※2019年12月期決算データ反映、コメント刷新
S&P100構成銘柄を中心に米国企業の業績、財政状態、キャッシュフロー、株主還元状況について過去10年分のデータをグラフ化しています。
データソースはMorningstarです。
今回はボーイング(BA)をご紹介します。
基本情報
会社名 | ボーイング |
ティッカー | BA |
創業 | 1916年 |
上場 | 1934年 |
決算 | 12月 |
本社所在地 | イリノイ州 |
従業員数 | 161,000 |
セクター | 資本財 |
S&P格付 | A |
監査法人 | Deloitte |
ダウ30 | 〇 |
S&P100 | 〇 |
S&P500 | 〇 |
ナスダック100 | × |
ラッセル1000 | 〇 |
地域別情報
地域別売上構成比

地域別売上高推移

セグメント情報
セグメント別売上構成比

セグメント売上高推移

セグメント利益推移

セグメント利益率推移

業績


キャッシュフロー

バランスシート
資産

負債純資産

株主還元

※純損失だったFY19は、配当性向、総還元性向ともに便宜上100%としている
連続増配年数
8年
過去10年の配当成長
年率+17.2%
この10年で配当は4.9倍になりました。
過去の株主リターン(年率、配当込み)
過去10年(2010~2019):+22.6%
過去20年(2000~2019):+13.3%
過去30年(1990~2019):+12.1%
バリュエーション指標(2020/2/6時点)
予想PER:19.9倍 最新情報はこちら
配当利回り:2.6% 最新情報はこちら
コメント
ボーイングは欧州エアバス社と世界市場を2分する世界最大の航空機メーカーです。 1997年にマクドネル・ダグラス社を買収し米国唯一の航空機メーカーとなりました。NYダウにも選ばれる米国を代表する企業の一つです。
売上高の45%が米国です。アジア、欧州、中東と顧客はグローバルにまたがりまます。中東地域への売上高も12%と結構なポーションを占めます。トランプ大統領がサウジアラビアとの契約締結を誇示していたことは記憶に新しいです。
事業セグメントは主に以下の3つ。
・民間航空機(BCA)
・防衛、宇宙、セキュリティ(BDS)
・グローバルサービス(BGS)
「民間航空機(BCA)」は民間ジェット機を製造、販売するボーイングの主要ビジネスです。世界的に人気のある大型機747型、中型機の737型、767型、双通路型機の777型などがあります。 最近エアバス社が超大型機のA380の製造を2021年に中止すると発表しました。燃費の悪い特大サイズは航空会社から求められていないようです。
「防衛、宇宙、セキュリティ(BDS)」は戦闘機、無人偵察機、武器システム、ミサイル防衛システム、潜水艦などを取り扱っています。米国防総省が主な顧客でBDS売上高の86%を占めます。米航空宇宙局(NASA)も顧客です。なお、国防総省を通じて他国政府に販売することもあります。
「グローバル・サービス(BGS)」は上記2セグメントのアフターサービスを提供する事業です。 航空機ビジネスは景気に左右されがちですが、部品交換や機体メンテナンスといったアフターサービスは、景気に左右されず継続的にキャッシュをもたらしてくれます。アフターサービス部門の売上高は現在170億ドルほどですが、今後10年以内に500億ドル規模まで拡大させる計画です。
2019年に737MAX機で2件の墜落事故が発生しました。機体制御システムに問題があることが判明し、737MAXは運航停止となりました。2020年2月現在、生産は一時ストップとなっている状態です。デニス・マレンバーグCEOは更迭となりました。

