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1兆円規模の買収を発表して株価落ちないか~(ファイナンスのお話をしつつちょっと雑談)

      2019/06/19

ファイザー(PFE)がバイオ医薬のアレイ・バイオファーマを106億ドル(約1.2兆円)で買収するという一報がSeekingAlphaから届きました。2009年に買収したワイスの6兆円には及ばない規模ですが、それでも1兆円とはなかなかのビッグディールですね。まあファイザーは金持ちやからな。

で、僕はこのニュースを聞いて少し身構えました(私はPFE株主)。「ああ今晩のPFEの株価は大きく下がるだろうな~。マイナス5%くらいは覚悟しておこう」って内心思ってました。なんせ60%のプレミアムを払ってますから。法外な割増金ではありませんが、安い買い物ではありません。買収報道がなされると、買収企業の株価は下がることが多いです。

が、しかし、思いのほかファイザーの株価は底堅い。M&Aが発表された昨日6月17日は0.2%ほど株価上昇して取引を終えたくらいです。へ~、意外やな~って思いながら、今日の朝ベッドの中でスマホを眺めていました。

ところで、ちょっと話変わるんですけどね、自社株買いをすると株価が上がることが多いですよね。配当はインカムで、自社株買いはキャピタルゲインで株主に利益を還元すると言われることもあります。

改めて考えてみて欲しいんですけど、なんで自社株買いをすると株価が上がるのでしょうか?

え、、そりゃ発行済み株式数が減って将来のEPS(一株当たり利益)が増えるから株価が上がるんでしょ。

こう思うかもしれません。間違いではありませんが、この発想を素直に受け入れてよいでしょうか?

自社株買いってタダで株数を減らせるわけじゃありません、もちろん。自社株を買い戻す対価として現金を支払っています。会社から現金という財産が流出します。自社株買いに資金を使うということは、その資金を投資に回せば増えたかもしれない将来利益を失うことを意味します。

つまり、自社株買い=将来のEPS上昇とは一概には言えないということです。

では、改めてですが、なぜ自社株買いを発表すると株価が上がるのでしょうか?

それは、現金よりも自社株の方が投資家のリスク認識が低いからです。よりファイナンス的に言うと、割引率が下がって将来利益の現在価値が上昇することで株価が上がるということです。

現金って実はそこそこハイリスクなんです。え、現預金って名目金額が動かないもっともリスクが低い資産では??って思うかもしれません。確かに、時価変動という意味では現金はリスクフリーです。しかし、株主目線で言えば会社が保有している多額の現金はリスクの塊です。なぜなら、経営者がその現金を何に使うか不透明だからです。割高なM&Aに手を出して大損するかもしれません。金があり余ってるからって豪華絢爛な本社ビルを建設するかもしれません。プライベート・ジェットを買い替えるかもしれません。

会社が(経営者が)多額の現金を抱えているというのは、株主にとってリスクです。キャッシュリッチな会社は倒産リスクが低いという点は安心材料ですが、そのキャッシュを経営者がどう使うかわからないという点が不安材料です。

その点、自社株はローリスクです。現金を自社株に変えることで、投資家はほっとします。変なことに金が使われるリスクが消えた、確実に株主利益に貢献することにお金を使ってくれた、よかったよかった一安心、って思います。

自社株も法的に消却するまでは買収対価に使われたり、役員のストックオプション行使の対価に使われたりと再流通のリスクは残ります。しかし、現金に比べたら格段に使途の汎用性は落ちます。現金は基本的に何にでも交換できるでしょ。その利便性がリスクなんです。

さて、買収の話に戻ります。なぜ、買収を発表すると株価が下がることが多いのか。それは現金よりも企業(買収)の方が投資家のリスク認識が高いからです。

投資家は現金にリスクを感じていると先ほど言いました。ですが、企業買収に対しては現金より遥かに高いリスクを感じます。そりゃそうですよね。買収した企業との統合がうまくいかなかったら、ウン千億円ウン兆円の資金が無駄になるわけですから。あと、企業の本源的価値というのは見積もりが難しく買収価額が妥当かどうか見極めるのが難しいという点も、投資家のリスク認識を押し上げます。

ファイザーが106億ドルで買収するアレイ・バイオファーマの2020年の予想売上高はたった3億ドル程度です。買収金額は売上高の30倍以上もあります。当然今後の大きな売上成長を見込んでのことですが、それが首尾よく実現するかはわかりません。M&Aに対して高いリスクを感じるのは当然のことです。

自社の株は現金よりローリスク。
他企業の株(M&A)は現金よりハイリスク。

これが一般論です。なので、自社株買いを発表すると株価が上がることが多いし、買収を発表すると株価が下がることが多いです。割引率(=投資家のリスク認識)とはちょっと抽象的な概念ですが、これが株価が与える影響は甚大です。

こういう一般論があるにもかかわらず、1兆円超の買収を発表したファイザーの株価は横ばいで推移しました。だからって、このM&Aに投資家として安心できるわけではありません。製薬業界の専門的なことはわからないので、ファイザーの経営者にお任せするのみです。ただ単にへ~って思っただけです。こんなデッカイM&A発表して一時的にすら株価が落ちないの珍しいなあと思っただけです。

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