競争力、交渉力のある企業がますます強くなる

ビジネスで有利な条件を引き出せるかどうかは交渉力次第です。

半導体不足が深刻化するなか、今のところアップルのiPadやiPhoneの供給に大きな問題は起きていません。

アップルはチップのほとんどをTSMCから仕入れていますが、TSMCにとってアップルは総売上の25%を占める最大顧客です。スマホやタブレット向けのチップは利益率が高いということもあり、TSMCにとってアップルは超重要な得意先です。

なので、TSMCは生産キャパの中でアップル向けを優先していると言われています。

アップルは米国債の利回りに0.9%ほど上乗せした程度の利率でウン兆円と借金しています。

なぜ、そんな有利な条件を引き出せるのか?

アップルのビジネスがめちゃくちゃ儲かっており、かつ財務基盤に不安もないからです。機関投資家も銀行もアップルにお金を貸したがっています。アップルほど信用力があって米国債+1%の利回りが貰えるなら全然OKと、債券投資家は考えているわけです。

アップルは借金しないと首が回らないわけではありません。資金繰りには余裕があります。「貸したいなら借りてやってもいいよ」、こんな感じで強気にお金を借りています。

逆に、業績不振でお金が回っていない企業が、銀行などからお金を調達しようとすると足元を見られて高い金利を取られます。貸す側としては高いデフォルトリスクを背負うわけだから、高利を請求して当然です。

ファクタリングというサービスがあります。企業の売掛債権を買い取るサービスです。

企業としては数か月待たないと入金されない売掛債権を早期に資金化できるメリットがあります。ただし、手数料と称してかなりの割引率を課せられます。100の売掛金を98でしか買い取ってもらえなかったりします。

たった2%の手数料率と思うかもしれませんが、1か月ないし2か月程度の利息相当と考えればかなり割高です。年換算すると手数料率(=金利)は10%を超えるケースもざらにあります。

ファクタリングを利用せざるを得ない時点で資金繰りに困っている状況と推測できます。ファクタリング業者もそれなりに高い利率を請求しないとビジネスが成り立ちません。

どんな取引をするにせよ、交渉力のある巨大企業は良い条件を引き出せます。力のない企業は不利な条件を突き付けられる。そうやって、企業間の格差は一層広がっていきます。

個人も交渉力がある時に取引をすることが重要

これは何も企業だけの話ではありません。個人も一緒です。企業ほどではないにせよ、個人も借金をしたり、マンションを買ったりと大きなディールを行うことがあります。

その時、良い条件を引き出すためには、相手に足元を見られないよう交渉力を備えておく必要があります。

どうしてもお金が必要という段階になって借金しようとしても遅いです。車を買うとなって、貯金がないからと慌ててディーラーローンなんて組むと、6%前後の高い金利を吹っかけられます。

マンションを買う時に、資金力がないとどうしても都心から離れた資産価値のない物件しか選べないことが多いです。お金持ちは億単位の物件を買って贅沢に思うかもしれませんが、リセールバリューの優劣を考えれば郊外の安価な物件の方が遥かに贅沢だったというケースは多いです。

個人の交渉力とは資産力、資金繰り、仕事、人脈、時間的余裕など複数の要素が絡んでいます。

借金するなら、必ずしもお金が必要ではない時に借金しておいた方がいいと思います。アップルと同じく「貸したいなら借りてやってもいいよ」くらいに気持ちに余裕があると理想です。

まあ、個人が車や住宅など担保物件がないとお金を低利では借りれないことが多いから、これは難しい面もありますけどね。

今の会社が嫌で早く辞めたくして仕方ないという時よりも、現職に満足している時の方が転職活動は順調に進むのではないでしょうか。面接も自信を持って臨むことができ、結果として良い採用条件を提示してもらいやすいと思います。

「晴れの日に傘を貸して雨の日に取り上げる」

金融機関を揶揄する時にしばしばこんな表現が使われます。ドラマ「半沢直樹」も中小企業を経営する半沢の父親がこれをやられて、半沢が積年の恨みを晴らすというストーリーがありました。

確かに酷い話ではあるけど、ビジネスの世界はこれくらい厳しいんだと思っておいた方が丁度いいです。

そもそも傘は借りずに自分で用意しておいた方がいい。仮に借りるにしても雨が降ってからじゃ遅く、晴れている間に事前に借りておくこと。返せって言われたら、「ああどうぞ、自分の傘あるんで」と余裕かませるくらいだと良いですね。

晴れてる間にしっかり準備しておくことが大切かなと思います。