7月のアメリカ非農業部門就業者数は前月比25.5万人増となり、市場予想の18万人増を大きく上回りました。
5月の雇用統計がベライゾンのストライキを考慮しても異常な悪化を示して投資家を不安にさせましたが、6月・7月の雇用統計結果からアメリカ雇用市場は順調に回復していることが明白となりました。
平均時給は前月比+0.3%、前年同期比では+2.6%と上昇しました。
堅調な雇用統計を市場は好感し、NYダウは1%超上昇して18,543ドルとなりました。
為替も101円台後半まで戻しています。
良好な雇用統計は米国株投資家にとって安心材料となりうる一方で、9月の利上げ可能性が高まる点は不安材料となります。
アトランタ地区連銀ロックハート総裁は「状況はほんの少し不明瞭かもしれないが、私は利上げできる状態をイメージできる」と語っています。(WSJより)
まだ9月の利上げを市場は織り込んでいないし可能性も高くないとは思いますが、FRBの動きには注目しておく必要ありですね。
生活必需品セクターは横ばい
雇用統計の結果をマーケットが好感し、NYダウは久々に前日比1%超の上昇となりました。
S&P500も0.8%上昇しました。
このようにマーケット全体では上昇しましたが、セクター別ではどうなっているのでしょうか?
以下は雇用統計が発表された2016年8月5日(金)の米国株セクター別の株価上昇率です。
セクター別ETFの株価から算出しています。
セクター | 増減率 |
S&P500 | 0.82% |
一般消費財 | 1.05% |
生活必需品 | 0.17% |
エネルギー | 0.91% |
金融 | 1.91% |
ヘルスケア | 0.24% |
資本財 | 1.00% |
素材 | 0.33% |
テクノロジー | 0.97% |
公益事業 | -1.44% |
最も悪かったのは、公益事業で▲1.4%。
公益事業は上期トップパフォーマンスだったので、株価調整がされているように感じます。
注目してほしいのは、生活必需品セクターの結果。
悪いですよね、たったの+0.17%です。
雇用統計は良くて米マーケットはプチお祭り相場でしたが、その恩恵は生活必需品セクターにはありませんでした。
シーゲル教授は生活必需品セクターは長期で非常に優良なパフォーマンスを残したと言っていますが、この様な市場全体が好調な時に生活必需品セクターはおとなしい傾向にあるのです。
大切なことは弱気相場で勝つこと
NYダウやS&P500指数が伸びているとき、生活必需品セクター指数はその伸長率についていけないケースが多いです。
でもね、それこそが生活必需品セクターの良いところなのです。
生活必需品セクターの企業とは、プロクター&ギャンブルやコカ・コーラ、ペプシコ、フィリップモリス、アルトリアなとです。
景気に左右されにくい生活必需品セクターの企業の株価は、良くも悪くも変動が小さいのです。
これはリターンが悪いという意味ではありません。
リスク調整後のリターンが極めて良いということです。
ハワード・マークスは言っています、「強気相場で勝つことが大事なのではなく、弱気相場で負けないことが大切である」と。
生活必需品セクターは今回のようにマーケット全体が急上昇するときには、その波に乗り切れません、置いてきぼりです。
でも、そのあとマーケット調整局面になり株価全体が下落基調にある時にぐっと耐えてくれるのです。
S&P500指数が1%超下落し、投資家が悲観的になっているような時でも生活必需品セクターは頑張って横ばいで耐えてくれたりします。
そして、弱気相場での強さが強気相場で置いてきぼりにされたパフォーマンスを取り戻して、最終的には市場平均をアウトパフォームするのです。
マーケットが上昇基調にあるとき、生活必需品セクターETFであるVDCやXLPの株価は軟調となり、これらのETFに投資している人はお祭りに参加できません。
寂しいですか?
いいんですよ!
長期株式投資は株価の急上昇はむしろ悪なのです。
なぜなら、配当再投資での購入価格が上昇してしまうから。
生活必需品セクターは長期で市場平均を超えます(確信)。
でもそれは売らずにホールドし続けて、きちんと再投資を続けることが大前提。
雇用統計を受けてNYダウは1%超上昇しているのに、「俺のVDCやXLPは全く上昇してないじゃん、ダメだこいつら」とか言って、生活必需品セクターETFを売ってしまう残念な投資家になってはいけません。
長期投資をしていれば、必ず弱気相場に直面します。
マーケットは感情でできています。
投資家が将来に悲観的になるときは必ず訪れます。
その弱気相場で、暴落で、株式投資を止めずにホールドし続けてむしろ買い増すことが長期株式投資での成功への道です。
そんな時、生活必需品セクターの銘柄は必ずあなたを助けてくれます。
市場全体が30%も大暴落してビルから飛び降りる人も出るなか、生活必需品を中心にディフェンシブに投資しているあなたの下落率は10%程度で済んで夜もぐっすり眠れます。
長期投資を続けるためには暴落相場で狼狽売りをしないことが、最も大切です。
精神力です。
ヘッジファンドなどはレバレッジをかけているので、暴落の恐怖感に耐えるという精神力どうこうの前に、資金繰りがすべてです。
投資家の解約に応じるための売却も必要となります。
資金繰りが行き詰ってやむを得ず売却、投げ売りをすることになります。
でもノンレバレッジの個人投資家は資金繰りに困って投げ売りということは基本あり得ません。
そこが個人投資家最大の強みです。
個人投資家は、株価暴落の恐怖で投げ売りしてしまうのです。
普段は「俺は長期志向だから暴落が来ても余裕でやり過ごすぜ!」とか言っている奴も、いざ本当にリーマンショック級の大暴落が起きたら汗タラタラで、結局売却して投資ブロガーから消えていくのです。
そんな貧弱投資家が、マーケットの底で株式市場に戻れるわけもありません。
結局、暴落後の株価回復局面の恩恵にも預かれず、心の傷が癒えて再び株式市場に参戦できる頃にはすでに株価は高くなっているのです。
生活必需品セクターは強気相場で弱く、弱気相場で強い。
最近、アメリカ株価は最高値を更新しており強気相場とは言えないかもしれませんが、株式市場は少しづつ勢いづいている感があります。
こういう時、ディフェンシブに生活必需品銘柄に投資している人はアンダーパフォームしがちですが、そんなの気にせず保有し続けましょう。
最後に勝つのはディフェンシブに投資しているあなたですから心配無用!!