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オリンパスが”物言う株主”に狙われるわけ

   

米国の有力アクティビティスト(俗に言う、物言う株主)のバリューアクトが、オリンパス株の5.0%を保有したと公表しました。大量保有報告書によって明らかになりました。

バリューアクトはかつてマイクロソフト株に投資して、経営改善要求を求めたこともありました。バリューアクトの現在の投資先としては、モルガンスタンレーやシティグループ、21世紀フォックスなどがあります。

アクティビティストとは、会社の意思決定に影響を与えられるほどの資金を出資して経営に関与し、企業価値(株主価値)を高めてリターンを求める投資家です。つまり、自ら会社経営に口出しして株価を上げて、売却益を狙う投資家ということです。バリューアクトが投資しただけで、オリンパス株は一時5%も上昇しました。マーケットのバリューアクトに対する期待値の高さが伺えます。

さて、バリューアクトは何を思ってオリンパス株を取得したのでしょうか?

日経新聞はこんなこと言ってます。

バリューアクトはオリンパスにどんな改革を求めていくのか。今後の動向から目が離せない。

日経新聞

改革?
企業価値を上げられる(株価を上げられる)、そんな魔法のような改革なんてあるのでしょうか?

 

改革とはカッコイイ表現ですが、企業ってそんな簡単に変わりません。私は実際にオリンパスのような典型的な日本メーカーで働いていますので、よーくわかります。本当の意味で企業を変革するには、組織風土を変えたり、報酬制度をいじったりする必要がありますが、それはかなり長い時間が必要です。アクティビティストの一般的な投資回収期間(長くて8年程度)では難しいです。

では、バリューアクトは、どうやってオリンパスの株価を上げようとしているのか?

私は一つしかないと思います。

内視鏡以外の事業の切り離し、撤退です。

これしか思いつきません。

これは2017年3月期のオリンパスのセグメント別収支です。有価証券報告書に記載されているものです。

 (単位:億円) 売上高 営業利益 営業利益率
医療 5,753 1,155 20%
科学 932 53 6%
映像 656 5 1%
その他、調整 140 -448 -320%
合計 7,480 765 10%

「医療」というのが内視鏡事業です。内視鏡事業の営業利益率は20%もあるのですが、全社の営業利益率はその半分の10%しかありません。「その他、調整」という謎のマイナスがあってこれは内容不明ですが(恐らく全社に必要な本社間接費用などかな)、他の二つの事業である「科学」と「映像」の利益率が著しく低いことが、全社利益率を押し下げていることは間違いありません。

オリンパスの企業価値を短中期に押し上げる方法があるとしたら、他の不採算事業を切り離して、内視鏡事業へリソースを集中させることしか思いつきません。私の経験浅い脳ミソでは、これ以外に短中期で株価を押し上げる術は出てきません。

仮に内視鏡事業(セグメント収支の「医療」)だけを単独で持つことができれば、オリンパスの営業利益率は20%程度まで急上昇します。米国の医療機器大手のメドトロニックやアボット・ラボラトリーズに匹敵、いや超える水準になります。

日本の硬直的な労働慣行の中で、営業利益率20%を叩き出すなんて超すごいです。オリンパスの内視鏡がいかに価値ある製品なのかがよくわかります。

内視鏡って製品によって使い勝手がだいぶ違うそうですが、ドクターは機器の微妙な使い勝手(しなりや滑り)にこだわりを持っています。オリンパスの内視鏡は世界シェアトップで、世界中のドクターが使用しています。品質が良くて昔から使い慣れたオリンパスの内視鏡を止めて、他社の製品に乗り換えるメリットはないわけです。ちょっとくらいの価格差じゃ医者の心に響きません。人の命にかかわることですから。スイッチングコストは高いです。

そんなわけで、オリンパスの内視鏡は超高マージンです。バリューアクトはそこに目を付けているんでしょう。内視鏡事業が美味しいと。メドトロニックと同レベルの利益率を誇るビジネスを持っているのに、他のお荷物事業のせいでバリュエーションが低く評価されていると判断しているのでしょう。

ただ、日本の法規制があるなか(特に労務関係)、内視鏡事業だけを残すなんてそう簡単にできるとも思えません。今後バリューアクトの影響を受けてオリンパスの経営がどう変わるのか、とても興味があります。

事業を切り離す、スピンオフ、リストラというのは非情なこと悪いこと、という印象が世間にはあるように感じますが、有限な資源を有効に活用するという意味で不採算事業(資本コスト以下の収益率の事業)から撤退することは重要なことだと思います。そうやって、それぞれの企業が利益を追求することで、巡り巡って国民一人一人の所得が上がりより豊かな生活を送ることができます。利益が上がれば税金も増えますし。ただミクロで見ると、各従業員とその家族の生活がかかっているので、難しいのも事実ですが。

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