ついに債券相場が崩れ出しましたね。2016年債券投資家は成長株で一発当てたかのような大儲けをしてきたと思いますが、ここまででしょう。
まだまだお祭り騒ぎに興じたいでしょうが、そろそろ終わりのようですよ。宴もたけなわですが。
イールドカーブは正常だ!
日銀やECBが長期債の買入額を減らすのではないかという思惑から、長期国債の利回りが上昇(債券価格下落)しています。独10年国債は一時マイナス利回りでしたが、今はプラスに戻しています。
短期債の買入は現状維持しつつ、長期債の買入額を減らすことで長短金利差を拡大させ、金融機関のこれ以上の収益悪化を避けたいという思惑もあるようです。
金融機関は短期(預金)で資金調達し、長期運用(貸出)をして利ザヤを稼ぐビジネスですので、長短金利差が拡大すれば収益にポジティブに働きます。
日欧の低金利に引っ張られるようにアメリカの長期債利回りも低下基調でしたが、日欧の金利上昇の流れに乗って米長期債の利回りも上昇しています。
米国債10年物の利回りは1.7%台まで上昇しています。
年初来の米国債10年物の利回り推移です。
年初から債券価格は上昇(利回りは低下)し続けていますが、7月を底に債券価格は下落しています。見ての通り直近利回りは1.7%台まで戻しています。
さて、短期債利回りは依然低いままで長期債利回りのみが上昇するということは、イールドカーブ(利回り曲線)がスティープ化するということです。
より傾斜のある右上がりの曲線になります。
(FINANCIAL TIMESより)
これは米国債のイールドカーブです。ほとんど重なってはいますが一番上の直近の曲線が最も傾斜が急になっていることがわかります。
これを見れば一目瞭然ですが、米国は低金利ではありますがイールドカーブは綺麗な右肩上がりです(順イールド)。
イールドカーブが右肩上がりというのは、一般的に言って株式投資家には心強いデータです。
長期債の金利の方が短期債のそれより高いという自然な状態です。長期金利の方が短期金利より高いということは、景気・企業業績は拡大局面です。
投資家が長期的に金利が上がると予想しているということです。長期的にインフレ傾向にあり金融引き締めのため将来的に金利上昇が必要になると考えられているということです。
(もちろん、長期の方がリスクが高いからその分高利回りというタームプレミアムもありますが。)
金融緩和が長く続いていて過去の金利水準と今の金利水準とを比較することは不合理なのかもしれませんが、今の金利水準を期間別に比較することは意味あることだと思います。
将来の景気なんて我々素人が読めたものではありませんが、イールドカーブが示唆してくれていることに励まされてもいいのではと私は思います。
リセッション入りして株価が調整局面入りする時は、イールドカーブが右肩下がり(逆イールド)になりがちです。
イールドカーブが右下がりというはどういうことでしょう?
長期金利の方が短期金利よりも低くなるとはどういうことでしょう?
それは投資家が将来金利が低下すると予想していることに他なりません。中央銀行が利下げすると投資家が予想しているということです。
右肩下がりのイールドカーブとは、景気環境の割に金融を引き締めて過ぎている状態であって、その危険状態についての投資家から中央銀行への警告だと言えます。
リーマンショック直前、米国債は逆イールドでした。
昨今、債券高(債券利回り低下)の影響で公益や生活必需品などのディフェンシブ銘柄が買われ過ぎて、米国株全体もバリュエーションは高めだと言われています。米国株暴落に注意しろ!というニュースを見ない日はありません。
確かに金利低下に伴って配当利回りは下がってきています。ここで金利が上昇したら株価下落の懸念があるという発想は間違った認識ではないです。
でも、それほど悲観的に身構える必要はないと私は思っています。
なぜなら依然としてイールドカーブは右肩上がりだからです。
順イールドということは、これから中期的に米国企業の収益は向上して増配されていくのではないでしょうか。米経済リセッションの予兆はイールドカーブからは見て取ることはできません。
米国株が割安で強気に爆買いするタイミングとは当然思いませんが、弱腰で市場から逃げ出したくなるほどおびえる必要はないです。
米国債のイールドカーブが右下がりになるような事態が訪れるまでは、ゆっくり市場に居座って地道に配当再投資を続けることです。
まあ逆イールドになっても、僕は市場に居続けるけどね。