日本では長らくデフレが続いてきました。少なくとも私は生まれて物心が付いたころからインフレを実感したことはなく、デフレしか感じてきませんでした。

コンビニのお菓子やおにぎり、パンの値段は小学生の頃から変わっていないはず。

松屋や吉野屋など安い牛丼チェーンやユニクロなど全体的な衣食住の価格は下落していると感じています。

2013年から物価上昇率2%を目指して、黒田日銀総裁が異次元金融緩和を実施しました。

株価や為替には確かに影響し株式時価は上昇しましたが、物価上昇はやはり感じられません。

日本でインフレが起きていないことは、日本で生活している我々が一番よく理解しているはずです。今後インフレが起きそうな気さえしません。

日銀は金融政策の「総括的な検証」で2%のインフレ目標をなかなか達成できない理由を検証すると言っています。
日銀は引き続きマイルドのインフレを引き起こそうとあらゆる手段を尽くすのでしょう。

なぜマイルドなインフレが経済に好影響なのか?

それは将来物の値段が上がる(=将来通貨の価値が下がる)という状態にしたほうが、人々が今現金を保有しておくよりも使ったほうが得だと考えて消費行動が活発になり経済にマネーが循環するからです。

日本はインフレとは程遠い状況ですが、投資家はいつインフレ経済になってもおかしくないと頭の片隅で想定しておくべきです。

インフレは我々の資産運用にどう影響するのか?

 インフレ 株と債券への影響

債券には悪影響

先ず、債券にはインフレは悪影響を与えます。

なぜなら債券は確定利付商品であり、市中金利が上昇したら債券価格は下落するからです。インフレが起こると金利も上昇するので、債券には悪影響です。

感覚的にも、将来のキャッシュフローが確定しているのに物価が上昇したら実質所得が減少するというのは理解し易いですよね。

 

株式はインフレに強いが…

では、株式はどうなのか?

株式は長期ではインフレに強いです。

長期ではインフレ率に応じて株価も上昇します。

なぜなら、株式とはBS面で言えば投資先企業の固定資産や無形資産などの資産を実質的に保有することになるのだから、インフレが起きて物の値段が上がればそれに応じてそれらの資産価値も増大することになるからです。

PL面で言えば、インフレを価格にどれほど転嫁できるのかという個別企業の交渉力次第でインフレ吸収力に差はあるものの、基本的にはインフレに応じて販売価格も上昇して売上・利益が増加することになるからです。

株式は長期ではインフレに負けない。これは長期投資家には大変心強い事実です。

ただ、一つ注意すべきことあります。

それは税金(配当所得税とキャピタルゲイン税)です。

インフレで物価が上昇しても、それに応じて株式リターンも増大して購買力が維持されるのは事実なのですが、株式のリターンが上昇するということはその分税金を払う必要があるということです。

株で儲かったんだから税金を払って当然と思いますか?

本当に儲かっていれば税金を払うのも合理的なのですが、インフレに応じて利益が増大した分にまで税金を払うことは果たして合理的なのでしょうか?

例えば、A株を1,000万円保有しているとします。急なインフレが起こり物価が30%上昇したとします。100万円で買えた車が130万円に値上がっています。100円のおにぎりが130円に値上がっています。

でも大丈夫!?、あなたの株式の株価もインフレに応じて上昇して株式価値は1,300万円なりました。300万円のキャピタルゲインを得ることができました。配当も増配されていることでしょう。

でもね、売却すればこのキャピタルゲイン300万円には税金がかかるのですよ。

これ当然と思いますか?

確かに300万円利益が出ていることは間違いない。でも、これはインフレで物価が上昇した分の見合いとして株価が上がっているに過ぎません。
名目リターンは上昇していても、実質リターン(名目リターン - 物価上昇)はゼロなのです。

300万円確かに儲かったけど、その分物価も上昇しているんだから実質的な購買力は変わっていないのです。

いや、むしろ購買力は減少してます。なぜなら、キャピタルゲインの300万円には税金が20%掛かるからです。

市中物価は30%上昇しているのに、あなたの株式資産は税引後では24%しか増えないのです。

インフレは税引きの株式実質リターンには無関係ですが、税引きの株式実質リターンには悪影響なのです。

そしてこれは対策のしようがありません。

国家がインフレに見合う株式利益は非課税にするという税制でも作ってくれない限り不可避です。

敢えて言うならなるべく頻繁な売買は控えて、キャピタルゲイン税を国家にむしり取られる機会を最小化することです。それでもインフレ基調が続くのであれば、この無駄な税金支払いは免れません。

株式投資家はマイルドなインフレによる景気拡大・企業収益増大を願いたい反面、過度なインフレにより税引き後実質リターンが低下してしまう事態にならないことも願いたいところです。

これはもう我々投資家のコントロール外のことなので、どうしようもありませんが。

黒田日銀総裁の手腕が、我々株式投資家の税引き後リターンの良し悪しを大きく左右するということです。

ガンバレ、黒田日銀!!(他力本願)