法人税減がどうなるかはっきり決まるまで、企業は設備投資を控えました。

トランプ大統領が関税をどう決めるのか、自社は適用除外になるのかどうか。これらがはっきり決まらないと企業は設備投資の意思決定なんてできません。米国外で生産して輸出すべきなのか、人件費が高くとも米国内で生産すべきなのか、関税の影響を見極める前に経営者にその判断を求めるのは酷です。

消費税が上がるか上がらないかわからないなら、家や車などの高額商品を買うのは一旦保留にしようかな~とあなたも思いますよね。あ、でも来年10月の消費増税はほぼ確実みたいですね。

最近家の近くにできたハワイアン風レストランに興味があるんですけど、美味しいかどうかわからないから(やや入りづらい雰囲気もあり)、とりあえず先週末はいつもの中華料理屋さんに行きました。ここの肉野菜炒め定食はめっちゃ美味い。880円。

絶対に両想いと確信があるなら積極的にデートに誘えるけど、相手の気持ちがよくわからない時は奥手になってしまいます。草食男子!

こんな感じで、先が見通せずわからない状態では人はなかなか行動ができません。特に株主のお金を預かっている株式会社の経営者は「えいや!」で判断するわけにもいきません。個人なら別に「えいや!」で好きな女の子にアプローチして討ち死にしても自分が困るだけですが、株式会社はそういうわけにはいきません。

「未来がわからない」はみんな嫌がるもんです。

 

投資も一緒です。

将来の業績が不透明不確実であればあるほど、そんな銘柄を買おうと思う投資家は少なくなります。したがって株価は安くなりPERは下がります(益回りは上がる)。これをファイナンスの世界で「割引率が上がる」と言います。将来の収益(配当)を現在価値に割り引く利率が上がるということです。割引率が上がれば株価は下がります。

3兆円以上もの巨額買収を決断したIBMの将来収益に対して、投資家は大きな不安を抱いています。ロメッティCEOが語る未来の青写真を投資家はかなり”割り引いて”受け止めています。8倍台というPERがそれを物語っています。

逆にコカ・コーラの将来収益に対して投資家は楽観的みたいです。あまり不安は感じられません。「コカ・コーラはこれからも売れ続けるだろうな」ってみんな思っているようです。予想PERは21倍もありますから。

IBMとコカ・コーラ、投資家のリスク認識(不安な思い)が高いのは明らかにIBMです。

株式投資のリターンの源泉はリスクです。
高いリスクを取るから高いリターンで報われます。

じゃあコカ・コーラじゃなくてIBMに投資した方が儲かるのか!?

それはわかりません。

リスクが高いということは、株券が紙切れになるとまではいかなくても、価値が半値に落ちる可能性もあるということです。クラウド、ワトソン(AI)、ブロックチェーン等戦略的ビジネスと掲げる領域が成功すれば、IBMの株価は大きく反発して配当も増えるでしょう。一方で、IBMが次のゼネラルエレクトリック(GE)になるリスクもあります。GEは最近、配当を実質無配にすると発表しました。

 

先日アップル株(AAPL)が1日で6%近くも下落しましたが、決算自体はそれほど悪くはなかったです。にもかかわらずこれほど下落したのは、アップルがデバイス別の販売台数の公表をやめると発表した影響が大きかったと思います。

もうこれからは、iPhoneが〇億台、iPadが〇千万台売れたという情報を知ることはできなくなります。

「製品別販売台数を非公表にする→将来の業績低迷を隠したい」とマーケットに解釈され、アップルの株価が下落したという説明をニュース等で目にしました。

ま、株価変動の原因を一つに特定するなんて土台無理な話です。

それは前提にして、、情報非公開がアップル投資家の不安感を高めたから、株価が下落したという解釈もできるかなと私は思いました。

製品別の販売台数がわからないとなれば、これからアップルが成長しても何がドライバーになっているかわかりづらいです。売上高が下落した時はiPhoneが原因なのかどうか確かめることもできません。推測するしかありません。アナリストは巧妙な質問でそれを探ろうとするでしょう。

製品別の情報非公開が将来の業績低迷の前触れとはあまり思えません。そんな幼稚な理由で非公開にするほど、アップルの経営陣はバカじゃないです。きっともっと戦略的な理由があるんだと思います。

ただ理由はどうあれ、開示情報を減らして投資家の不安感を高めてしまえば株価には悪影響を及ぼします。

それを、ファイナンス的に説明すると「投資家のアップル株に対するリスク認識(割引率)が上昇して、アップルの将来利益(配当)の割引現在価値が下落して株価が下がった」てな感じになるでしょうか。

なんか屁理屈みたいに聞こえませんか?w

そうなんです。

ファイナンスって数字で語って立派な学問に見えるかもしれませんが、所詮は後付けなところがあります。結果論です。アップルの株価が実際に下がったからこそ、後付けで「アップルに対する投資家にリスク認識(割引率)は上がったね~」なんてドヤ顔で言えるだけです。

感情で意思決定して理論で正当化する。
投資に限らず人間誰しもそういう面があると思います。

 

というわけで、ファイナンス論とか別に知らなくても投資はやれるし成果も出ますので安心して下さい。投資で重要なのはファイナンス理論よりも、自分の感情を冷静にコントロールすることです。

ただね、ファイナンス的な発想を知っていると、これはこれで面白くもあるんですよ。今回のアップルの製品別販売台数を非公開にするというニュースを聞いた時、「あ、これはファイナンス的には割引率の上昇に繋がって株価悪化要因になるな」って思えます。

別にこう考えれたからって投資リターンが上がるとは思ってません。ただ単に、財務的な視点で物事を考えるのが好きなだけです。オタクでしょ(笑)。