世の中は仕事で成り立っています。家族や親戚、友人の愛情に支えられていることも多くありますが、やはり市場経済から調達する商品やサービスなしに今の豊かな生活を続けることはできません。

最近格差の拡大に伴ってトランプ候補が象徴するポピュリズムが台頭してきており、保護貿易にすべしという主張をよく見かけますが、自由貿易がどれだけ世界の人々の生活水準を押し上げているか考えるべきではないでしょうか。

世界レベルで分業が行われ、それぞれが最も得意な分野にリソースを投入することで全体としての富を最大化できているという事実は普段生活している中ではなかなか実感できることはありません。でも、それは間違いのない事実でしょう。なぜ100円玉一枚でコーラを1本飲めるのでしょうか?、なぜ1000円札1枚で生姜焼き定食を腹いっぱい食べれるのでしょうか?

世界中の人々が、あなたが毎日仕事を一生懸命頑張っているから世の中は豊かになっているのです。

世の中に価値ある仕事を提供できているから、あなたは(少ないと不満はあるかもしれませんが)毎月お給料を貰えているわけです。そして、そのお給料でご飯食べてレジャーにも行けるし、本を買ってスタバでまったりすることもできるわけです。

仕事は人と人との関係性の中でしか生まれません。たとえあなたは毎日一人もくもくとパソコンを前に仕事をしてたとしても、その仕事は必ずその仕事を必要としているどこかの人に価値を提供しているわけです。そうでないと、あなたのお給料は誰が払っていることになるのでしょうか?

きちんと真面目に仕事をしているのであれば堂々とお給料をもらうべきです。その権利があなたにはあります。

  株主の仕事とは?

株主はもはや会社の所有者ではない!?

長期で優良企業の株式を保有し続ければ、あなたは恐らくそこそこ大きな富を得ることができます。もちろん投資額によりますけど。

なぜ株主であるあなたは株式投資を通じて富を得ることができるのですか?
なぜ株式投資をし続けて、あなたはお金をもらうことができるのですか?

あなたは株式投資を通して、社会にどのような価値を提供してお金をもらっているのですか?

その答えとして普通に考えると、株式投資とはビジネスそのものだという答えがあります。
それは間違っていないです。

あなたがコカ・コーラの株主だとすれば、あなたはコカ・コーラ社の所有者として世界の人々に美味しいコーラや清涼飲料水を販売して世界の人々の喉の渇きを潤して、世界の人々に価値を提供していると言えます。

それは間違っていなのですが、あなたにその実感はありますか?
私は正直言ってありません(笑)。

そりゃそうですよね、末端個人株主で会社経営には完全ノータッチなわけですから。経営者に任せて有り難く3か月毎の配当金を頂く、将来のキャピタルゲインを待ち望むだけですよね。個別株ではなくETFを買っている人はなおさらでしょう。

株主は確かに会社の所有者です。会社のビジネスリスクを負担しているのは株主です。それは100%間違いのない事実です。

でもそれは幻想なのかもしれません。

J・ガルブレイスは『新しい産業国家』という書籍の中でこう言っています。
「技術の進歩や計画化の進展に伴い、企業にとって最も必要な経営資源は専門化した人材と組織力になった。資本の所有者による支配はいまや”神話”化している。」

これを聞いてどう感じますか?

私は確かにそうだよな~って思いました。

税務という観点からも同じ思想が垣間見えます。

あなたは株式の配当金やETFの分配金を貰ったときに所得税を払っているはずです。

これって疑問に思いませんか?

あなたは株主として企業の所有者なのですよ。そして、企業は利益に対して法人税を国家に支払っています。あなたは株主としてすでに相応の税金を支払っているわけです。その法人税支払いは株価下落として間接的に株主であるあなたが負担しているのです。

企業は税引き後の利益から、株主に配当金として利益を分配するのです。

なのに、なぜ配当金に対して再び税金を払う必要があるのですか?
二重課税だと思いませんか?

そうなんです、これは二重課税なのです。

でも個人株主については、税法はこれを二重課税とは解釈してくれません。
配当金に対しても税金を払え!と税法は我々個人投資家に言っています。

なぜでしょうか?

それはガルブレイスと同じ発想なのです。

つまり法人税法は、もはや我々個人投資家なんて実質的には会社の所有者とは言えないと宣言しているのです。こういう考えを「法人擬制説」と言います。

株式を公開している大企業はもはや社会の公器としての存在、役割が大きいのであって、株主の所有物としては見做せないということです。法人の利益は経済的には株主の利益なはずですが、それは認めないと税法は言ってるのです。

株主としての仕事を謙虚に続けるのみ

ガルブレイスや税法がこう言いますが、それでも僕はすべての株主を(勝手に)代表して言わせてもらいます。

企業の利益は株主の利益である!と。
株主の役割は大きいんだ!と。
株主は普段は目立たないけど、しっかり社会に貢献している存在なんだ!と。

誰かがリスクを取らねばならないんです。誰かがリスク資本を提供してくれないと世の中の仕事はすべて消えてしまうんです。(そんなこと現実には起こり得ないけれど。)

好きなもの買って美味しいもの食べて飲んで、といった快楽的消費を抑制して株式というリスク資産を保有し続けることは尊い仕事だと僕は思います。

長期投資家も短期投資家も、世界の仕事のビジネスリスクを負担しているんだと自信を持っていいと思います。

ただ、一方で謙虚さも大切だと思います。謙虚さとはどういうことかというと、我々株主は所詮資本を提供しているに過ぎないと自覚するということです。

「俺は株主なんだぞ!」「社長より株主の方が偉いんだぞ!」「株主利益を最優先に考えろ!」「もっともっと儲けろ!」「従業員にノルマ与えまくってもっと利益を出せ!」
あまりこういう発想に傾倒するのは危険だと思います。

株主(ビジネスリスクの担い手)は世の中に必須の存在であると同時に、大企業の株主はガルブレイスが言うように神話化している面もあるのです。それは株主である我々が言われなくても実感していることでしょう。

社会に価値を提供している優良企業の株式を適正な価格で購入し、長期保有するということは尊い”仕事”です。でも、所詮ただ資本を提供しているだけの存在でしかないんだという謙虚な姿勢も大切だと思う今日この頃です。

米株式相場は2015年夏くらいから横ばい、為替はかなり円高が進みましたね。

多くの米国株投資家はここ1~2年はそれほど利益が出ていなくてイライラしている投資家も多いことでしょう。でも謙虚にいれば、利益が出ていないことにイライラせずもっとドンと構えていられるのかもしれませんね。

株式投資という仕事を地道に続けると同時に、その仕事の価値の程度をわきまえて謙虚にいるべきなのでしょう。

最近、投資歴40年のベテラン投資家様からこんなコメントを頂きました。

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「投資家として人類を地球規模でサポートして、資産を持ち続ける」
こんな発想は持ったことなかったなと思いました。

さすがに40年もの投資家歴がある方の考えていることは、私みたいなペーペー素人投資家とは格が違うなーと思い、色々と考えさせられました。

これもブログの醍醐味だな。