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調子がいい時は好材料にだけ反応し、調子が悪い時は悪材料にだけ反応する。株式市場は気まぐれだ。

   

今年はタバコ銘柄が軒並み暴落しています。フィリップモリス・インターナショナル(PM)、アルトリア・グループ(MO)、ブリティッシュアメリカン・タバコ(BTI)の2018年初来リターンは以下の通り。

PM:▲33%
MO:▲28%
BTI:▲49%

タバコ株が下がり始めたのは2017年の春頃。それまではリーマンショックから復活して、タバコ株は値上がりが続いていました。

相場の潮目が変わり始めていた2017年4月、とあるウォールストリートジャーナル(WSJ)の記事に目がとまりました。タイトルは「復活を遂げた米タバコ業界、黄金期到来か」です。「黄金期」とは使い古された、でもちょっとキャッチーな言い回しです。

WSJには毎週たくさんの記事がアップされます。ニュースですから、記事は消化する感じでさらっと読んでおり、明確に記憶に残ることは少ないです。ですが、この「タバコ業界に黄金期到来」の記事は記憶に残りました。1年半も前の記事なのにまだ覚えています。

このWSJの記事はブックマーク登録しておきました。なぜかと言えば、ちょっと警戒心を抱いたからです。「黄金期到来」とは投資家にとって良いニュースに思えて、実は悪いニュースなんじゃないかって思いました。投資家が調子に乗ってタバコ銘柄を買い上げるのではないかと。そしたら、高値を掴んでいたのは自分だったってオチですw。

この「黄金期到来」の報道からそれほど時を待たずして、米たばこ業界のツートップであるMOとBTIの株価が下落したのは偶然とも言えます。FDAがメンソールたばこを規制したことが株価下落の最大の要因だと思われますが、そんなFDAの規制までWSJも予見できないでしょうから。

FDAの規制は予想外のイベントだったとは言え、WSJが「たばこ業界に黄金期到来」と宣言してから、たばこ株の暴落が始まったことは非常に印象的な出来事として僕の記憶に刻まれました。

その記事を一部抜粋します。

2016年に米国の消費者がタバコに費やした額は、炭酸飲料とビールを合わせた額より大きい。業界再編とコスト削減によって利益も拡大している

業界団体TMAによれば、タバコ1箱の平均小売価格は2001年には3.73ドルだったが、2016年は推定6.42ドルにまで値上がりした。

アルトリア・グループのマーティ・バリントン最高経営責任者(CEO)は、「われわれは試練の時期を脱した」とインタビューで語った。

世界保健機関(WHO)のデータを見ると、米国のタバコ税は先進国の中で相対的に低いことが分かる。TMAによれば、米国で売られるタバコ1箱の平均価格の42%は税金だ。一方、英タバコ製造者協会によると、同国のタバコ価格に税金が占める割合は82%。

米国ではタバコの健康被害に関する警告表示の義務付けなどが一部の国に比べると厳しくない。

タバコは値上げしやすく利益は拡大基調、CEOは自信に満ち溢れている、米国のタバコ税は低く広告規制も相対的に甘い。など色んな側面から米タバコ業界を称賛しています。

そしてマーケットは(私も)これらタバコ会社を取り巻くポジティブな環境が、相対的に高いPERを正当化すると判断しました。このWSJの記事が掲載された当時のMOのPERは20倍強でS&P500平均を超えていました。

しかし、FDAのメンソールたばこ規制の懸念が出ると米たばこ銘柄のBTIとMOは暴落しました。相場全体が不安定になったこと、(BTIについては)ブレグジットの懸念も嫌気され、下落に拍車がかかりました。現在両銘柄の予想PERは10倍前後です。

もしかしたらマーケットは、FDAの規制を悲観的に株価に織り込んでいるのかもしれません。WSJが例の「黄金期」の記事で取り上げた米たばこ業界の明るい要素はどこかに消えたのでしょうか。いや、そんなことはない。タバコは値上げが容易だし、依存性のあるタバコの売上高はそう簡単に落ちないと思います。

それでも、一度悲観的な雰囲気になると好材料は投資家の視界から消え去り、悪材料しか見えなくなるようです。逆に相場の調子が良い時は、将来噴出するかもしれない悪材料はリスク要因として認識されない傾向にあります。そして「黄金期到来」なる記事まで生まれます。

最近のタバコ会社の暴落が妥当なのか、それともマーケットの不安心理が行き過ぎているのか、それはわかりません。ただマーケット(つまり人間)の心理を考えれば、行き過ぎている可能性もあります。株価の底は誰にもわかりませんが。

実際の企業の利益変動率に比べて、株価変動率は高過ぎる。それは利益を変動させるのは客観的な会計数字だけど、株価を動かすのは感情ある人間だからである。株価変動の多くは投資家の感情の揺れ動きによるものと言える。
こんな主旨のことをハワード・マークス氏は言ってます。

確かにその通りだと思います。私の感情もいつも揺れ動いています。昔より今の方が、タバコ銘柄に対して悲観的な見方をしている自分に気付きます。マーケットは気まぐれだ。馬鹿にすることなく、振り回され過ぎることもなく、うまくミスターマーケットと付き合っていきたいです。

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