日本は3月決算企業が多いです。3月決算企業にとって、年度末決算は4月から始まってそこから6月の半ば辺りまでぶっ通しで忙しいことが多いです。

決算の終わりを告げるイベントが2つあります。
・有価証券報告書の提出
・株主総会

この2つが無事終わったところで、「は~今年も1年終わったわ~」ってなります。経理部的には。
と思ってる内に、7月になって第1四半期決算が始まってしまうんですけどね。

株主総会は役員の選任や、配当の決議について株主の承認を得る場です。普通は年に1回あります。3月決算企業であれば6月に実施する事が多いです。

株主総会では質疑応答の時間が設けられていて、株主さんが自由に経営陣に質問することができます。それは当然の権利です。株主は自分のお金を会社の経営陣に預けている立場です。そのお金がちゃんと運用されているか、また長期的な会社のビジョンはどうなのかとか聞く権利があります。

雑談は時間の無駄なので常識的にダメですが、基本的に何を質問してもOKです。

株主総会って経理部ではなく、総務部の管轄です。株主総会は総務部にとって最大のイベント事です。少なくとも私の会社では。

私は総務ではなく経理所属なのですが、お手伝いとして株主総会に駆り出されます。

数年前は、開催場所最寄りの駅前で「会場はこちらです→」というプラカードを持って、2時間くらい突っ立っていました。しかも雨の中、ひとりで。あれは辛かった。バイトかと思った。

最近はお手伝い役もちょっとはマシになって、会場の設営とかマイクの調整係をやることが多いです。普段社内でPCカタカタやってばかりなので、たまにこういうイベントあると気分転換になっていいです。

で、先日の株主総会ではマイク係として参加していたので、実際の株主総会の様子を生で体験できました。これで2回目ですが。

そこで株主さんの質問をすべて聞くことができました。

さすがの経営陣もみんな慣れている感じでスムーズに質問を捌いていきます。まあうちの会社は結構業績がいいので、あまり株主から厳しい突っ込みはこないってのもありますが。無論、東芝みたいな総会の雰囲気にはなりません。

 

社外取締役のぶっちゃけ発言

そんな穏やかな空気で進んでいく質疑応答の中、一人の株主さん(おじいちゃん)が結構突っ込んだ質問をされました。

「社外取締役のお三方にお伺いいたします。あなた方は今年1年間、取締役会で何か建設的な提案をしてくれましたか?どんな仕事をされましたのか?具体的に教えて下さい。」

おお、いい質問やな~。

この株主さんからの質問に対して、社外取締役の一人がこう回答してました。

「そうですね~、今年は特にまだ何もやってませんね。これから色々と提案していこうと思います。」

wwww、

マジでこの回答ぶったまげた。
正直に言い過ぎでしょ。

「今年はまだ何もやってません」って、今年のあなたの社外取締役としての報酬はどうなんの?って率直に思いましたが。

こんな回答をしてもなぜか会場の空気は普通で、株主さんも「そうですか、よろしくお願いしますよ。」みたいな感じで質疑応答は終わりました。

え、いいの?
もっと突っ込まないの?
って思いましたけど・・。

優しい株主さんだったから良かったけど、厳しい株主だったら結構危うい回答だったと思います。

 

いや~、別に社外取締役を擁護するつもりはないのですが、社外取締役なんてこんなもんだろうなって正直思います。

日本でもコーポレートガバナンスを高めて株主重視の経営を推進しようと政府は息巻いています。

コーポレートガバナンスコードでは、社外取締役の積極的な登用を促しています。具体的には、少なくとも2名以上の独立社外取締役の選任を求めています。

社外取締役ってそのままですが、社外から採用した取締役ですね。内部昇進ではない全くの外部からのメンバーです。例えば、ソフトバンクの社外取締役には、ファーストリテイリングの柳井社長や日本電産の永守氏がいます。

社外取締役には、必ずしもその会社のビジネスについての詳細な専門知識がなくてもよいと言われます。トヨタ自動車の社外取締役になるからって、別に自動車業界出身の人を選任する必要はありません。

なぜなら、取締役は業務上の意思決定をする立場ではないからです。取締役とは株主に変わって経営陣を取り締まる人です。
経営陣を監視する人です。

経営者が株主利益に反するような行動をしていないか、監視するのが取締役の役割です。

私たちは株主ですが、会社に口出しなんてできないですよね。持ち株比率が低すぎて、とても一人では経営陣に文句を言ったり提言したりできません。

アクティビスト(物言う株主)として経営に口出しするファンドがありますが、あれは相応の株を取得していることが前提です。例えば、最近P&Gの委任状争奪戦に乗り出したトライアンはP&G株を33億ドル保有しています。

少数の小口投資家が多い一般的な世間の大企業では、取締役をもってしても経営陣の監視がうまく機能しないケースが往々にしてあります。取締役メンバーも内部昇進が多いと、なかなか社長に物申すことができないのはなんとなく理解できると思います。

そこで、独立第3者の社外取締役を活用しようという議論が活発になりました。
バフェットも社外取締役の役割は大切だと言っています。

でもね~、やっぱり難しいですよ。
事業にそんなに詳しくないにもかかわらず、経営陣のお金の使い方を監視してそれにチャチャを入れるなんて難しことだと感覚的に思いませんか?

