バフェットは最近こう言っています。

米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ。

ウォーレン・バフェット

 

最近の米国株価は割高に見えるけども金利が低いことを考えれば妥当だと、WSJや他経済ニュース等で言われることがあります。

これ、腑に落ちて理解していますでしょうか?
なんとなく、市中の金利が低いなら株式のリターンも低いのかなくらいの理解かもしれません。

金利が低いと高い株価も正当化されるとはどういう意味なのか、頑張って自分なりに説明してみたいと思います。もし良かったら聞いてください。

先に(個人的な)結論を言えば、金利が低いとは期待インフレ率が低いことを意味するので株式の名目リターンが低くても、実質リターンは確保されるということです。

投資リターンは名目リターンより実質リターンが大切です。

実質リターン=名目リターン - 物価上昇率(インフレ率)

 

ファイナンス理論的に

最初にファイナンス理論的な観点から。

ファイナンス理論は机上の勉強なのであまり実感が湧かないかもしれません。ですが、先ずはお勉強として理論的に理解することも大切かなと思います。

 

金融商品の時価とはその金融商品が将来生み出すキャッシュフローの割引現在価値です。

この概念は超大切です。

これは例外はありません。

・債券の時価は債券利息の割引現在価値の合計です。
・投資マンションの時価は期待される家賃収入の割引現在価値の合計です。
・サラリーマンの時価(経済的価値)は将来の給料と退職金の割引現在価値の合計です。
・株式の時価(株価)は将来配当の割引現在価値の合計です。

 

現在の100円と1年後の100円は同じ価値ではありません。金利相当分1年後の価値は高くなります。金利が3%なら現在の100円は1年後の103円と等価です。

こうやって今の価値を将来に引き延ばすのはイメージし易いですね。銀行預金の利息計算と一緒です。

将来のキャッシュを割り引くとはこの逆の計算をすることです。

金利3%とすれば1年後の100円の今の価値はいくらでしょうか?
答えは97円です。

金利7%とすれば1年後の100円の今の価値はいくらになるでしょうか?
答えは93円です。

金利が7%の時よりも、金利が3%の時の方が現在価値は高くなりますね。

金利(割引率)が低くなればなるほど金融商品の現在価値(時価)は高くなります。

つまり、
金利が低いほど理論株価は高くなります。

株価とは将来配当の割引現在価値の合計でしたね。金利が低いということは将来の配当を割り引く利率が小さくなることを意味するので、その現在価値たる株価も高くなります。

 

冒頭のバフェットの言葉を載せます。

米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ。

ウォーレン・バフェット

「株価は金利と比較すれば割安」の意味がファイナンス理論的にわかりますね。

今は低金利ですから将来の配当を割り引く利率が低くなるので理論株価は高くなります。金利が(割引率が)低いならば、配当の割引現在価値たる株価が高くても妥当だとバフェットは言っているわけです。

 

もっと実感を持って理解してみましょう!

上のファイナンス理論的な説明はどうしても「ふ~ん」という感じになってしまいがちです。「まあ、計算としてそうなるのは分かるんだけど、結局どういう意味なの??」と思いませんか。

それはごもっともです。理論が実生活にどう結びついているのかってなかなか理解が難しいところですよね。

金利が低いほど株価が高くなるとはどういうことか、もう少し実感持って理解できるよう説明してみたいと思います(分かりずらかったらごめんなさい・・)。

 

 

そもそも、長期金利とは何でしょうか?

現在2017年10月下旬の長期金利(10年物米国債利回り)は2.4%ほどです。この2.4%という利回りは国債がマーケットで取引された結果なわけですが、債券投資家は何を根拠にこの利回りを妥当と判断しているのでしょうか?

基本はFRBが決める政策金利(=短期金利)です。現在は1.0%~1.25%です。

長期金利とは短期金利の集合体です。

10年物金利とは、
0~1年目の金利、1~2年目の金利、2~3年目の金利・・・・・・・・8~9年目の金利、9~10年目の金利の平均値だと言えます。

10年目までのそれぞれの期間の想定金利から計算されるのが長期金利(10年国債利回り)です。

将来の金利はわかりません。分かっているのは現時点の短期金利(政策金利)が1.0%~1.25%ということだけです。これより先のことはすべて推測となります。

極論言えば今後10年一切金利が上昇しないとマーケットが判断していれば、10年国債利回りも政策金利と同じ1.25%ほどになっているはずです(タームプレミアムは無視する)。

でも実際は違います。

現在はこうなっています。
短期金利(政策金利):1.2%
長期金利(10年国債利回り):2.4%

政策金利とはFRBが決めるフェデラル・ファンド金利(FF金利)のことで、日本でいうところの無担保コール翌日物金利です。要するに超短期間の金利ということです。

FF金利は期間が短すぎると思うならば、2年物国債利回りと比較してみましょう。

2年物米国債利回り:1.5%
10年物米国債利回り:2.4%

10年物国債利回りの方が0.9%高いです。

この2年物国債利回りと10年物国債利回りの格差は何によって生じているのでしょうか?
短期金利と長期金利の格差はどんな要因によってもたらされているのでしょうか?

