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企業の財務安全性を見極める2つの方法

      2018/12/19

債務が一切なければ倒産しません。倒産しなければ、株券が紙切れになることもなく投資家は安心して眠れます。

しかし、それは現実的ではありません。借金した方がお得な低金利環境が続いています(最近は少しずつ金利が上昇してきたけど)。実質無借金の会社もありますが、仕入債務なども含めれば負債なしで事業運営することは困難です。どんな企業であれ、バランスシートには負債があるものです。

どれだけ儲かっているかという収益性に目が行きがちですが、資金繰りが安全かどうかの検証も、長期的なお金の預け先を選ぶ上では大切です。

財務の安全性を確認する時のメジャーな指標として自己資本比率があります。自己資本比率とは、総資本のうちどの程度を自己資本でまかなっているかを示した指標です。

自己資本比率=自己資本 / 総資本(総資産)

総資産100で自己資本30なら自己資本比率は30%です。

ですが財務の健全性を測る指標として、自己資本比率は実はあまり役に立たないと思っています。私はあまり注目してません。

では、どの指標を見ればいいのか?

たとえば、以下の二つの指標なんかは財務安全性を見抜くうえで有用です。

①インタレスト・カバレッジ・レシオ
②自己資本比率(時価純資産ベース)

①インタレスト・カバレッジ・レシオとは

インタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)とは、借入利息の何倍の営業利益(営業CF)を稼いでいるかを示した指標です。たとえば、支払利息が100で営業利益(営業CF)が1,200ならICRは12倍です。

ICR=営業利益(営業CF) / 支払利息  

ICRが10倍を超えると優良だなと感じます。

②自己資本比率(時価純資産ベース)とは

財務安全性を見る上で自己資本比率は役に立たないと言いましたが、純資産を時価評価した同比率は使えると思います。

純資産の時価評価額とは株式時価総額のことです。一時アップルの株式時価総額が1兆ドルを超えたとニュースになりましたね。その金額です。「株価×発行済み株式総数」が株式時価総額。

純資産(簿価)を株式時価総額つまり純資産(時価)に置き換えた上で自己資本比率を算定することで、通常の自己資本比率からは見えてこない会社の実態が見えてきます。

マイクロソフトを例に

具体的に計算してみましょう、ってことでマイクロソフト(MSFT)を例にします。S&P格付けでAAAを取得しています。きっとICRも自己資本比率(時価純資産ベース)も素晴らしいに違いありません。

まずICRの方から。

2018年6月期のマイクロソフトの年次報告書によれば、支払利息(Interest Expense)の金額は$2,733M(MはMillionのこと)です。営業キャッシュフローの金額は$43,884M。

つまり、マイクロソフトのICRは
2,733(利息)/ 43,884(営業CF)=16.1倍
となります。

優良企業の目安となる10倍を余裕で超えています。1年間の営業CFで16年分の利息を払うことができます。

次に自己資本比率(時価純資産ベース)

マイクロソフトの株式時価総額は$813,061Mで、現在アップルを抜いてNY市場トップです。9月末時点の負債総額は$171,652M。

つまり、自己資本比率(時価純資産ベース)は、
813,061 / (813,061+171,652)=83%
となります。

自己資本比率83%は高いです。
総資本の8割以上が自己資本です。

マイクロソフトはこれまで低金利を利用して積極的に借金をし、そのお金で自社株を買い戻してきました。簿価ベースの自己資本比率はかつて50%超あったのが、今では30%台前半です。

しかし、それはあくまで純資産を簿価で見た場合の自己資本比率に過ぎません。最初に言いましたが、簿価ベースの自己資本比率は財務安全性を見る上であまり参考になりません。

純資産を時価に直して自己資本比率を計算すると83%もあるわけです。つまり、借金をたくさん増やしてきたけど、マイクロソフトのバランスシートは健全ということです。

ゼネラルミルズを例に

もう1社見ます。今度はS&P格付けがあまり高くない会社にしたいな。すみませんが自分の保有銘柄から選びます。ゼネラルミルズ(GIS)にしよう。

GISのS&P格付はBBBでジャンク債一歩手前です。最近ペットフード大手のブルーバッファローを買収してより一層負債が増えています。

先ずICRから、同じように見ていきます。

2018年5月期の(GISは5月決算)支払利息は$385Mで営業CFは$2,841M。

ICRは
385(利息)/ 2,841(営業CF)=7.4倍
となりました。

決して低い数字ではありませんが、目安の10倍には届きませんでした。

次に自己資本比率(時価純資産ベース)を計算します。

GISの株式時価総額は$22,287Mです。負債総額は直近決算の8月末時点で$24,330Mです。

自己資本比率(時価純資産ベース)は、
22,287/ (22,287+24,330)=48%
となります。

ちなみに簿価ベースの自己資本比率は20%ほど。純資産を時価にすると数字は上がりますが、それでも50%を切っています。マイクロソフトの83%と比べると見劣りしますね。

結果まとめ

  ICR 自己資本比率(時価純資産)
マイクロソフト 16.1倍 83%
ゼネラルミルズ 7.4倍 48%

財務(BS)より事業(PL)が重要ということ

財務安全性を確認する時に使える具体的な指標を2つ紹介しました。

じゃあ、この2つの指標さえ見ておけばいいのか?って言われたらそういうわけでもないです。他にも色んな見方があります。ICRを計算するにしても、営業CFじゃなくてフリーCF使うとか。

結局、本質は何かと言えば、企業はBSの資産から債務(利息)を返済するのではなく、PLの利益から返済するということです。だから、BSの世界で完結する簿価ベースの自己資本比率を見ても参考になりません。

本業で稼いだ営業CFを原資にして、利息や元本を銀行に返済します。にもかかわらず、PL、キャッシュフローの概念を排除して、完全にBSの世界だけで完結させようとすると判断を誤ります。

ICRは分かりやすい。計算式の分子が営業CF(または営業利益)ですから、もろにPL、キャッシュフローをベースに利息負担の大きさを判断しています。

時価純資産で計算した自己資本比率も、実はPLの概念が混ざり込んでいます。それは、純資産を時価にするという点です。時価純資産とは「株価×発行済み株式総数」でしたね。株価を使って純資産を時価評価しています。

株価とは将来の利益(配当)を予想してマーケットで値付けされた金額です。その株価を使って純資産を時価換算するということは、純資産というBS項目にPLの概念を取り入れることを意味します。

自己資本比率(”簿価”純資産ベース)はBS指標ですが、自己資本比率(”時価”純資産ベース)はどちらかと言うとPL指標に近いです。ぱっと見はBS指標ですが。

ICRと自己資本比率(時価純資産)という二つの指標を紹介しましたが、言いたいことはこの2つの指標の計算方法ではありません。PLないしキャッシュフロー計算書を見ないと財務安全性なんてわかりっこない。BSだけでは判断できないよってことが言いたいことです。

“財務”安全性とは言いますけど、見るべきは財務(BS)ではなく事業(PL)ということ。貯金が3千万円ある人より、年収1千万円の人の方が債券マーケットの評価は高くなります。

 - 投資理論・哲学