「社長、私はそのM&Aには反対です!! そんな高額な買収金額では株価は暴落しますよ!」
な~んて、社長に強く言える社外取締役がいると思いますか?

ソフトバンクみたいに、柳井氏・永守氏クラスを登用するなら社外取締役もある程度機能しそうですがね。

社外取締役の存在が株主の財産を守るコーポレートガバナンスとして、重要な役割を担っていることは理解しています。

しかし一方で、社外取締役とは単なる象徴的な存在でしかない面もまた事実だと思います。

取り敢えず、社外取締役がいることを投資家にアピールする。
政府にもアピールする。
そんな役割のためだけに社外取締役を置いている会社が存在するのも仕方ないと思います。

でもね、、大人の世界は「本音と建前」ですから。

せめて建前としては、社外取締役として経営陣の監視をしっかりやっていると言ってもらわないと。
株主さんの前で堂々と「今年はまだ何もやってません」って言うのはさすがにダメでしょ・・。

あ~、うちはなんて平和な会社なんだろう。

私ね、今勤めている会社すごく好きなんですよね。
働きやすい環境なんです。
変な派閥とかなくて社内の風通しはすごくいいです。

たまに会社辞めちゃって福岡に帰りたいなって衝動的に思うことがあるんですが、今の会社の居心地が良すぎて結局行動には出れません。

 

 

社外取締役より配当に期待

コーポレートガバナンスって簡単に言いますけど難しいですよ。これだけ所有と経営が分離している現代において、経営陣に株主のお金をすべて株主利益に適うように使ってもらうのは難しいことです。

もちろん大企業のCEOになるような人は経営の能力だけでなく、人格的にも素晴らしい人ばかりだと思います。でも誰だって感情ある人間ですから。せっかくCEOになったんだから、色々やってみたいと思うでしょうね。

そんな経営陣を見張るにはどうすればいいのでしょうかね。

バークシャー・ハサウェイみたいに、経営者と大株主(バフェット)が一致しているケースはそんなに問題ないです。バフェットは株主利益を無駄にするようなお金の使い方はしないと公言していますが、それはもちろんバフェットの倫理観もあるでしょうが、自分自身がバークシャーの大株主だという立場的な側面もあるはずです。

大株主がいない一般的な大企業の場合、どれだけ組織構造を工夫しても経営陣の監視には限界があると思います。

だからこそ、配当が重要だと思います。
しっかり現ナマを株主に差し出すということは、これ以上ないコーポレートガバナンスです。

なぜなら、お金を無駄に使ってしまったら株主にお金を渡すことはできないからです。増配できないからです。米国大企業の経営陣は増配するよう、株主からの、いや世間からの強い圧力を感じているはずです。

減配は経営失敗の証だと言えます。もちろんリーマンショックのような外部環境が原因の場合は仕方ない面もありますがね。
でも、それすら乗り越えて30年、50年と増配を続けているP&Gなどの企業の収益力は抜群だと言えるでしょう。

配当性向が高過ぎることは、一般的は増配余力が乏しいという理由で嫌がられますよね。でも私は、配当性向が高い企業は利益の大半を株主に返すことで、経営者の資金的な”遊びの余地”が少なくなるのでむしろ良いことなのではと思うときがあります。

コカ・コーラ社(KO)の配当性向なんて80%近くありますよ。

 

長期投資では企業成長よりもコーポレートガバナンスを重視すべきってのが持論です。

価値観は人それぞれ。長期投資の成果なんてどうせ私たちがおじいちゃんおばあちゃんになってからじゃないとわかりません。グロース株、バリュー株、色んな株式投資法がありますしどれが絶対に正しいとかないです。

ただ、私は配当を重視する投資法が長期では絶対に高いリターンをもたらすと信じています。
それを客観的に証明しろなんて言わても無理です、ごめんなさい。

長期株式投資では配当を最大化することが大事であり、そのためには株主の財産をしっかり守って保守的な経営をしてくれる会社にお金を預けた方が良さそうだな、という自分の直感です。

私は直感で株式投資をやっています。もちろん「株式投資の未来」を読んで影響されたりしてますが、最後は自分の直感と信念です。それ以外にありません。どうせ未来はわからないですから。

一貫して増え続ける配当こそ株主の長期的利益を守りかつ最大限に増やしてくれるものと信じて、これからも地道に株式投資を続けます。