財務データを見てみましょう。
FY19の売上高は765億ドルで前年比▲24%と大幅減収。737MAXの出荷遅延が主な理由です。20%弱あった粗利率は6%にまで下落しており、製造コスト増加が如実に表れています。FY19の純利益は▲6億ドルと通期で赤字転落となりました。営業利益ベースでもマイナスです。
会計上の利益だけでなく、営業キャッシュフローもマイナスになっています。737MAXの納入遅れで売上代金の回収が減っているにもかかわらず、同機体の製造を続けていたためです。これまで約7ヵ月分の在庫を保有していましたが、2019年12月末時点では約1年分の在庫を抱えています。
バランスシートを見てましょう。流動資産の比率が75%と大きいのが目立ちます。製造途中で納入前の航空機が棚卸資産としてバランスシートに計上されています。総資産の半分強が棚卸資産です。FY19に流動資産が増加しているのは、納入が遅れている航空機在庫が増加しているためです。
自己資本が薄くFY19末時点では債務超過になっています。純損失を計上した影響もありますが、過去の積極的な株主還元によるところが大きいです。調達資本のすべてが負債ということになりますが、主な原資は銀行借入金ではなく”Deferred revenues”です。直訳すると「繰延収益」。航空会社等顧客からの前受金です。この多額の前受金があるおかげで有利子負債が少なくて済みます。ただし、737MAX問題による資金不足を補うためにFY20に130億ドルの新規融資のコミットメントを設定しました。今後、有利子負債が増加するでしょう。
配当は増加基調で、自社株買いも積極的に行っています。FY14以降、総還元性向は100%を超えています。FY20は銀行融資により配当は維持してくれそうですが、大きな増配や自社株買いは期待できないと思われます。
BAは年初ではダウの負け犬銘柄だったのに勝ち馬になりましたね 負け犬戦略ってやっぱり効果ありますね 十万円ずつ子犬5匹飼うと宣言しながらまだ買ってません 惰眠を貪ってます。
今年のボーイングの爆騰っぷりには驚きました。
あれだけ規模の大きい有配企業が、まるで無配のグロース株のような株価が上昇でしたね。
それでも今でもなお配当利回り2.4%もありますし。
相場ってこんなもんですか。色々と勉強になりました。
インデックス投資家だった頃は、ここまで真剣に株式も債券もマーケットを見ていませんでした。
米国株投資やってみて本当に良かったと思います。
自分で言うのもなんですが、米国株投資始めてから投資金融の知識が格段に上がった気がします。
2018年のダウの犬はどうなるでしょうかね。
IBMは入りそうですね。最近下落しているメルクも候補ですね。エネルギー企業(XOMとCVX)もまだ高配当ですね。
すごい会社ですよね。
BAは、株価150ドルのときに買いました。
私が持ってる銘柄のなかで一番含み益が乗ってます。
最近バランスシートを見ていて、他の会社にはない特徴を見つけました。
それは、「負債純資産合計1,000億ドルのうち、半分が前受収益」であるという点です。
前受収益は負債ですが、履行することで出ていくものは商品やサービスであって、現金ではありません。
前受収益として入ってくる現金で設備投資をするなどしてビジネスを操業できれば、
株主資本も有利子負債もわずかで足りるので資本効率が劇的に向上します。
なのでBAのROICは非常に高いです。
てるみくらぶのように破綻する例は別ですが、
前受収益は「多ければ多いほどよい負債」と言えるんじゃないでしょうか。
ボーイングの受注は10年以上先まで埋まっているとニュースで読んだ記憶があります。
その受注は財務諸表には載っていません。潜在的な「前受金」はもっとあると見なすこともできそうです。
すでに入金を受けた「前受収益」だけでも、これほど多額にあるのはすごいですよね。
というか、今きしょうさんに言われるまで知りませんでしたが、「前受収益」ってBAの負債純資産の半分もあるんですね!
そんなにあるとは思いませんでした。勉強になります。次回BAの分析記事を更新する時に注目してみたいと思います。
こうなるとビジネスそのものが資金調達みたいなもんですね。運転資金を借りる必要なんてなさそうです。
アップルはCCCを経営指標の一つに採用していますが、それくらい資金繰りを改善させることは利益率改善に寄与します。
固定資産と流動負債はないにこしたことはありません(無形資産は別として)。
>前受収益は「多ければ多いほどよい負債」
そう思います。先んじてお金をもらえるビジネスは魅力的です。
ボーイングの前受けとまではいきませんが、ウォルマートなど小売りも現金決済なので入金は早いです(クレジット決済もありますが)。
売掛金の回収に2ヵ月とか世の中では普通ですからね。
ところでBAに150ドルで投資できたのいいですね。羨ましい。
一つでいいからそんな銘柄持ちたいです。
+50%の銘柄すら一つもありませんよ、私は。
高配当ばっか狙ってるから、当然の帰結ではありますが。