長期金利の方が当然高いと盲目的に考えるのは思考停止です。何か理由があって長期金利の方が高くなっています。

長期金利が短期金利より高くなる要因は複数ありますが、特に大きな影響を与えるのが期待インフレ率です。

なぜなら、最低でもインフレ率相当の利息がないと実質的に損失が出るからです。年率5%で運用できても、物価が7%上昇したら実質的には▲2%(5%-7%)ですよね。

名目リターンがゼロでも物価が3%下落すれば実質リターンは+3%です。だから、デフレだった日本では銀行預金でも問題なかったと言われることがあります(別にデフレだからって預金が正しいとは思わないけどね・・)。

長期金利は将来の期待インフレ率を織り込んでいます。特に米国債は信用度が高いので、長期になったからって信用リスクプレミアムはそれほど乗っかりません。長期の米国債利回りは期待インフレ率によって左右される面が強いと考えています。

長期金利が高いということは、投資家が想定する期待インフレ率が高いことを意味します。

長期金利が低いということは、投資家が想定する期待インフレ率が低いことを意味します。

 

現在はどうでしょうか?

再掲ですが
2年物米国債利回り:1.5%
10年物米国債利回り:2.4%
です。

2年物と10年物の差は0.9%しかありません。長期金利は低い水準にあると言えます。つまり、マーケットは米国のインフレ率がそれほど高まらないと予想しているということです。

米国では景気拡大の恩恵もあって失業率は歴史的な低水準(9月雇用統計で4.2%)となっています。失業率が下がると賃金が高騰して物価も上昇すると考えるのが一般的です。実際に賃金は上昇傾向にあります。しかし、肝心の物価はあまり上昇していません。

労働市場が逼迫して賃金も上昇しているのになぜか物価が上がらない。FRBイエレン議長はこれを「謎」だと言っています。

イエレンさん正直で気持ちがいいですね。イエレン氏のFRB議長留任を望みます。それが株式投資家にとってはベストな人事です。すみません、余談でした。

謎なんですよ、謎。世界金融のドンもなぜインフレが低迷しているか謎なわけです。イエレン議長で「謎」ならば、世界の投資家たちも「謎」なわけです。

それでも国債マーケットでは日々取引されて国債の価格(国債利回り)が決定されています。みんな暗中模索で取引していることと推測します。

ただマーケットは一つの答えを出しています。それはインフレ率は当分低迷が続くという答えです。これが今のマーケットの意思です。

 

期待インフレ率は低いです。少なくともマーケットはそう判断しています。だから長期金利は低いです。

期待インフレ率が低い、つまり物価が上昇しないということは株式の名目リターンが低くても問題ないですよね。インフレ率がもし1%なら名目リターンが8%でも7%の実質リターンを確保できます。

(期待)インフレ率が低くければ低いほど、株式のバリュエーションが高くても正当化されます。なぜなら、株式のバリュエーションは名目リターンを示唆するだけだからです。

大事なのは実質リターンです。

実質リターン=名目リターン - インフレ率

インフレ率が低ければ、名目リターンが低くても実質リターンは高くなる可能性があります。

 

冒頭のバフェットの言葉を載せます。

米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ。

ウォーレン・バフェット

「株価は金利と比較すれば割安」の意味がより実感を持って理解できますでしょうか?

金利が低い(=期待インフレ率が低い)ならば、株式の名目リターンが低くても(=PERが高くても)実質リターンは取れるからバブルとは言えない。バフェットはそう言っているわけです。

 

割高と言われても、地道に米国株投資を続けましょう

米国株は割高だと言われ続けてここまで来ました。「もうそろそろリセッションだ」と皆言いますが、ちょっとした調整局面はあったものの米国株価はリーマンショック以降一貫して上昇を続けています。

S&P500の予想PERは18倍もあり歴史的に見ても高水準です。でも、低金利がその高バリュエーションをサポートしています。金利が低いならば(=期待インフレ率が低いならば)、高いPERに基づく低い名目リターンだったとしても実質リターンはそれなりに確保されます。

「金利が低いから高い株価も妥当だ」という意見を聞くと何だか言い訳のように聞こえる時ありませんか?言い訳という語弊がありますが、何と言うか、、こじ付けみたいな。。

でも、これは言い訳でもこじ付けでも何でもありません。金利が低くて将来の物価上昇率が低いならば、株式の名目リターンが低くても問題ありません。大事なのは物価考慮後の購買力を維持・増加させることですから。

感情的にはとにかく目先の名目リターンが欲しい気持ちはわかります。やはり、保有する銘柄の株価がグングン上昇するのは気持ちいいもんですよね。でも、同じペースで物価もグングン上昇してしまったら意味はありませんから。

今は日米ともに低インフレが常態化していますけど、この環境を当然と思うべきではありません。米国では1990年前後は年率5%ほどのインフレ率でしたし、リーマンショック直前も3%を超えるインフレ率でした。

今の低インフレが続くならば、株式のバリュエーションが多少高くとも実質リターンは確保されるので問題ありません。むしろ、名目リターンが低くなる分税金が小さくなりお得なくらいです。

 

これで3回目ですが冒頭のバフェットの言葉を載せます。

米国株はバブルの領域にない。金利と比較すればまだ割安な方だ。

ウォーレン・バフェット

割高だと言われようとも、株式市場から一時退避することなく我慢強く市場に居続けることを推奨します。

繰り返しで恐縮ですが、バリュエーションが高い以上目先のキャピタルゲインは期待しにくい環境です。でもそれでも問題ないわけです。期待インフレ率が低いからです。

金利が低いとなぜ株価が割高でも問題ないのか、それをきちんと理解できていた方が自信を持って株式投資を続けられると思います。低金利の意味を理解して地道に米国株投資を続けましょう。

リスク資本を提供し続ける人は必ず報われるでしょう。