子どもへの相続を前提にすれば長期投資の期間は30年と言わず、50年70年と可能です。そこまで長く保有できれば投資タイミングの悪さはほとんど関係なくなり、銘柄選別がリターンの9割以上を左右するでしょうね。優良株投資の真の実力が発揮されるのは、それくらいの超長期です。30年程度を念頭に置くなら、銘柄選別はもちろんですが、投資タイミングもそれなりに見極める必要があります。

株式は相続可能です。子どもに譲渡できます。流動性の高い上場株であれば、時価で第三者に売却して現金化することも容易です。んなの当たり前だろって思うかもしれません。しかし、あらゆる資本の中でこれほど譲渡、換金が容易なのは株式(というか金融商品)だけです。

資本主義社会では資本を持つ者が有利に人生というゲームをサバイブできます。人生の充実度とは詰まるところ、自分にとって価値ある時間を過ごせるかどうかで決まります。つまり、自分の時間を確保しなくてはなりません。しかし、お金がないと生活できないから、自分の時間を労働に捧げてお金を稼ぐ必要があります。ここで、不労収入を生み出す資本があれば自分の時間、労働力を売る必要がなくなります。生活費を超える資本所得を持てば「貴族」になれます。

資本の王様が株式です。世界の大金持ちは例外なく株式を保有しています。アマゾン株で10兆円以上の財産を持つジェフ・ベゾス、バークシャー株で9兆円の資産を持つウォーレン・バフェット、アルファベット株で5兆円の資産を持つラリー・ペイジ。私たちのように公開市場ですでに完成された企業の株ではなく、自分で創業した企業の株を持っているという点は大きく違いますが、株式が富の源泉であることは確かな事実です。

株式以外にも不労収入をもたらすものはあります。特に21世紀になってからサーバーにWeb資産を構築して、資本を作ることが可能になりました。アフィリエイトサイトや、ブログ、YouTubeチャンネルなどです。私もこのブログで広告収入とほんの僅かですが書籍等のアフィリエイト収入を得ています。頻繁に記事を書いているので「不労」収入という感覚は薄いですが、過去記事のPVが生み出す収入は確かに資本収入的な性質があるなと感じています。

しかし、こういったWeb資産は譲渡が非常に難しいという特徴があります。金融商品の価値とはそれが将来に生み出すキャッシュフローの割引現在価値の合計です。将来アフィリエイト収入や広告収入を生み出すWebサイトやYouTubeチャンネルも、金融商品的な価値が当然あります。時価は理論的に算出可能です。

たとえば、月10万円のアフィリエイト収入を稼ぐ転職サイトがあるとしたら、割引率次第ですが1000万円程度の時価が付いても不思議ではありません。月10万円、年120万円の収入を生み出すサイトが1000万円で買えるとしたら、あなたなら買いますか? ぱっと見ではそれほど悪い条件ではないですよね。単純に利回りを見れば年利12%ですから。

しかし、現実的に考えて転職サイトを譲渡するのは難しいです。株式みたい公開市場は当然ありません。転職サイトを購入しても、メンテナンスの手間がかかるし、更新のノウハウもありません。完全放置で年120万円確実に稼いでくれるなら1000万円払ってもいいと思えますけど、そういうわけにはいかないですよね。

最近、YouTubeチャンネルが売買されているというニュースを読みました。中には3000万円という値が付くケースもあるそうです。素朴な疑問なんですが、他人のチャンネルを買ってどうやって動画アップを続けるんでしょうかね。記事によれば完全外注にするそうですが、そんなことしたらチャンネルの収益性は著しく下がるでしょう。自分の労働力を投入してコンテンツを作るから、粗利が高くなるわけで。

この”Grow Rich Slowly”というブログなんて譲渡価値はほぼゼロでしょう。記事を更新できるのは私だけです。同じくらい(という私以上の)会計知識、投資知識を持っている人は世の中に大勢いますが、私なりの視点、発想を真似するのは不可能です。オリジナルなコンテンツ作成を意識しています。文章の癖とかもありますし。

キャッシュを生み出すものは須らく金融商品としての価値を持ちますが、譲渡できるものは株式など流動性の高い一部の金融商品に限定されます。他者に売却して現金化できるのは当然のことと思いがちですが、これは株式の優位な点の一つに挙げられます。

株を保有したままで売らずに人生の最期を迎えるなんてもったいないという意見を耳にすることがあります。確かに、今まで頑張って資産形成してきたのに、それを結局使わないのでは何のために投資してきたかわからんという思いは理解できます。しかし、資本を蓄積する意味はストックというよりフローだと思います。株式資本が生み出す不労収入で豊かな生活ができていたなら、最期まで現金製造マシンたる株式を持ったままでももったいないとは思いません。

ヒカキンはいつかYouTubeチャンネルを売却すべきなのでしょうか。頑張って築いた億単位の価値のある資本なんだから、いつか人生の終盤で売却して現金化しないともったいないのでしょうか。

と、そんなこと思う人は恐らくいないでしょう。

有り金をすべて使い果たしてあの世に逝きたいなんて、発想としてはちょっと貧しいなあと私は思います。充実した豊かな生活を送れる人は、それに相応しいくらい社会に価値を生んでいるはずで、その一部を資産として後世に残すのはむしろ自然なことではないでしょうか。それが株式という金融商品なのか、不動産などの実物資産なのか、特許などの無形資産なのか、その資産形態は様々でしょうが。

いつか株を売却するという発想が出てくるのは、株が容易に売却できる資本だからです。贅沢な悩みです。私は株式永久保有で構わないと思ってますが、売ろうと思えばいつでも売れるのはありがたいことです。