情弱ビジネスという言葉はかなり悪い印象があります。知識のない弱者から金を巻き上げるイメージがありますよね。「情弱」という単語は貶す言葉として使われがちです。「お前は情弱だから・・・」って言われていい気分になる人はいません。情弱なんていう言葉は日常ではあまり使わない方がいいですね。
という前置きはしつつ、敢えて言いますが世の中はすべて情弱ビジネスです。ビジネスとは特定分野の情報強者が、同分野の情報弱者にサービスを提供し、その対価としてお金をもらう行為だと言えます。
たとえば、医者。一般庶民には医学の知識なんてほとんどありません。10年以上座学と実務で医療の経験を積んだ医者にお金を払って医療サービスを受けます。患者は医者に文句を言えないことがほとんどですが、それは医療は情報の非対称性が大きいからです。医療は情強(医者)と情弱(患者)の知識格差が特に激しい領域です。
私は上場企業の経理部です。会計士の資格を持っているし、会計監査と経理の実務経験がそれなりにあります。会計という自分が情強な分野でサービスを提供し給料を頂いています。誰に対するサービスかと言えば株主や経営陣です。会社の計測器たる決算書を株主に提示して投資判断に役立ててもらいます。同じく経営陣に提供して経営判断に役立ててもらいます。株主や経営陣に決算書を作るノウハウはありません。つまり、この分野に情弱ということです。
学習塾では先生が情強で生徒が情弱という立場です。生徒は受験ノウハウを知らないので、(親が)お金を払ってそれを買います。
商品の価値は相対的
人によって情弱な分野、情強な分野は様々です。なので、世の中にある商品やサービスの価値とは常に相対的なものです。
たとえば、資産運用のロボアドバイザー。具体的にはウェルスナビなどがあります。個人のリスク許容度に応じて適切にアセットクラス配分を決定し、資産を運用してくれます。投資対象のETFは低コストで良質な商品が多いです。ただし、手数料率はそこそこ高い。年率で1%ほどだったかな。
このロボアドバイザーに対して「1%の手数料なんて弱者から金を巻き上げるぼったくりだ!」と息巻く人がいます。
それは違うなって思います。批判できるような人は大抵その分野に精通しているものです。でないと公然と批判なんてできないからね。ロボアドバイザーを批判できる人は投資について詳しい人でしょう。投資の知識があって自分でバンガードの低コストETFを選べる人にとって、1%の手数料を払ってロボアドバイザーを利用する価値はないです。それは断言します。私はウェルスナビには申し訳ないですが、自分でロボアドバイザーを利用する気には全くなりません。
でも、金融教育が遅れている日本において投資リテラシーがある人は稀です。このブログを読んでくださっているあなたは投資という分野で情報強者のはず。上位5%でしょう。だから、多分ロボアドバイザーは不要です。でも、投資を知らない世間の95%の人にとってロボアドバイザーは価値あるサービスです。
この前『「%」がわからない大学生』という書籍を書店で見かけました。読んでませんが、タイトルが真実だとしたら、それはにわかには信じ難いことです。こういう学生が消費者金融で簡単にお金を借りてしまうのでしょう。配当利回りやPERくらい考えれば誰でも計算できると思うかもしれませんが、意外とそうでもないのかも。数字が苦手な人は考えること自体から逃げますし。
何も考えずにただ預けているだけで優良ETFに投資してくれるロボアドバイザーは、一般的には素晴らしいサービスだと思います。投資が根付かない日本にこそ必要な事業ではないでしょうか。
自分が情弱な分野は金で時間を買う発想も必要
お金を使うとは時間を買うことです。1日の時間は24時間です。どんな速読家でも世の中のすべての分野に精通することは不可能です。
アマゾンで「すべてのカテゴリー」を見てみてください。自分が知らないジャンルが山ほどあります。洋書、コミック、オーディオブック、キッチン用品、ヘアスタイル、スキンケア、パソコン・タブレット、研究開発用品、自転車、ゴルフ、キッズ&ベビー、ショールーム、電動工具、カーテン、手芸、マタニティ、メイクアップ・・・。
自分が精通していない分野について情報や支援が必要な時は、素直にお金を払った方が効率的です。自分が情弱だと思うことは金で解決すればいい。そうやってお金を介した助け合いで社会は成り立っています。何でも自分で解決しようとすると時間ばかり過ぎていきます。
料理が苦手なので、食事は毎日外食か総菜を買って家で食べてます。アイロンをやってみると思いのほか大変だったので、ワイシャツはすべてクリーニングに出しています。
先日、ブログのテーマを変更しました。めちゃくちゃ大変だったし、緊張しました。バグったらどうしようと不安で事前に半日以上かけてググって勉強しました。あと、常時SSL化という暗号化作業も丸一日くらいかかりました。
テーマ変更も常時SSL化も、周りに信頼できる人がいればお金を払ってやってもらいたかったです。いくらくらいが妥当かな。う~ん、3万円から5万円くらいなら払っても良かったかな。
ブログのテーマ変更くらいで3万円なんてぼったくりと思う人もいるかもしれません。しかし、ワードプレスに情弱な私にとって安全無事にテーマを変更してくれる仕事には3万円の価値を感じます。自分でググって調べる時間、失敗したらどうしようと不安になる気持ち。これらを取り除けるなら3万円くらい安いです。残念ながらそんなサービスはなかったので、何とか自分で対応しましたが。
私はIT系で困ったことがあれば、なるべくお金で解決したいです。そこを鍛えようとは思わない。時間は有限だし、ITやシステム、プログラミングでは一流どころか二流にもなれる気はしない。そういう情弱な分野については、情強な人や企業にお金を払って助けてもらいたいです。自分が学習する時間をお金で買う発想です。
学ぶことをサボると金を取らてばかりの人生になる
とは言え、何でもかんでも即思考停止になっていると厳しい社会に金をもぎ取られます。ググれば解決することも多いです。六法全書を読まなくても、ちょっとした法律ならネットで出てきます。会計知識もそうです。ブログのシステムトラブルもググれば解決することも結構あります。
情強な人に金を払って解決を依頼する場合でも、最低限の事前勉強はやった方がいいです。情報の非対称性があまりに大きいままだと、相手の言われるがままに交渉が進みます。最低限は自分で学ぶ。その上で委託した方が効率的だと思えばお金で解決する。これくらいが丁度いいかな。
知識経済では情弱から情強にお金が流れていきます。そういうもんです。詐欺や騙しでお金をむしり取るのはダメだけど、このお金の流れ自体は不当でも何でもないです。勉強どうこうというか、自分で脳ミソで考えることが大切です。思考停止が一番危険。
hiroさん
お世話になっております。
個人的にツボの記事、ありがとうございます(笑)。
仰る通りですね。
・自分でやろうと思えばできる(できそうだ)けど代わりに手付かずになる案件は?
