株主の利益は最終的にはすべてインカムに集約されます。そりゃそうです。株主の口座にお金が入金されて、投資リターンは確定されるわけですから。

とは言うものの、やっぱり日々の株価変動に一喜一憂してしまうことはよくあります。スマホで手軽に株価をチェックできる便利な時代ですから、現代の投資家は昔よりも株価に振り回されがちかもしれません。

頭では企業の利益、配当が真の株主利益と理解していても、日々の値上がり益(損)に目が行きがちです。別に株価を追うことが悪いわけではないし、完全スルーよりよほど健全だと思います。

まあ、株価に目が行ってしまうのは仕方ないことかもしれません。S&P500の配当利回りは1.8%です。たった1日の株価下落で吹っ飛んでしまうくらいの小さな金額です。

株主リターンが最終的には配当と言ったって、そんな2%にも満たないインカムで満足できないのは当然の感覚です。将来の増益・増配を待つのが長期投資のスタンスではありますが、毎日賑やかにワイワイやってる株式マーケットを覗きたくなるものです。特に最近のマーケットは賑やかですよね(というか慌ただしい)。

なぜ株価変動率(年̟±30%もあり得る)は、配当利回り(S&P500で年1.8%)や益回り(S&P500で年6%)より遥かに大きいのでしょうか。年間の株価変動率は分散の効いたS&P500ですら▲30%~+30%くらいにブレます。その理由をちょっとファイナンス理論的に語ってみます。

 

株価は将来のすべての配当を背負っている。そりゃ1年間の配当よりもインパクトあるさ。

株価はどのように決まっているのでしょうか?

株価はマーケットの需要と供給で決まっています。買い手と売り手お互いが合意した金額が株価です。そう、それはその通りなのですがもうちょっと理論的に言うと、株価とは将来配当の割引現在価値の合計です。

金融商品の価格はそれが将来生み出すキャッシュフローの割引現在価値の合計となります。例外はありません。株式が生み出すキャッシュフローとは配当です。将来の配当(DPS)がギュッと凝縮したものが株価ということです。

つまり、株価とは来年、再来年、3年後、4年後・・・10年後・・・30年後・・・のすべての配当が反映されているわけです。

どうでしょうか?
これで配当よりも株価変動の方がインパクトが大きい理由が、何となくわかりませんか?

これこそが株価変動率が大きくなってしまうファイナンス的理由です。投資家が益回りや配当利回りではなく、株価変動率に惑わされてしまうファイナンス的な説明です。

1年間の配当と1年間のキャピタルゲイン(ロス)、後者の方が大きくなるのは道理です。なぜなら、株価は将来のすべての配当を織り込んでいるからです。

配当利回り3%の高配当銘柄に投資しても、1カ月で株価が10%下落することもあります。3%という高利回りであっても、配当だけで10%のリターンを得るには3年間も保有し続けなくてはなりません。3年分の配当がたった1カ月で消失することもあります。それは仕方ありません。株式投資とはそういうもんです。

将来のすべての配当が株価に反映されている以上、株価が10%くらい下落することは普通に起こり得ることです。


イメージ的にはこんな感じです。

株価の方が配当(EPSと考えてもいい)より遥かに重いです。なぜなら、株価は将来のすべての配当を背負っているからです。株価はたった1年間の配当よりも重いわけです。

いくら配当・利益を見るべきと言われても、これじゃあ株価に振り回されるのは仕方ありません。

しかし、、やはり株主の利益とは企業の利益であり配当なのです。

株価変動は将来の企業の利益がどれくらい伸びるのか、あるいは衰退するのかを示唆してくれます。そういう意味で株価の動きを投資判断に活かすこともできます。できますが、マーケットは感情で動いていることも多いので、あまり気にし過ぎない方がいいかなと思います。

と言いつつ私は毎日株価を追ってますがね。まあ半分興味心と娯楽です。

短期では配当利回り(ないし益回り)よりも、株価変動率の方が大きくなるのは、ファイナンス的に考えて当然です。投資してソッコーで5%くらい株価が急落して、配当分が一瞬で消えることもあるかもしれません。私は最近そんなことばっかりです(泣、笑)。

でもでも、自分を慰めるわけではありませんが株とはそういうもんです。それくらい想定の範囲内だと思って投資する必要があります。まあ運ですよ、短期的な株価変動なんて。上がったらラッキー、下がったらアンラッキー。長期的な株主リターンは企業の利益次第です。最後はそこに行き着きます。

「企業が稼いだEPS×あなたの保有株数」、これがあなたの投資利益です。短期的にはそんな実質的な利益とは無関係に株価は上に下にグワングワン変動しますが、それは大抵ノイズです。スマホとPCを投げ捨ててノイズキャンセルまでする必要はありませんが、あまり気にし過ぎない方がいいですよ。

株価と上手く付き合いながら、気長に投資を続けましょう。マーケットに居続けましょう。常に資本コストを超える利益を稼いでいる優良株をホールドして、マーケットに居続ければいずれは報われるはずです。