米国ではCEO報酬として現金報酬より株式報酬が主流です。株式報酬とはストックオプションなど、経営している企業の株価に連動する報酬のことです。

要は株価が上がれば経営者報酬も上がるということ。株価が上がれば株主もハッピー、経営者もハッピー。ストックオプションを利用することで、株主と経営者とが共通の利害を持って、同じ方向を向いて一致団結できると言われます。

確かにそれは事実です。すべて現金報酬とするよりも一部を株式報酬とした方が、経営者は会社の価値(株主価値)を上げるために頑張ろう!って思います。

ただストックオプションも完璧ではないです。ストックオプションなどの株式報酬は、株価が上がれば経営手腕も優れているという前提があります。株価が100から150に上昇したということは、会社の価値は50%上がったということ。そして、それはすべて経営者の優れた判断の賜物である。こういう発想があります。

これは一見合理的に見えて、実際はかなり非合理的な可能性があります。なぜなら、一時的な株価変動なんてマーケットの感情や、景気サイクル次第で上にも下にも大きく動くからです。

相場がバブル状態になって株価が高騰したとして、それも経営者の成果として認めるべきなのでしょうか。逆にしっかり経営していたけど、リーマンショックのような金融危機で株価が暴落してしまったら、それは経営者の失態と言えるのでしょうか。

といった弊害がストックオプションにはあります。株主の利益は、株価では完全には測れません。長期なら株式市場は計量器になりますが、米CEOの在籍期間は近年短縮化傾向にあります。WSJによると中央値は5年未満。

自分がストックオプションの権利を行使する瞬間に株価が高騰するように、好材料をうまく発表する可能性もゼロとは言えません。経営者の倫理観を信じたい気持ちもありますが、やはり株主として疑う気持ちも大切だと思います。その健全な疑いこそがコーポレートガバナンスの基盤だと思います。

株主の利益とは企業の利益です。株価ではなく利益に連動する報酬にすればいいんじゃないか。赤字なら報酬半減、利益が2倍になったら報酬も2倍とか。

いや、会計上の利益に連動する報酬も使い勝手が良いとは言えません。会計上の利益なんて多少は操作できます(減損の先送りなど)。自分の任期期間中に意図的に利益を良く見せようというインセンティブが働き、粉飾決算の温床になるかもしれません。

株価連動型の報酬は現金報酬より優れていると思われがちですが、決して完璧なものではありません。株価という投資家心理が多分に影響している指標を物差しに報酬を決めるのは、それほど合理的とは言えません。あくまで一つの落とし所でしかありません。

結局、経営者を監視する完璧な仕組みもなければ、経営者と株主の利害が完全に一致する報酬制度も存在しません。100%を求めるのは無理です。投資家は経営者を信じてお金を預ける他ありません。盲目的に信じるのではなく、健全な疑念も抱きつつ。

経営者がどうお金を使っているのか、個人株主が、ましてや日本人株主が知る由はありません。決算をしっかりウォッチする他ないです。投資判断の中で、「経営者が誰か」という点はもっとも難しい要素だと思います。んなのわからんってのが正直なところ。

バカでも経営できる企業を探しなさい。いつか必ずそういう人間が経営者になるのだから

ウォーレン・バフェット

このバフェットの言葉が一番実務的かなって思います。バカでも経営できる企業なんて存在しませんが、まあ相対的にビジネスが分かりやすくて、過去の遺産の食っているような企業に投資しろってことですかね。バフェットが言いたいことは。