最近NewsPickのファイナンス関連の記事に「ワニの口は優良企業の証だ」という一文がありました。

なんのこっちゃ?って思いますよね。

キャッシュフローの形がワニの口みたいになっている企業が優良企業だとのこと。こんなイメージですね。

年々、営業キャッシュ・インフロー、投資キャッシュ・アウトフローともに増加しています。グラフの棒を歯に見立てて、まるでワニが大きく口を開けているように見えるってわけです。

確かに営業CFが増加していることは良いことです。しかし、投資CFが増えていることは必ずしも良いこととは言えません。投資ってつまりは費用ですから。売上が伸びても利益が出ないと意味ないです。

ワニの口はビジネスが成長し、元気のあるパワフルな企業って意味にはなるでしょうが、投資家目線で優良企業とは言えません。

「誰にとって優良企業なのか」という点は文脈次第です。私達は常に「投資家にとっては」という視点で物事を見る癖を付けた方がいいですね。

投資家にとっての理想は営業キャッシュフローは増加しているけど、投資キャッシュフローは増えていない形です。上顎だけ開いて獲物を捕獲してくれる企業が投資家目線では理想です。

何の口と言えばいいのか、、ペリカンの口?、アヒル口、、いや違うか。まあいいや、そこは。

投資に金をかけずに事業を成長させられる企業なんてあるんでしょうか?

はい、あります。特にテクノロジーセクターに多く見られます。

たとえば、以下は決済大手マスターカードの営業CFとCAPEX(設備投資)の推移です。手元にあるデータの都合、投資CFではなくCAPEXですが、ほぼ同じ意味と解釈ください。

(単位:Million USD、ソース:Mastercard Form 10K)

これですよ、投資家にとって理想的な「口」は。上顎だけ大きく開いてる形。

事業継続、成長に必要な投資キャッシュアウトが少ない企業に目を向けた方がいいと思います。つまり、フリーCF(=営業CFからCAPEXを引いた金額)が増えている、もっと言えば一株当たりフリーCFが増えている銘柄が理想です。

営業CFが成長しても、CAPEX(≒投資CF)まで増えちゃえば、結局株主の手元に残るフリーCFは増えないということになりかねません。

アナログICシェアトップのテキサス・インスツルメンツ(TXN)のIRページ冒頭にはこのような記載があります。

The best measure to judge a company’s performance over time is growth of free cash flow per share, and we believe that’s what drives long-term value for our owners.

Texas instruments IRページより

一株当たりフリーCFを成長させます、と株主に宣言しています。

もちろんTXNはワニの口ではありません。マスターカードと同じような感じです。こういう銘柄が長期投資には向いていると思います。