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【無駄にビビるな!】時代遅れな無形資産会計が”見かけの”PERを押し上げている

      2017/05/21

21世紀は、20世紀よりも株式のPERが上昇する傾向にあると言われています。
実際に上昇しています。
PERが上昇するってことは、株式の収益性が落ちるということです。

なぜ、PERが上昇するかと言うと、株式投資を行うことへのハードルが下がっていることが挙げられます。

昔は個人が株式投資するのは大変手間のかかることでした。
証券会社に電話して注文しなくてはなりません。
また、売買コストも今より高かったはずです。

今はネット証券で簡単に低コストで個人が株を買うことができます。

昔は株価をリアルタイムで確認することも無理でしたし、マーケットや企業情報も一部の機関投資家と個人との間では大きな格差がありました。

今は、個人でも機関投資家でも誰でもネットで株価やらバリュエーション指標やら、企業情報を確認することができます。

21世紀になって株式投資のハードルは格段に下がりました。

株式という金融商品に対する投資家のリスク認識が下がることで、株価が割高になりPERが上昇している面があると思います。

「誰でも簡単手軽にネットで株式投資!」みたいなキャッチフレーズがあります。
ネットで低コストで株式投資ができてありがたい限りです。

でも、それはメリットばかりではありません。
みんながみんな簡単に株式投資を始めると、その分株価は上がってしまい株式の収益性が落ちてしまうデメリットもあります。

また、暴落が起きそうにないというのも株式に対する世間の楽観的な態度も、PERの増加を助長させています。
トランプ大統領の政策不透明感からやや株が売り込まれる場面はありますが、2008年のリーマンショックのように流動性が枯渇するような事態は当面は起きる気配がありません。

 

最近のS&P500指数のPERは17倍程度ですが、これは過去から見ると高い水準です。
PER17倍ということは株式益回りは5.9%です。
年率リターンが5.9%だと、株式投資としてはちょっと物足りないかもしれません。

ただ、このPERの高止まりには別の要因もあると密かに思っています。

それは会計的な要因です。
具体的にいうと、時代遅れな無形資産の会計です。

無形資産会計が21世紀型の企業のビジネスに追いついていない為、PERが不当に高騰している面があるかもな~と思っています。

過去平均より高いPERにそんなにビクビク怯える必要はないと考えています。

 

 

 

20世紀の企業のビジネスモデルは大量生産大量販売でした。

大きな工場を建ててでっかい機械を稼働させて、大量の製品を製造する。
そして、それを世界中に輸出する。

今もそういうビジネスは変わらずあります。
ですが、21世紀になってビジネスのコアコンピタンスは特許や知的財産、ブランド力、人材といった無形資産に段々と移り変わっています。

すごい単純化すると、
20世紀:有形資産の時代
21世紀:無形資産の時代
と言えるかもしれません。

 

で、ここで問題なのは無形資産の会計処理がそういう時代の変化をキャッチアップできていないことです。

有形の工場建物や機械設備ってきちんと資産計上されて減価償却を通じて徐々に費用化されます。
費用は毎年少しずつなので、毎年の損益に与えるインパクトは薄まります。

100億円で工場建てても、その100億円は毎年2億円ずつ50年かけて費用化されていきます。

 

 

一方で、無形資産は資産化がとても難しいです、てか現状ほぼ不可能です。

ブランド力、顧客価値、教育レベルの高い人材、研究開発成果、こういったものをきちんとバランスシートに載せて評価することは実務的には大変困難です。
というか、無形資産を企業の判断で勝手にBS認識することは会計基準的に原則タブーです。

現代は工場の機械が富を生むというよりは、人の頭脳や情報が富を生みます。

特許収入が多いクアルコム。
ロイヤリティ収入が多いマクドナルド。
ソフトウェアを販売するマイクロソフト。
広告打ちまくってブランド力で売るコカ・コーラ。
(コカ・コーラは20世紀からですが。)

コカ・コーラってもはや製造業ではないですよね。
物を作って売ってるように見えて、利益の源泉は全くもって製造ではありません。
コカ・コーラはほとんどマーケティング会社だと思っています。

優秀な人材に対する給料や経営者報酬であっても、すべて払った瞬間に費用処理です。
マーケティングコストも費用処理です。
バランスシートの資産に計上されることは”ほぼ”ありません。

“ほぼ”というのは研究開発員の給料は資産化されることがあります。
(日本の会計基準ではありませんが、米国や欧州ではあり得る。)

普通の感覚として、給料とか経営者報酬、マーケティングコストって費用でしょっていうイメージをあなたもお持ちだと思います。

確かに、給料やマーケティングコストは会社にとって費用です。
あなたの毎月のお給料は、会社の帳簿で人件費としてbookされています。

でも本当にすべて費用でいいのでしょうか?
本当は資産としてバランスシートに一旦載せたうえで、建物の減価償却のように徐々に費用にしていく方が実態を表しているかもしれません。

なぜなら、現代のビジネスの収益の源泉はアイデアや研究開発、マーケティングだからです。

確実に売上に貢献しているマーケティング費用は、一度資産化したうえで徐々に売上高計上に応じて売上原価として費用化していく方が、実はより企業の実態を表した会計処理なのかもしれません。

しかし、そういうマーケティング費用や給料を資産化することは事実上不可能です。

これは仕方ないんです。。
想像するだけでも、難しいと思いませんか?

