金融に関する記憶は極端に短い。

ジョン・K・ガルブレイス

このように言われますが、どうも現代はそうでもない気がしてならないです。金融に関する嫌な記憶は忘れ去られることなく、投資家の行き過ぎた行動を制御する役割を果たしそうな気がします。

なぜなら、インターネットが普及しているからです。「リーマンショックから10年経ったぞ。次のリセッションに気を付けろ!」だの、「リーマンショック以来初めての逆イールドが起こったぞ。投資家は用心しろ!」だの、WSJやブルームバーグなど各メディアがリマインドしてくれます。そんなありがたい環境の元では、金融危機の記憶はそう簡単には消えないのかもしれません。

ガルブレイスは具体的に、20年が金融の記憶が消える目安と言っています(20年が極端に短いとは思わないけど)。サブプライムローン問題に端を発する金融危機からまだ10年。20年は経ってない。しかも、歴史的に見ても大規模な流動性危機だったわけだから、現時点で人々の記憶に残っているのは当然か。

でもあと10年後も、やっぱり「リーマンショックから20年経ったぞ。当時を振り返る・・・。」というニュースがあちこちで流れて、マーケットに当時の記憶を蘇らせる気がします。

2008年当時、FRBが「最後の買い手」の役割を果たさなければ、銀行システムは本当に崩壊していたと言われます。当時のブッシュ大統領、バーナンキFRB議長、ポールソン財務長官の英断がなければ、世界経済は崩壊していたかもしれません。

そんな当時の危機的状況を皆で共有し合う(反省会みたいな)、そんな機会をインターネットが提供してくれます。ネットは新聞よりも情報量が多いし、動画も流せます。

どんなんだろうか、、そうは言っても、やっぱりどこかで債務は膨れ上がっていつかドッカンと崩壊するものなんだろうか。「歴史は往々にして韻を踏む」というマーク・トウェインの言葉は、これからの金融市場にも通用するのかな。

まあ、答えはわからないです。

ただインターネットによって投資環境が激変したことは、紛れもない事実です。個人投資家が簡単に金融市場にアクセスできるようになりました。以前なら機関投資家がお金を払って買っていたような情報が、個人でも無料で手に入るようになりました。当たり前のように過去の財務データを見れるし(しかもエクセルで色々分析できる)、PERや配当利回りもチェックできます。今、機関投資家がお金を払って得ている情報は、衛星を飛ばして小売店の駐車場の埋まり具合を見るとか、そういうレベルになっています。

金融関連のニュースは往々にして悲観的です。その方がクリックされやすいからです。不安心理を煽った方がカネになるというのはあると思います。

こういった投資家の警戒心を高めるニュースの氾濫は、株式のバーゲンセールの機会を減らしてしまうかもしれません。投資家が慎重になり資産価格が高騰して、それが一気に崩れ落ちるというサイクルのブレ具合は小さくなりそうです。サイクル自体は残ると思いますが。

ただこれが必ずしも、総体として株の期待リターンを下げるとは思わないです。バーゲンセールは減るけれど、常軌を逸した高値になることも少なくなるからです。

サラリーマンがコツコツ株式投資をするには、今は良い時代なんじゃないかな~って思います。