一国の経済成長率(GDP成長率)よりも企業収益の変動率が高いのは、レバレッジの影響である。そして、企業収益の変動率よりも株価変動率のボラティリティの方が高いのは、投資家心理の影響である。

オークツリー・キャピタル・マネジメントのハワード・マークス氏は、書籍でこのように語っておられます。

なるほど、非常にわかりやすい説明だなと思いました。確かに、株価ボラティリティは企業のEPSボラティリティよりも遥かに高いと感じます。

が、言葉だけで理解するのは嫌だ。これが事実なのかきちんと数字で確認してみました。『バリュー株トレーディング』という書籍に参考になるデータがあったので、紹介します。以下表のGDPは米国経済、EPSと株価変動はS&P500指数です。

グラフにしてみます。

うん、やっぱり株価変動率だけ明らかにボラティリティが高いですね。10年単位とそこそこ長い期間でデータを取っても、やっぱりマーケット心理が株価を大きく動かしていることがわかります。

ちなみに、GDP成長率とEPS成長率はほぼイコールですが、これはS&P500という米経済の大半を占める企業の平均EPSを見ているからです。個別企業を見れば、平均以上にレバレッジを掛けている企業のEPS変動率は、GDP変動率よりも高いはずです。

まとめると、以下のようになります。

図にしてみた。

長期の株主リターンは企業のEPS次第と言えます。長期的にEPSを伸ばし続けられる企業に投資できるか否か、そこが肝要です。株価じゃない。でも短期的には(10年レベルで見ても)、株価は企業のEPS変動以上に大きく動くことがデータからわかります。過去50年そうなんだから、これからもそうなる可能性が高いでしょう。

投資した後すぐに株価が下がることなんてザラにあること。んなこと気にしてもしゃーない。逆に、投資した後すぐに株価が高騰してもラッキーくらいに思うのがちょうどいい。

それはバリュエーションなんてどうでもいい、とにかく優良株を買えばいいと言いたいわけじゃありません。買い値はめっちゃ大事。ただ買い値にそこそこ自信があるなら、買った後の株価変動なんていちいち気にしてもしゃーないってだけ。

長期投資というのは、何も投資のタイムスパンのことを言っているのではない(しかし、長期投資家は5年以上のリターンを見据えて投資すべきだ)。長期投資というのは投資の態度であり、企業分析のアプローチである。

つまり、株式の投機的なトレードで利益を得ようとするのではなく、有利な価格でその企業(ビジネス)に投資するという思考プロセスが大切である。

『バリュー株トレーディング』より

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