この会社のブランド価値は〇〇億円だ!
この研究開発プロジェクトの資産価値は〇〇億円だ!
この顧客リストには〇〇億円の価値があるんだ!
このマーケティングは〇〇億円の価値があるんだ!
っていうのを定量的に測定してバランスシートに反映するのはやはり難しいです。

今のところ米国でも欧州でも、これらの無形資産を資産化することは一部例外を除いてタブーです。

人件費もマーケティング費用もすべて費用処理。

 

 

で、この事実を株式投資家としてどう受け止めるべきか?

それは、現代の(特に高収益優良企業の)会計上の利益は不当に低く測定されている可能性があるということです。
それによって、PERは不当に高く測定されている可能性があるということ。

なぜなら、本来はバランスシートで資産化して徐々に費用化すべきコストを、すべて一括して費用化しているからです。
やむを得ず。

これって嫌なことに見えて、実は良いことかもしれません。

PERは割高割高って言われがちな昨今ですが、それは企業の利益が不当に低く測定された結果かもしれません。
利益(EPS)が低いと、PERは高くなりますね。

PER=株価 / EPS です。

株式投資が容易になった昨今の投資環境のおかげで株式のPERは高くなったと言われます。
本当にそれだけなのでしょうか?

企業の無形資産が会計的にBSで評価されず即PL費用処理されるがために、PERが高くなっている面もあるだろうと思っています。

EPSが下がっても株価はそれによって下がっているわけではないでしょう。
会計処理がどれだけ変わっても、キャッシュは変わりませんから。

「(会計上の)利益は意見、キャッシュは事実」です。
見かけの利益に騙されるほど、アナリストも機関投資家もアホではありませんから。

ということは、、実質的なPERはもうちょっと低いのかもしれません。
これは私の推測に過ぎない話ですし、その実質的なPERがどれくらいかと聞かれてもわかりませんが。

 

 

PERが高いと投資に不安を持つことがあるかもしれません。
確かにPERは大切な指標ですし、過去と比べてあまりにPERが高い時は投資に慎重になることも大切だと思います。

ですが、21世紀はこういった無形資産の会計処理の影響でどうしてもPERが高くなりがちだ、ということも頭の片隅に入れておいて欲しいです。

WSJなどでは「S&P500のPERは過去最高水準で割高!」という報道が散見されます。

でも私から言わせれば、現代の投資環境の改善・暴落の恐怖感の減退・時代遅れな無形資産の会計処理、を考えればPERが過去最高なのは何ら驚くべきことではありません。

「現代の投資環境の改善」と「暴落の恐怖感の減退」は純粋にPERを押し上げるものだと思います。
要するに、株式の収益性を落とします。

でも、後者の「時代遅れな無形資産の会計処理」は見かけのPERを悪化させているだけです。

PERが高い高いとビビッて投資を止めていれば、30年後振り返った時に後悔するかもしれません。

ということで、一見割高に見える局面でもコツコツ投資を続けましょう、という有り体な提案で記事を締めさせて頂きます。

 

追記

この無形資産会計の限界を特に感じたが、ソフトバンクの英ARM社買収でした。

ソフトバンクはARMを3.3兆円で買収しましたが、うち「のれん」が3兆円です。

これ、、めちゃくちゃですよね。

ARMの価値3.3兆円のうち、バランスシート上の純資産はたったの0.3兆円で、残りの3兆円はARMのバランスシートに載っていない無形資産の価値ということです。

ソフトバンクの孫社長はARMに無形の価値が3兆円あると判断したわけです。
その孫社長の判断が合理的か否かはわかりませんが、ARMに凄まじい無形資産価値があって、それがARMのバランスシートに載っていないという事実があるのは間違いないことです。

半導体の設計というARMの業種も関係しているのは理解できますが。。

ARMの技術価値、人材価値を評価してバランスシートに載せることは現代会計では不可能なんですね。

ARMには3.3兆円の価値があるけど、ARMのバランスシートでは0.3兆円しか表現できていない。
残りの3.0兆円はどこに隠されているのでしょうか・・
こういうM&Aがあればその隠れた価値が明るみに出ますね。
(孫社長の主観的な価値とは言え)

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