前回に引き続き、、突然ですが会計クイズ!!
難し過ぎず簡単過ぎず、ちょうといい難易度だと思います。きっと。
( )内に当てはまる言葉ないし数字はなんでしょうか?
問題
Q1
利益とは( )から( )を差し引いたものである。
Q2
損益計算書上では利益が出ているのに企業が倒産してしまうことを黒字倒産という。PL上での利益があっても( )がなければ、会社は倒産することになる。
Q3
配当金の支払額を純利益で割ったものを( )といい、企業の株主還元目標としてよく使われる指標である。
Q4
EPS(一株当り純利益)が30円の企業の株価が600円の場合、PER(株価収益率)は( )倍である。
Q5
建物や機械装置などを購入した場合に、単年度ではすべての費用を計上せずに、将来の収益に対応させて費用を配分する処理のことを( )という。
Q6
M&Aにおいて、買収金額と被買収企業の純資産との差額を( )という。特にソフトバンクは多額のこれを計上している。
Q7
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの和を( )という。
解答と解説
Q1
利益とは(収益)から(費用orコスト)を差し引いたものである。
どうでした?単純なようで意外に難しいかも?
収益ではなく売上高と答えたかもしれません。それは完全に×ではないですが△ですかね。企業の収入は売上高が大半を占めるのは間違いないですが、それ以外にも収入を得ることはあり得ます。たとえば、株を持っていれば配当収入があります。保険金収入や為替差益があるかもしれません。それらを全部ひっくるめて収益となります。
Q2
損益計算書上では利益が出ているのに企業が倒産してしまうことを黒字倒産という。PL上での利益はあっても(資金 or キャッシュ or お金)がなければ、会社は倒産することになる。
企業が倒産するのは大赤字を出した時ではありません。シャープも東芝を大赤字を出しましたが倒産してません。会計上の利益がマイナスでも資金繰りさえ回っていれば企業は存続します。銀行が手を差し伸べてくれる限りは生き続けます。
逆に利益が出ていても資金が回らなくなれば倒産します。記憶に新しいのが「てるみくらぶ」の破産問題です。格安旅行会社の「てるみくらぶ」が倒産して、同社に旅行代金を前払いしていた数多くの個人が被害にあっています。中には100万円近い旅行代金を納付していた人もいたようです。「てるみくらぶ」の取引先は個人ではなく企業もありました。「てるみくらぶ」に対する売掛金を回収できずにっちもさっちも行かなくなって倒産した会社もありました。典型的な黒字倒産です。
投資家としてもPLだけじゃなくってキャッシュフローを見ることは重要です。言い方は悪いですが、会計上の数字はいじれます。でもキャッシュフローは実際の現金の動きなので偽りようがありません。よほどのスタートアップ企業でない限り、営業CFがマイナスだったら警戒すべきです。
Q3
配当金の支払額を純利益で割ったものを(配当性向)といい、企業の株主還元目標としてよく使われる指標である。
よく聞く言葉ではないでしょうか。日本企業は配当性向30%を目標としている会社が多い印象です。税引き後利益100のうち30は株主に返しますよってことです。これは多いでしょうか、少ないでしょうか。。わかりません。ケースバイケースです。ただどんな状況にある企業も一律横並びに配当性向30%とするのには違和感があります。
事業に回すべきと判断したお金は再投資に使えばいいし、将来のリターンに繋がる資金使途がないなら一度株主に利益を返還すべきです。村上ファンドを運営していた村上世彰氏は「株主と企業との資金のキャッチボール」が重要だと著書『生涯投資家』で語っていました。その通りだと思います。
配当性向30%にすることで健全な「株主と企業との資金のキャッチボール」ができるのでしょうか?
ちなみに米国企業はいろいろですね。たとえばコカ・コーラ(KO)の配当性向は70%を超えています。もし配当性向30%ルールをKOに適用してしまえばたちまち減配になってしまいます。KOの場合、そんなに利益を事業に再投資しなくても安定して利益を上げることができます。なので配当性向が高くてもそれほど問題ではありません。
Q4
EPS(一株当り純利益)が30円の企業の株価が600円の場合、PER(株価収益率)は(20)倍である。
利益の何倍で株価が取引されているかを示しているのがPERです。PERが高いということは、今の利益に対して株価が高いということです。PERは株のバリュエーションを判断する上でもっとも基本となる指標なので、ぜひ意味を理解しておきましょう。
PERが高い=割高、PERが低い=割安、と一般的には言われがちですがそんなことはありません。PERが高いということは将来の成長期待が高いことを意味しているだけで、それが割高とは言えません。将来の成長が期待できない企業なのにPERが高ければ割高と言えますが、PERが高いからと言って即割高と判断するのは早計です。
現在、日本株(TOPIX)の予想PERはだいたい15倍ほどで、米国株のそれは17倍ほどです。じゃあ米国株の方が割高なのでしょうか?
そうとは一概には言えません。
ここ数年苦戦しているIBMの(調整後EPSに基づく)PERは11倍です。市場平均をかなり下回るPERです。じゃあ、IBMは割安なのでしょうか?
