住宅保有を促進するため、自宅購入には投資目的の不動産購入にはない税制優遇があります。具体的には住宅ローン減税、譲渡所得控除などです。

これらは無視できないインパクトがあります。たとえば、住宅ローン減税は新築でローン残高が4000万円以上あれば、年間で最大40万円(4000万円×1%)の税金が返ってきます。40万円ってでかいですよね。

譲渡所得控除は最大で3000万円までの売却益が非課税になる制度です。ちなみに、売却で損失が発生した場合、その損失は給与所得から控除することができます。保有物件が値上がりしても、値下がりしても税金は優遇されます。

しかしながら、私は自宅購入における最大の税務メリットはこれらの政策ではないと考えています。

私が思う自宅購入の最大の税務メリットは帰属家賃に税金が掛からないことです。

6000万円で買ったマンションを家賃20万円で第3者に貸し出すとします。年間賃料は240万円。その240万円から諸経費(減価償却、固定資産税、修繕費など)を差し引いた金額は不動産所得して課税対象となります。

不動産所得は株式とは違って総合課税なので、サラリーマンであれば給与所得に合算されて課税されます。年収1000万円越のエリートサラリーマンがアパート賃貸で利益を出しちゃうと、かなりの税金が発生します。

ところが、帰属家賃には税金がかかりません。自宅購入とは自分で自分に賃貸するようなものですが、その家賃相当額は所得とはみなされません。

これは言い方を変えると、金額が同じでも収入を上げるよりも支出を削減する方が効果が大きいということです。

1万円を稼ぐよりも、1万円節約する方が家計に与える影響は大きいです。なぜなら、1万円の収入アップは手取りでは8千円とか7千円くらいになっちゃうからです。1万円の節約は1万2~3千円の収入アップと同じ価値があります。

賃貸で家賃20万円を払うためには、20万円稼ぐのでは足りないのです。額面20万円の収入は手取りベースではもっと少ないからです。家賃20万円を払うためには25万円は稼ぐ必要があるでしょうか。税率は所得によって変わるので一概には言えませんが。

帰属家賃20万円(年間240万円)相当の自宅用マンションは、年間収入で約300万円は生み出していると考えることができます。年間家賃240万円を払うには年収300万円は稼ぐ必要がありますから。

都内のマンションの平均利回りは私が見る限り4%前後です。金利が低いとはいえ、4%とは心もとない利回りに見えるかもしれません。コロナ禍でマンション価格はかなり上がりましたね。

しかし、この4%という利回りは税引き後なのです。税引き後というか税金が掛かっていないと言った方が正確か。敢えて税引前の利回りを想定計算すると5%は超えるでしょうか。

ここに先に述べた住宅ローン減税などの優遇制度を加味すれば、値下がりしづらい資産価値のある物件を選ぶことができれば、自宅購入はリスクに見合うリターンが得られる投資だと私は判断しました。今の相場でも。

住宅ローン減税は最大13年で終わります。また、この低金利時代に「ローン残高×1%」の税金還付は優遇し過ぎだとの批判があり、今後還付額が減ってしまう可能性があると言われています。

それに引き換え、帰属家賃に税金がかからないという「優遇」は政策の影響を受けるものではありません。効果は永続します。

住宅ローン減税や譲渡所得控除なんかよりも、帰属家賃が非課税であることの方が遥かに大きな恩恵だと思います。