・自分の能力(+費やせる時間)で納期は守れるか?
と
・外注するとき、その対価は妥当なのか?
は仕事でよく悩みます…。難易度感が掴めていないと“言い値で受け入れる”しかないので。
“ソリューション事業”を売る会社が増えていますが…。
日本が“世代間の断絶を作ってしまったツケの清算を否応なくやらさられている”
と思う日々です。
hashiさん、こんばんは。
リソースの配分をどうするのがもっとも経済的か悩むところです。
難易度が把握できずに言い値で受け入れるのもあるし、所詮会社の金だから自分事として真剣に考えないという背景もある気がします。
自分の会社の投資判断とか見て驚きます。
事業部がBCGやマッキンゼーなどのアドバイスを素直に受け入れて、数百億円規模の投資を提案したりしますから。
客観的に稟議決裁を見ていて大丈夫か?コンサルにぼられてないか?って思っちゃいます。
情強になるためにきちんと勉強調査すること、自分事として真剣にお金の使い方を考えることが大切ですね。
hiroさん、ご無沙汰しております。現役銀行員で株投資は20年超ですが、米国株はやっと3年生のガンバレです。
「学ぶことをサボれば金をとられる」私の職場に居る、というより最近大幅に増殖している、投資アドバイザーだの、FPだのの肩書を持ち、投資信託や外貨建保険を売ってる銀行員がまさにそうです。仕事では「金を取る側」ですが、個人では「取られる側です」。hiroさんが東大生なら、銀行員FPなんて、小学生いや幼稚園以下です。
顧客には散々、投資商品を売りつけるくせに、先ず自腹では投資経験ないです。せいぜい、自社株持株会(私から見ると最悪の投資)と、自社の投資信託(クソ高い購入手数料と高い信託報酬を払い、しかも債券なんて買ってる)位です。
しかも高いローンを組んで注文住宅(割高すぎる)の家を建て、ローンで高い車にのり、会社の持つゴルフ場で週末は同僚とゴルフをして、タバコを吸う・・・投資能力なしです。
片や私ガンバレめは、国内ではファーストリテイリング、JT(今年、利回り6%で買いました)など、米国では楽天VTI(個別米国株をいくつか買いましたが、討ち死にして売りました)などの投資を続け、家はキャッシュで買った駅徒歩3分の中古マンションで、同僚とゴルフはおろか、飲み会も全てスルーし、タバコ株で貰った配当やジャム(優待)を貰ってます。
私はまもなく定年。銀行員としては出世もせず、今や職位定年とやらでヒラですが、同期の出世頭より投資資産を持っているはずです。
やはり大切なのは、先ず自腹で自分の判断で投資することと、勉強ですね。シーゲル教授の本も読みましたし、金持ち父さんだの、バビロンの大富豪(最近読み、感動しました)だのを、コンビニでコーヒさえ買わない私ですが、書籍代は惜しまず使っていますから。
今後も、ブログを楽しく拝見させていただきます・・・でも個別米国株は難しいですねえ。どんなに、あがいてもVTI相手に討ち死にしてます
ガンバレ
ご無沙汰しております。
銀行員の高めの給料は、高い車やゴルフをしてストレス発散するための労働力再生生産コストが含まれているからだと思います。
ノルマの厳しい保険業界などはその傾向がさらに顕著だと感じます。
そういう場に身を置いて、周りに流されずに倹約して生活費を抑制できればお金は余りますね。
そうやってお金を余らせて地道に資本を築いていくのが、サラリーマンが豊かなる王道だと思います。
ほとんどの人が気が付かないですけどね。
でも気が付かずに社会にブンブン金を回してくれる人がいるから、資本家が儲かるというのもあります。
消費に駆られる生活も楽しいのかもしれませんが、一度資本家の世界を知ってしまうとこちら側の方が圧倒的に幸せだなと感じます。
「バビロンの大富豪」は面白いですよね!
私も読みました。