それは分かりません(個人的にはちょっと割安じゃないかと見ていますが)。
Q5
建物や機械装置などを購入した場合に、単年度ではすべての費用を計上せずに、将来の収益に対応させて費用を配分する処理のことを(減価償却)という。
会計用語ですが、ニュースとか見ていると結構頻繁に出てくる用語でもありますし、できれば覚えておけるといいですね。
工場を建設するためゼネコンに100億円払ったとします。キャッシュアウトは確かに今100億円発生しています。しかし、その100億円をすぐに会計上の費用とはしません。30年~掛けてゆっくり費用化されています。会計とキャッシュフローは長期で見れば一致しますが、短中期ではズレます。会計とキャッシュのズレの典型的なパターンが減価償却です。
減価償却は現金流出を伴わない費用ですが、企業にとってコストであることは間違いありません。減価償却は無視してよい費用ではありません。ただ単にキャッシュアウトが昔に完了しているだけのことです。
バフェットは株主宛のお手紙の中でこんなことを言っています。
Trumpeting EBITDA (earnings before interest, taxes, depreciation and amortization) is a particularly pernicious practice. Doing so implies that depreciation is not truly an expense, given that it is a “non-cash” charge. That’s nonsense. In truth, depreciation is a particularly unattractive expense because the cash outlay it represents is paid up front, before the asset acquired has delivered any benefits to the business.
↓
ざっくりHiro意訳
↓
EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)をやたら強調する輩がいるが、それはあまり好ましいことではない。減価償却が”非現金費用”であって真の費用ではないかのような言い分だが、それはナンセンスだ。減価償却費は資産を獲得する前に前払いされているだけであって、決して”非現金費用”なんかではない。むしろ、キャッシュアウトが先に起こるので悪い費用とさえ言いたいくらいだ。
バフェットのお手紙をHiro意訳
減価償却も立派な費用です。
Q6
M&Aにおいて、買収金額と被買収企業の純資産との差額を(のれん)という。特にソフトバンクは多額のこれを計上している。
M&Aを繰り返している製薬企業などはやたら「のれん」が多い傾向にあります。バランスシートの総資産の半分が「のれん」というケースもあります。
Q7
営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの和を(フリー・キャッシュフロー)という。
本業で稼いだキャッシュから設備投資額を差し引いた金額をフリーキャッシュフローと言います。本問にあるように投資キャッシュフロー全額を控除することもあれば、設備投資額だけを差し引くこともあります。
フリー・キャッシュフローとは株主(+債権者)が自由に使えるお金です。このフリー・キャッシュフローを原資に、配当や自社株買、借金の返済や利息の支払いを行うことが基本です。潤沢なフリー・キャッシュフローを稼げているか否かは、長期投資に適した企業か判定する上でのポイントの一つです。
フリーキャッシュフローが潤沢な企業としてぱっと思い付くのはフィリップモリスなどのタバコ会社です。大して設備投資は不要で、淡々と既存ブランドのたばこを作り続けるだけなのでフリーCFは多いです。
(フィリップモリスのキャッシュフロー)
ヒロさん
お久しぶりです。第一問ですが、微妙な言葉使いの違いが難しいですね。
利益=収益ー費用
ですが
個人事業主の納税では
所得=収入ー経費 になります。サラリーマンだと所得と収入の違いを感じることがないため、
混同されていますが、個人事業主で年収を書く欄があると、どっちを書いていいか迷うこと多々あります。
とくに区役所はひどいです。
子供の保育園の書類で、所得、年収、収入 どれでもなく 給与と書いてあり、給与所得は0なので0と書いたら、父親が0では子供は預けられませんと言われる始末です。事業所得はあると説明すると、それでは年収をかけと言われ、それは所得ですか収入ですか?と聞いたら、ここは税務署じゃないんだから、そんなこと聞くな、とキレられました。
vaporeさん、お久しぶりですね!
この問題は少し定義が曖昧かな~と思いつつ投稿しました。
利益といっても、粗利益なのか営業利益なのか純利益なのかと色々ありますから。
一般的に利益と言えば収益から費用を差し引いたものという意味で出題しました。
おっしゃる通り、給与と所得は大違いです。
企業で言うところの売上高と利益くらい違います。
「年商1億円の男!」なんて言ったところで凄いかどうかは分かりません。
年商(=売上高)が1億円でも利益はマイナスかもしれません。
年収という表現は確かに給与収入というイメージが強いですね。
サラリーマンやっていると、会社が年末調整やってくれて確定申告しないので所得という概念を忘れがちです。
サラリーマンは取られ放題です。源泉徴収はよくできた制度だとしみじみ感じます。
やはり副業と投資を頑張るしかありません。
会計クイズ当たってました、やったー!
会社で通わしてもらっていたときより
株を見始めてからのほうが真面目に勉強するようになりました。(^-^;
そういえば、簿記2級って昔と内容が変わったみたいですね連結決算が入るとか。
鳥さん、おめでとうございます!
