株価は上がるんだよな」くらいの発想だと、結局長続きせずに今回の様な暴落時に慌てて売って損失を確定しちゃう可能性が高いと思うからです。せっかくのアドバイスだと思っても、人のためにならない恐れがあります。

BS面でいうと株式を持つとは企業の資産と負債、その差額としての純資産を持つこと。PL面で言うと、企業の売上高、営業利益、純利益といった収入支出が自分に帰属するということ。配当はその純利益の一部が還元されたものです。

そういったエクイティの本質を理解していないと、荒れ狂う株式マーケットを生き延びるのは難しいと思います。たとえ指数への投資であっても、です。

このブログを読んでくださっているあなたには、株式投資の経済的意味は是非とも理解しておいて欲しいところです。この知識は長期投資を継続する上で、リスク許容度の範囲内で投資することと同じくらい大切なことだと思います。