ここで、次の表を見てもらいたい。これは、A社が今後も33%のROEを維持し、また利益をすべて内部留保して再投資した場合の、株主資本と税引後利益の推移を予想したものである。

株主資本(ドル) 税引後利益(ドル)
1年目 6,000,000 1,980,000
2年目 7,980,000 2,633,400
3年目 10,613,400 3,502,422
4年目 14,115,822 4,658,221
5年目 18,774,043 6,195,434
6年目 24,960,478 8,239,927
7年目 33,209,405 10,959,104
8年目 44,168,509 14,575,608
9年目 58,744,117 19,385,559
10年目 78,129,675 25,782,793
11年目 103,912,470 34,291,115

一目瞭然、A社の株主資本が毎年33%の複利で成長していく様子がわかるだろう。その仕組みはこうだ。まず最初の年、A社は600万ドルの株主資本に対して33%に当たる198万ドルの利益を上げ、これをすべて内部留保して再投資する。すると、2年目の株主資本は元の600万ドルに内部留保によって増加した分を加えて798万ドルとなる。

(中略)

このようなサイクルを毎年繰り返していくことによって、株主資本と利益はともに年33%という高水準で成長していくことになる。

『億万長者を目指す バフェットの銘柄選択術』より抜粋


こんなの机上の空論に過ぎない!!

 

確かに、高ROE企業は長期投資に向いている優良企業である可能性が高いです。ROEが高いことは素直に良いことだと受け止めています。

でも、高ROEの企業に投資したら高い株主リターンが約束されているなんて、んな甘いことはありません。高ROE銘柄に投資すれば、上の例にあるような夢の様な成長ストーリーが実現するんだと期待すべきではないです。

ROEが33%だから今後も株主資本が年率33%で増え続ける。

この仮定はあまりに楽観的過ぎます。利益をすべて事業に再投資し、かつその投資利回りがROEと同じ33%を維持するというのは無茶な仮定です。

高ROEを維持するには、高い利益成長を続ける以外にも方法があります。それは株主還元です。稼いだ利益をすべて株主還元(配当や自社株買い)に回せば、純資産は増えませんから利益横ばいならROEは維持されます。コカコーラやアルトリアなど現代の高ROE企業は、こうやって高ROEを維持している傾向にあります。

積極的な株主還元は別に悪いことではありませんよ。ただ、利益を33%の利回りで再投資し続けられる企業がもたらす高い株主リターンを、高還元企業に求めるのは無理です。

ROEが33%は確かに優秀。でも今後も33%の利益成長を続けることができるという前提に立つのは、ちょっと無理があります。

ROEが高い企業に投資すればそれで万事OKってわけではありません。

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