株式投資を始めて投資家目線で会社を見るようになったな~と思います。
自分が勤めている会社はホワイトな環境で働きやすいですが、投資家目線で見ると配当利回りが低くあまり魅了を感じません。
株式投資を始めると会計の勉強にもなりますよね、
会計リテラシーって、細かい簿記も大切ですがもっと大局的に財務諸表を見れることの方が大切だし使える知識だと思います。
なので、米国株銘柄分析記事などを通じて財務諸表についてもたくさん触れるコンテンツにしていきたいです。
「このブログ読んでいるうちに自然と会計的な見方が身についてきた。」と言ってもらえるのが理想です。
>簿記2級って昔と内容が変わったみたいですね連結決算が入るとか。
そうなんですか、知りませんでした。ハードル上がりますね。。
Hiroさん、おはようございます。
クイズ、一通り正解できて嬉しいです。笑
先日フィリップモリスの銘柄分析をしていたので、見覚えのあるキャッシュフローが出てきたのがこの記事のハイライトです。
「このブログ読んでいるうちに自然と会計的な見方が身についてきた。」もそうですし、ちょっと次元が低く恐縮ですが、私としては「このブログを通じて会計にもっと興味を持つようになってきた」とも感じています。
過去に学校で習ったレベルの知識はあるものの実践するに至りませんでした。しかしながら、Hiroさんのブログを通じてもう1ステップ進めだような気がしています。
やはり今でも10-kとか見るのは気合が必要ですが、以前と比べるとIRサイトは楽しく見れています。
こばいんさん、こんばんは。
全問正解おめでとうございます!
ちょうどPMの分析記事をアップされていてタイムリーでしたね。
もともと会計士として日本企業の財務諸表しか見てなかったですが、米国株投資を通じて米国企業の財務データも見るようになって驚くばかりです。
PMほど売上高に比して営業CFが多い企業は日本では見たことありません。またBSが債務超過というのも驚愕でした。
そもそも日本では債務超過は原則として上場廃止ですし。。
このブログで会計に興味を持って頂けるとは大変嬉しいです~。
過去に会計勉強していても、仕事で使わないと忘れちゃいますよね。
会計に限らずですが、大学とかで学んだことって仕事で使わないと数年で忘却の彼方です。
私は経済学部出身ですが、マクロ経済理論やミクロ経済理論なんてほとんど覚えていません。需要曲線と供給曲線くらいですw。
会計は一度分かると楽しくなるから、ぜひもっと多くの方に会計に興味持って頂けるようこういう記事も定期的にアップしていければと思います。
10-kレポート読むのは苦労しますよね。私はグーグルの翻訳機能に助けられながらギリギリ読めている状況です。
こんにちは 米国株の情報を探していてたどり着きました。
記事が興味深く、本日休日ですが気が付けば3時間ずっと過去ログを読んでおりました。
考え方に親和性を感じましたし、多くの知識と視点を得られたと思っており、よかったです。
一応経理マンなので会計クイズは全問正解できました。
会計知識があると決算書見るのがちょっと楽しいですね。
私は36歳で、スーパーの野菜売り場でもやしを並べるような仕事だったのですが
4年前から社内で経理部に配属になり、それをきっかけに会計の勉強を続けています。
親会社との連結会計や監査対応もあるので、今は日商簿記1級の勉強をしています。
(一般的には労力のコスパが悪いと思われるでしょうが・・)
会計観点からの記事は非常に興味深く、勉強させていただきました。
また株式投資は始めたばかりなので、こちらも勉強したいと思っています。
応援したいと思っていますので 頑張ってください!
こんにちは。
3時間もじっくり読んでくださりありがとうございます!
今でも下手な文章だと思っていますが、ブログを始めた頃の文章はさらに酷いものです。自分の昔の記事を読むと目を覆いたくなる気分になります。
ですが、当時の自分としては一生懸命書いたつもりなので、過去ログ読んで頂けるのは大変光栄です。
会計クイズ全問正解おめでとうございます。そこまで簡単な問題でもないので、簿記1級の勉強をされている成果だと思います。
先日読者さんが教えて下さったのですが、最近は簿記2級から連結会計が出題されるそうですね。1級はさぞ難しいかと思いますが、頑張って下さい!
簿記の勉強がコスパが悪いなんて全く思いません。効率よく会計の勉強するには検定試験を利用するのが一番ですよね。
他分野から経理に異動になると最初は苦しいことも多いですよね。
私の会社も営業や物流から経理に来た人が数名が過去にいましたが、仕事が嫌で辞めちゃった人もいました。
新入社員で経理に配属されて心の中で嫌だな~と思っている人も多いです。表面上は楽しく仕事しているように見えますが、さしで飲みに連れて行くと本音がたくさん出てきます。
でも会計は勉強して理解できると楽しいし、今後別に事業部に行っても役立つこと間違いなしです。
オンラインでもオフラインでも、会計財務の楽しさを伝えていければ嬉しいです。
会計でも投資でも何か分からないことあれば、何でも聞いて下さい。
メールベースではよく読者さんと会計談義やってますので。
応援ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。