石油ビジネスが持続的な収益を上げ続けることができるのか、世界の投資家は懐疑的に見ています。

1バレル100ドルを超えていた原油価格は、2014年夏頃から急落して2016年初旬には1バレル26ドル台まで下落しました。その後原油価格は持ち直して、2016年夏頃からは概ね1バレル50ドル付近で推移しています。

個人投資家として、エネルギーセクターをポートフォリオに含めるかは悩むところだと思います。私個人の意見としては、エネルギーセクターにマーケットが悲観的になっている今だからこそ石油関連ビジネスに投資する価値はあると思っています。

周りが怯えて手を上げていない時に、果敢に手を上げて出資できるのが受託者責任のない個人投資家の強みです。

ただし、エネルギーセクターに過剰に投資することはせずにきちんとセクター分散することが大切です。また、強い財務基盤を持つ石油メジャーを中心にポートフォリオを組んだほうが安全だと思います。

石油メジャーとは、20世紀後半に石油生産を独占していたセブン・シスターズの流れを組む企業を指すことが一般的です。具体的には以下の企業が挙げられます。

エクソンモービル(XOM)
シェブロン(CVX)
ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS.B)
BP(BP)

サウジアラムコやガスプロムなどの国営石油企業の影響力が強まっていますが、これら石油メジャーは投資対象としてまだまだ魅力的だと思います。

さて、この4つの石油メジャーに投資するならあなたはどれを選びますか?

この4つの銘柄、実は配当利回りの水準が結構異なります。各社の配当利回りは以下の通りです。

ティッカー 配当利回り
XOM 3.8%
CVX 4.2%
RDS.B 7.0%
BP 6.9%

米国石油メジャーであるXOMとCVXより、欧州石油メジャーのRDS.BとBPの方が配当利回りが格段に高いです。

長期投資では配当を最大化させることが大切です。

では、エクソンモービルではなくより配当利回りの高いロイヤル・ダッチ・シェルに投資した方がいいのでしょうか?

そもそも、なぜ両者の配当利回りの差はこんなにあるのでしょうか?

XOMとRDS.Bを題材に考えてみましたので、よかったら聞いて下さい。

 

なぜRDS.Bの配当利回りはあんなに高いのか!?

(結論)RDS.Bの配当利回りの方がXOMのそれよりもかなり高いわけ、それは将来の配当成長力の差です。RDS.Bの方が将来の配当成長力が劣っているからです。

 

株価ってなんでしょうか?

RDS.Bの株価とは、RDS.Bの株式の値段です。←当たり前!
株式の値段ってどうやって決まるのでしょうか?

株式に限らず、金融商品の理論価格とはその金融商品が将来生み出すキャッシュフローの現在価値の合計です。この辺りの理屈を理解したいなと思う人は、是非こちらの書籍を手に取ってみて下さい。

株式が投資家にもたらすキャッシュフロー、それは配当です。
株式の値段とは、その株式が将来生み出す配当の現在価値の合計です。

RDS.Bの株価とは、ロイヤル・ダッチ・シェルが今後生み出す将来の一株当たり配当(DPS)の現在価値の合計です。
現在価値の合計という表現がややこしいと思う方は、将来DPSの単なる合計だと思ってください。

同じくXOMの株価とは、エクソンモービルが今後生み出す将来DPSの合計です。

XOMもRDS.Bも同じ石油ビジネスを営んでいます。また、両社ともに大手石油メジャーであり財務力は強いです。投資家のリスク認識はXOMもRDS.Bもそれほど差はないと思われます。

つまり、マーケットが合理的であれば、XOMに投資してもRDS.Bに投資しても生涯で貰える予想配当総額に大きな差はないと考えられます。

生涯の予想配当総額に差はないのにRDS.Bの方が配当利回りが高いのはなぜか?
XOM:3.8%
RDS.B:7.0%

それは、RDS.Bは将来の配当成長がほとんど見込まれていなからだと思われます。一方で、XOMは将来の配当成長がそこそこ見込まれているということでしょう。

米国会社四季報から、XOMとRDS.BのDPS推移を拾いました。

 

エクソン・モービル(XOM)のDPS推移

※FY17以降は予想、単位:ドル

 

ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS.B)のDPS推移

※FY17以降は予想、単位:ドル

 

XOMは緩やかに配当成長が続いていますが、RDS.BはドルベースではFY14以降にほとんど配当が成長していません。

簡単に将来の配当イメージをグラフにしてみました。

青がXOMの配当イメージ、緑がRDS.Bの配当イメージです。

XOMは緩やかな傾斜の台形、RDS.Bは長方形というイメージです。
(※あくまでも理解を助けるためのイメージです。)

あなたは青色の台形と、緑色の長方形、どちらの方がより面積が大きくなると思いますか?

青の人→エクソンモービルに投資するといいでしょう。
緑の人→ロイヤル・ダッチ・シェルに投資するといいでしょう。

考え方は人それぞれです。

ただ一点覚えておくべきことは、マーケットは賢いのでどちらを選んでも面積の差はそれほど違わないはずということです。

配当利回りが高いRDS.Bが有利だとか、そんな安易に考えるべきではないです。

 

 

株式投資のリターンとは配当でしかありません。配当最大化を目指す中でキャピタルゲインも勝手に付いてきます。長期的に配当を最大化できるようにポートフォリオを組むべきです。

とは言えね、、、そんな将来の配当なんて予想できるわけねーだろ!!って感じですよね。
そりゃそうだ。
それがわかれば苦労しない。

だから、ほどよく分散投資するのが合理的でしょう。
ETFを活用するはいい選択肢だと思います。

上のXOMとRDS.Bの例だって、XOMが予定通り増配できるかなんてわからないし、RDS.Bが将来減配してしまうリスクだってあるでしょう。

将来何が起こるかなんてわかりません。同業のBPは2010年にメキシコ湾岸で大規模な原油流出事故を起こして減配を余儀なくされました。そういった事故に伴う経済的損失は株主が負うことになります。

何か起こったら損するかもしれない!というリスク、恐怖感は絶対に消えません。どんな優良企業であれ、常に将来安泰というわけにはいきません。ビジネスは厳しい世界です。

でもそういうリスクがあるからこそ、株式投資にはリターンがあるのです。適切に銘柄や購入タイミングを分散してリスクを低減することは大切ですが、リスクから逃げてばかりいてはリターンは得られません。

リスクをうまくコントロールしながら、あなたのポートフォリオ全体として生涯の総配当額をなるべく大きくできるように努力すべきでしょう。

 

 

個人的にはRDS.Bの方がちょっと有利に思う

マーケットは合理的だから、XOMに投資してもRDS.Bに投資しても生涯総配当額は同程度になるはずだと言いました。

とは言えですね、、私の素人意見で恐縮なんですが、RDS.Bの配当利回りの高さはかなり魅力的だと思っています。

だって、XOMの方が配当成長力が強いと言ってもその成長率は高が知れています。
FY16からFY19までの予想配当成長率(CAGR)を出すと、年率3.6%です。

年率3.6%の配当成長率でかつ仮にRDS.Bの配当成長がゼロだとしても、XOMの配当がRDS.Bに追いつくには大体15年ほど掛かります。

RDS.Bだって全く配当成長しないことはないでしょう。
少なくともインフレ分は増配するでしょうし。

自分がマーケットの株価判断よりも賢いなんて、そんな傲慢なこと思ってはいません。
ですが敢えて、XOMとRDS.Bでどちらの方が長期リターンが良いだろうかと聞かれれば、ややRDS.Bの方が優位なんじゃないかって思っちゃいます。

直感ですけど。