株式相場の歴史を振り返ると、10年~15年の単位で強気相場とレンジ相場を繰り返して来たことがわかります。レンジ相場には弱気相場も含みます。このサイクルは今後も変わらないでしょう。投資家が、時に株式のリターンに高揚し、時にそのリスクにビビる感情ある人間である以上、相場の浮き沈みは時代普遍的だと思います。AIがマーケットを支配するとて、最終的な投資意思決定者は人間です。

2019年現在、米国株はレンジ相場の中にあるのでしょうか?それとも強気相場の中にあるのでしょうか?

いま自分がどこにいるのか客観的に把握したい。そのためには、先ず過去の相場を振り返るのが有効ですね。1932年~現在までを強気相場とレンジ相場に区分すると以下のようになります。

()内は名目トータルリターン年率
1932年~1937年:強気相場 (21.8%)
1937年~1950年:レンジ相場(6.9%)
1950年~1966年:強気相場 (13.7%)
1966年~1982年:レンジ相場(7.7%)
1982年~2000年:強気相場 (17.4%)
2000年~現在:???(4.8%)

(データソース:『バリュー株トレーディング』)

2000年にS&P500に投資して2018年末まで保有したとすると、トータルリターンは年率4.8%です。これまでのレンジ相場にも及ぼないしょぼい成績です。そりゃまあ、ITバブル崩壊、サブプライムローン金融危機という2度の相場クラッシュがあったわけだから、それも仕方なしか。

1982年~2000年は大強気相場でした。S&P500指数のリターンは驚異の年率17%。誰でもバフェットになれる感じ。あれよあれよと資産額が膨らんでいく幸せな期間でした。21世紀2度の暴落はその反動と解釈できるかもしれませんね。

さて、改めて現在はレンジ相場か強気相場か。
どっちなんだろうか。

こういうのは期間をどう定義するかで変わる面もあります。さきほど2000年~2018年のS&P500指数のリターンは+4.8%と言いましたが、リーマンショック後の2009年~2018年の10年を取ると年率+13.0%で過去の強気相場並みです。それでも、20世紀最後の20年間には及ばないですけどね。

2000年~2008年はレンジ相場(てか弱気相場)、2009年から強気相場に突入して今もそれが続いているという解釈もできるか。それとも2000年から始まったレンジ相場はまだ続いているのでしょうか。

or

どっちの解釈の方が正しいんだろうか。答えはわからない。30年後に今を振り返ったら「あの時はすでに強気相場入りしてたね~」とか「2000年代最初の20年はレンジ相場で長い暗黒期間だったな」とか言えます。時間が経てば嫌でもわかるんだけど、今知りたいじゃん。将来のことは分からないけど、過去のデータとか参考にしつつ、今自分がどの辺に立っているのか可能な限り客観的に把握したい。

今はレンジ相場の中(私見)

2019年現在はまだ長いレンジ相場の中。強気相場が訪れるまで、もうしばらく辛抱する時間が続く。僕はそう思います。確信はないですが・・。

そう思う理由はPERです。2000年以降、PERが高止まりしているからです。以下はS&P500指数のPER推移です。

(ソース:multpl.com

1982年から始まった強気相場が終わった時、S&P500のPERは35倍近くありました。21世紀に入って株価が下落してPERは平均回帰の動きを見せているものの、未だに過去平均の15倍より高い水準です。現在のS&P500の(実績)PERは20倍台です。

『バリュー株トレーディング』によると、レンジ相場(含弱気相場)が終わり強気相場が始まる時のPERは10倍前後です。そこまでマーケットが悲観と絶望の淵に追いやられて、ようやく朝日が昇ってきました。明けない夜はないとは言え、ここまでPERが下がるまで耐えるのはしんどいものです。

今からPER30倍台まで株が買われる強気相場が訪れる可能性もゼロではありませんが、あまり現実的でないように思います。ネットで悲観的なニュースが毎日渦巻いていますし、そこまでマーケットが楽観に転換するとは思えないです。

もうしばらくレンジ相場が続くかな、というのが私の意見です。目前の大きなキャピタルゲインは期待してません。あ、だからって暴落が起こると言いたいわけではありません。企業のEPSが徐々に成長していく中で、株価は概ね横ばいで推移、ないしEPS成長率以下の緩やかな上昇を続け、結果としてPERは下がっていくのかなという気がします。気がするだけ、直感なだけで理論的根拠はありません。『バリュー株トレーディング』を読んで、過去のマーケットデータを知って、そう思っただけです。

現代は低金利だから過去と同列に語ることはできない。低金利は今の高いPERを正当化する。以前はこう思っていました。しかし、やっぱその考えは甘いなと思い直しました。低金利だからって高PERは正当化されないと思います。というのも、今の低金利はFRBやECB、日銀が強引に作りだした虚構だからです。いや実際に低い利回りになっているから別に虚構ってわけじゃないけど、なんちゅうか、無理矢理な感じ。関節があり得ない方向に曲がってる感じ。

今はまだトンネルの中にいる、というのが僕の素人意見です。端的に言うと、1982年~2000年までの相場が好調過ぎました。その反動期間がまだ継続していると思います。

過去と異なる点は現在のインフレ率が2%と低いことです。『バリュー株トレーディング』によると、レンジ相場の平均インフレ率は5.5%もあったそうな。

まあ、保守的に構えておくに越したことはないってことで、今はレンジ相場の最中にあると認識しておこうと思います。冷静にバリュエーションを見るに、そんなガンガン株価が上がると期待できる環境じゃない。米国企業のEPSがめっちゃ成長したら話は別だけど、それは難しそうだし。

株価上昇率がEPS成長率を下回る期間が続いて、徐々にPERは過去平均の15倍、ないしそれ未満に落ち着いてくるんじゃないかな。もちろん、21世紀3度目の相場クラッシュで一気に調整が進む可能性もゼロじゃないとは思いますが。

『バリュー株トレーディング』によると、レンジ相場では配当がリターンを下支えしてくれるとのこと。

第3章で見たように、配当はレンジ相場の総リターンの90%を占めるため(強気相場ではわずか19%)、レンジ相場における配当の重要性は強気相場の4倍に達する。

ジェレミー・シーゲル氏はその著『株式投資の未来』のなかで、「配当は弱気相場のプロテクターである」として・・・(以下略)

『バリュー株トレーディング』より抜粋

配当なんて日々の株価変動に埋もれるちっぽけな小金にしか見えないかもしれませんが、現在のようなレンジ相場(Hiro推測)では大切にしたいですね。こういうレンジ相場(Hiro推測)でコツコツ配当を再投資して株数を増やしておくことが、いつか来たる強気相場(今がすでに強気相場の最中の可能性もあるが)でアクセルとなるのですから。

ただね~、米株はそんなに割安な株価には見えないから、積極的に配当再投資する元気も出ないのが本音かな。ま、個人投資家らしく気張らず緩くやっていきます。配当再投資せずに配当でレッツノート(←めっちゃ欲しいけど高い)買うのもありやろ。たまには贅沢もしたいし。ま、配当が入金されるドル口座をわざわざ円転することはないけども(笑)。

なんか今はレンジ相場と思った方が気が楽じゃないですか?

強気相場だと「乗り遅れたらやばい!」って焦りそうだけど、レンジ相場は「レンジ」なんだから、まったり給料&配当をコツコツ入金しとけばええやろ~と思えます。マーケットはコントロールできるもんじゃないし、のんびり行きましょうや。

(最近、偶然発見した投資本。一読の価値あり。)

バリュー株トレーディング