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利益を割り引くべきか配当を割り引くべきか、それが問題だ

   

株式の価値とは将来の配当。利益と配当は短期的には一致しない。

金融商品の価値とは、その金融商品が将来に生み出すキャッシュフローの割引現在価値の合計です。

これはあらゆる金融商品の価値を説明できる理論です。いや、所謂金融商品だけでなく、何であれ将来キャッシュを生み出す媒体の価値を説明することができます。

賃貸マンションの経済的価値は、将来の賃貸収入の割引現在価値です。もちろん、将来の賃貸収入をどれくらいで見積もるのか、割引率をどうするかという問題はありますが、賃貸マンションの経済的価値を求めるのは簡単です。将来の賃貸収入、割引率という二つのパラメーターが決まればOKです。

株式の価値も、株式が生む将来キャッシュフローの割引現在価値ということになります。株式がもたらすキャッシュフローとは配当ですよね。配当以外にありません。株主は配当をもらうことで投資利益を確定できます。

一方で、配当ではなく企業の利益を割り引くという発想もあります。配当とは過去の利益が原資です(タコ配当じゃなければ)。であれば配当じゃなくって利益そのものを割り引いてもいいじゃないかという話が出てきます。利益は会計処理で歪むので、ここでは利益=営業CFということにしましょう。配当ではなく、企業が将来稼ぐ営業CFを割り引くことでも、株式の価値は算定できるのではという発想です。
(営業CFではなくフリーCFが一般的かもしれませんが、ここでは営業CFで議論を進めます。)

利益(営業CF)を割り引くべきか、それとも配当を割り引くべきか。
どちらが正しいのでしょうか?

それとも、

 

結論から言えば、やっぱり配当を割り引くのがより正しいです。

なぜなら、最初の繰り返しですが株式が直接的に投資家にもたらすキャッシュフローは配当だからです。企業が稼いだ利益、営業CFは確かに株主に帰属するお金かもしれませんが、それが本当に株主の利益になるかどうかは未確定です。

100の配当は間違いなく株主の利益になりますが、100の営業CFは株主の利益になるでしょうか?

営業CF100のうち30が配当に回り70が再投資されるとします。そうすると株主がその年に確定できる利益は30だけです。残りの70は決して消えるわけじゃなく再投資されています。いつかその投資が実を結んで大きな利益となり、その利益を原資として配当が払われることになります。投資が失敗してお金が消えちゃうリスクも当然あります。

70の投資が成功するか失敗するかは横に置いておくとして、とりあえず100の利益(営業CF)のうち再投資に回る70が株主にとってのキャッシュインにならないのは確実なわけです。だから、やっぱり企業の営業CFを割り引くのは厳密じゃないです。

企業が清算するまでの全体で見れば、企業が稼ぐキャッシュフロー=株式のキャッシュフロー(配当)です。でも各年で見れば、企業のキャッシュフロー株式のキャッシュフロー(配当)です。

配当に回さず利益を再投資する上での最大のリスクは、投資に失敗して利益が泡と消えることです。1年目に100のキャッシュを獲得して、2年目にうち70をM&A資金として使ったけど統合がうまくいかず70の資金が40に減ってしまうかもしれません。逆に、統合がうまくいって70の資金が90に増えるかもしれません。いずれにしても、1年目の100の利益を割り引いて株価を求めるのは不適切ということになります。

結局、利益が再投資に回っている間は株主にとってのキャッシュフローはゼロということになります。ちょっと焦らされている感じですね。「配当はまだだよ、もうちょっと待ってね。利益は投資に回して将来デッカイ配当をお返しするから今は我慢してね。」って感じです。

配当の原資は利益であって利益なくして配当はないわけですが、そうは言っても短期的に見れば利益と配当は全く一致しないわけです。株式の価値は株式が将来生み出す配当の現在価値である以上、企業の将来利益で株式の理論価値を考えるのは厳密性に欠けます。

 

現実的には配当ではなく利益に着目して株式の価値を考えることは普通。それでも、常に配当をイメージしよう。頭の片隅でいいので。

とは言え、現実問題としては将来の配当をベースに理論株価を考えるは難しいケースがあります。将来の配当なんてとてもじゃないけど予測できない時があります。将来の配当を割り引くのが正しいっていう理論は分かるけど、その理論通りに計算するための情報が不足しているのが普通です。現実の経営でもそうですが、情報が常に十分あるなんてことはむしろ稀なことです。限りある情報の中で最善を尽くすしかありません。

将来配当の予測の方が難しい理由として、配当を出すペースは経営者に事実上一任されており、どれくらいのペースで増配するかは予測できないという点があります。配当は株主総会決議事項ではありますが、事実上は経営者に一任されています。

特に難しいのが無配企業です。アマゾンのような無配企業は今ガンガン利益が出て成長していても、それが将来の配当に繋がるか不確実性が高いです。なぜなら、無配で今の利益が遠い将来に繰り延べられるからです。もちろん無駄に現金として繰り延べられるのではなく、ジェフ・ベゾスCEOの判断で良質な投資案件に利益が回されます。

無配企業は短中期的には利益と配当が全く整合しません。そりゃ無配だから当然なんですがね。利益100でも配当はゼロです。アマゾンが今年50億ドルの利益を上げても配当はゼロです。そりゃズレます。

そんなズレがあるとしても、やっぱりアマゾン株の価値はアマゾンの将来配当なんです。でも、アマゾンの将来配当を予測するなんて無理ゲーです。いつから配当を出すかなんて全く分からないです。どれくらいの規模で配当を出し始めるかも分かりません。

だから、現実問題としてアマゾン株の理論価値を出すときに配当というパラメーターを持ち込むことはできません。どうしても今のアマゾンの利益(キャッシュフロー)をベースに株価が値付けされることになると思います。

 

何度も何度もしつこいようですみませんが、株式の価値とは将来の配当です。配当は元をたどれば税引き後利益です。だから、利益=配当とも言えます。ですが、短中期的には利益≠配当です。利益は企業にとってのキャッシュフローであって、株主にとってのキャッシュフローではありません。株主にとってのキャッシュフローはあくまでも配当です。

利益は最終的に配当にならないと株主にとって意味はありません。

グーグルがどれだけアドワーズ広告事業でボロ儲けしても、その利益をクラウド事業への投資で溶かしてしまえば株主は利益を得ることができません。広告ビジネスで稼いだ利益が最終的にきちんと株主の財布に入るかどうかが重要です。

「利益を割り引くべきか配当を割り引くべきか」と聞かれれば、「配当を割り引くべき」と答えます。しかし、実務的には配当ではなく利益を予測する方が一般的です。日経の投資財務欄でも、上場企業の将来の利益に関する記事が大半で将来の配当がどうなるかという点にはあまり焦点が当たりません。アマゾンやネットフリックスなど無配の企業については、今現在無配なのだから配当に関する情報が出てこないのは当然です。

実務的には企業の将来の”利益”を予測して株式の価値を考えることは普通です。

でも、頭の片隅には常に配当をイメージしておきましょう。いくら莫大な利益が出てもそれが配当に変わらなければ株主に経済的な恩恵はありません。利益がガンガン出ている絶好調な企業は、概して採算の悪い投資にも飛びつきがちなので注意が必要です。

利益がたくさん出てても安心してはいけません。それが配当になってあなたの証券口座に帰ってくるまで安心はできません。常に将来の配当がどうなるかイメージすることが大切だと思います。

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