イケてるという日本語はバラエティ番組の「めちゃイケ」が由来だそうです。イケてるとは魅力的なとか賢明なという意味ですね。

賢明な投資家のあなたは、イケてる会社に長期投資してはいけません。イケてない一見地味な、でも強い会社に投資すべきです。

地味に強い、目立たないけどいざ本気出したらめちゃくちゃ強い、みたいな銘柄を長期投資対象として選ぶべきです。

スーパーマリオRPGのクリスタラーみたいな感じです(伝わらないかw)。のどかな民家にひっそりと住んでいる最強隠しボス。

 

もう明らかに私最強ですオーラを醸し出しているボスは傍観するだけにしたほうがいいです。

イケてる会社への長期投資は高い株主リターンに繋がらない可能性が高いです。

イケてる会社って具体的に何でしょうか?

解釈は色々あるとは思いますが、世間の注目を浴びてぐんぐん成長している会社がイケてる会社だというのが一般的な見方だと思います。

米国企業でいえば、今最もイケてる会社はIPOを控えたスナップショットでしょうか。メッセージアプリ「スナップチャット」を運営するスナップショットは売上高約4億ドルで想定時価総額はなんと200億~250億ドルです。。

フェイスブックやアップル、アルファベットもイケてる会社、洗練された会社というイメージを持たれがちです。やはりハイテク銘柄ですね。

イケてる会社は時価総額が伸びている傾向があります。時価総額という一つの物差しで判断するのは危険ではありますが、時価総額が急激に伸びている会社を避けるのは賢明な判断だと思います。イケてない投資家はそういう成長著しい企業の株を掴んで損をしてしまいがちです。

先日日経新聞の一面に1999年3月と2017年3月、それぞれの時価総額上位企業を載せていました。

1999年3月

会社名 時価総額(億ドル )
GE 3664
ウォルマート 2113
メルク 1917
エクソンモービル 1774
IBM 1641
コカ・コーラ 1600
シティグループ 1456
P&G 1329
J&J 1262
AT&T 950

2017年3月

会社名 時価総額(億ドル )
アップル 6408
マイクロソフト 4951
エクソンモービル 3538
JPモルガン・チェース 3078
J&J 3068
GE 2686
P&G 2332
シェブロン 2213
ウォルマート 2055
ベライゾンコミュニケーションズ 2028

1999年以降、ITバブルとリーマンショックと2大ショックを経験しながらも米国経済は大きく発展してきたことがわかります。そしてその原動力がシリコンバレーであることも明らかです。

1999年に時価総額トップだったGEは現在は6位まで後退しています。1999年にはランキング表にすらいなかったアップルが今や断トツの1位です。2位もハイテク銘柄の雄であるマイクロソフト。

結果的にアップルもマイクロソフトも今は高配当で長期投資対象として使える銘柄ではあるのですが、賢明な投資家は時価総額が伸びている=成長している企業=投資したら儲かる、と思っていはいけません。

時価総額の上昇は短期的には株主リターンの上昇と一致します。時価総額とは「株数×株価」ですが、短期的には株数など動くはずはないから時価総額の上昇とはつまり株価の上昇を意味します。

短期的な投資リターンが株価に左右されるのは当然です。短期的にはバリュエーションや本源的価値とは関係はなくミスターマーケットのご機嫌がすべてだと言えます。ましてや配当なんて気休めほどにしかなりません。

でも長期投資は違います。

長期投資のリターンを左右するのは株価だけではありません。配当がじわじわと効いてきます。長期投資では株価の伸びよりも配当再投資による株数増加こそが重要です。

また地味な最強銘柄はたくさん自社株買いをしてくれます。自社株買いは株価を上昇させる要因ですが、短期的な株価の伸びとは違うものです。長期的に株を保有している投資家がその恩恵を受けることができるという意味で、短期的な相場変動によるキャピタルゲインとは異なる利益です。

シーゲル教授は『株式投資の未来』でこう言っています。

投資家のリターンは、時価総額とはまるで別の概念だ。
(中略)
長期投資家の立場からみて、リターンの最大の源泉となるのは、配当だ。

時価総額が目下伸びている、世界的な企業を目指して成長している株を買うという発想は控えるべきです。

逆に時価総額ランキングが下がっているような銘柄の方が長期投資対象としては魅力的です。構造的に衰退しているかつてのコダックような銘柄はいけませんよ。地味だけど強い企業です。ブランド力のある生活必需品株などが狙い目です。

上記の表で時価総額ランキングが下がっている企業としては、GE、ウォルマート、メルク、コカ・コーラ、IBMなどがあります。

いいと思いますよ、こういう銘柄って。

今の米国経済を牽引しているアップルやマイクロソフトにガンガン投資するよりは、上記に挙げたような時価総額順位が下がっている優良企業の株を長期ホールドして配当再投資を繰り返すほうが良い結果になると思います。

時価総額が上がっている企業とは、それだけ社会に必要とされている企業という意味です。それだけ社会的に存在意義があると顧客に認められている企業です。社会的には時価総額の上昇は善です。これは間違いないです。儲けまくっている企業は、多くの顧客を抱えており社会になくてはならない製品やサービスを提供しているのですから。私はアップルのiphoneなしで生活するのは不可能です。

ただ、あくまでも株主という視点からは時価総額の上昇は必ずしも喜ばしいことではないということです。時価総額が上昇している成長企業の株価は割高になりがちで、配当再投資が非効率になります。

あなたは株主でしょうから、当然株主の視点で会社を評価すべきです。

時価総額と株主リターンは無関係です。一見関係ありそうに見える両者ですが、それは短期のみの話です。

時価総額が伸びている成長企業の株を無思考に掴むとは、価値観が全く合わない美女と結婚するようなものです。短期的には美しい女性と夜を共にできて幸せかもしれませんが、30年後はもうただのババアで金だけ要求され・・・。まあ株は途中で売却できる分ましですが。

時価総額と長期投資リターンは無関係という事実は、是非賢明な長期投資家のあなたに覚えておいて欲しいことです。

イケてる企業に長期投資するのは止めておきましょう。