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残念ながら、、自社株買いの効果は完全には株価に反映されない→VZとかいい選択かも

   

先日、読者様からこんなご質問を頂きました。(takeさん、ご質問ありがとうございます。)

Hiroさん、こんばんわ。いつも勉強させていただいています。
質問が2つあります。
①アメリカ企業は自社株買いを積極的にしていますが、その企業が将来自社の株を売ることはあるのでしょうか?
(2つ目のご質問は割愛)

企業が自社株を買うのはいいけど、その後どうなるのか?
確かに疑問です。すぐには消却しない企業が大半ですから。

自社株は再び売られる?
そしたら、結局自社株買いをした意味はないのでは。。

ご質問を受けて、自分なりに色々と考えました。買い戻した自社株はどう利用されることがあるのか、それが株価に与える影響はどうなるのか、について。

特に書籍等で勉強したわけではありませんが、自分なりに考えたのでそれを記事にしました。正しいかはわかりませんが、自分なりの意見です。

平たく自分の結論から言います。
企業は買い戻した自社株を再び社外に流出させる可能性がある。で、マーケットはその可能性をある程度織り込むはずなので、自社株買いでの株数減少効果は株価には完全には反映されない。
というものです。

もっと平たく結論を言うと、「やっぱり自社株買いより配当の方がいいな~」ということです。

 

 

 

 

 

株式会社が稼いだお金を株主に還元する手段として、配当と自社株買いの2つがあります。

配当は言うまでもなく、配当金として株主にキャッシュを返すこと。もう一つの自社株買いとは、企業自身が市場から自社株を買い戻すことです。

前者の配当はわかりやすいですよね、株主にお金を送金するだけです。株主はキャッシュを貰えてハッピーです。

ちょっとわかりにくいのが後者の自社株買い。

自社株買いは既存株主が直接的にキャッシュを受け取れるわけではありません。企業が100億円相当の自社株買いをしても、株主の証券口座の残高は1円も増えません。

自社株買いをしても株主は1円も貰えないのに、自社株買いも立派な株主還元なんです。なぜかって、自社株買いをすることで発行済み株式数が実質的に減少して、将来の一株当たり配当が増加するからです。

企業が100億円分の自社株を買い戻せば、今後の株主一人当たりの取り分は多くなります。100億円の自社株買いは将来の配当を100億円増加させる効果があります。

つまり、自社株買いとは配当の後払い、配当の繰延です。

自社株買いは配当の後払いではあるんですけど、株主はすぐにその配当相当分の利益を享受できます。なぜなら、将来の配当増を織り込んで株価が上昇するからです。

株価は将来の一株当たり配当の現在価値です。

株価=将来の予想一株当たり配当 / 金利(割引率) です。

自社株買いは株主還元なので株主にとって嬉しいことなんですが、実際に配当増という現金入金があるのは将来なんです。そこが自社株買いのちょっと残念なポイントです。

でも、前述の通り将来の増配が織り込まれて株価は上昇します。

ってことは、自社株買いの本質が配当の後払いだとしても、結局その分株価が上昇するから別に問題ないじゃん!ってことになりますかね?
むしろ、インカムゲインではなくキャピタルゲインとして利益を得ることができるなら税務的にはお得とさえ言えるかもしれない!?

それは一概に間違っていないと思います。自社株買いは本来インカムゲイン(課税対象)として貰うはずだった配当を株価上昇というキャピタルゲイン(課税繰延べ)に転換する効果があります。

じゃあ、自社株買いの方がむしろ好ましい?
配当が将来に先延ばしされると言っても、結局株価に織り込まれるなら別に問題ないって思います?

この考えにはちょっとだけ盲点があります。

それは、自社株買いによる将来の一株当たりの配当増額効果は完全には株価には反映されないということです。

 

 

100億円の自社株買いをすると、こんな会計仕訳が起こります。

自己株式  100億円 / 預金 100億円

100億円のお金を払って(貸方:預金のマイナス)、100億相当の自社株という資産を獲得する(借方:自己株式のプラス)。企業は100億円という自己株を手に入れるのです。これは企業のバランスシートにしっかり載ってきます。(会計的には資産ではなく純資産マイナスだが)

企業が自社株買いをしても発行済み株式数は減りません。投資家が保有していた株式の所有権が企業自身に移転するだけです。

でも、企業はたとえ自社株を持っていたとしても自分自身に配当を払うことができないから、発行済み株式数は実質的に減少することになります。

実質的であれ、発行済み株式数が減少するからこそ将来の予想一株当たり配当が増えて株価が上昇します。

ここで、既存株主にとって一つの脅威が存在します。
自社株買いをしてもらっても株主は完全には安心できません。

その脅威とは、、せっかく買い戻された自社株が再び市場に出戻って発行済み株式数が実質的に増加してしまうリスクです。

企業が自社株を買い戻しただけでは、発行済み株式数は減りません。自己株の消却という手続きを踏まない限り発行済み株式数の実質的な減少にとどまり、真に減少することはありません。

ちなみに、自己株を消却すると 「資本剰余金 / 自己株式」という仕訳が起こり自己株式という名前はバランスシートから完全に姿を消します。

つまり、株主からすれば自己株の消却がされない限り、心から安心できないということです。

そうですよね?
だって、せっかく1億株を買い戻して実質的に株数が減少したのに、その1億株がまた市場に出回ってしまったら株数は減らないことになります。

買い戻した自社株が再び市場に出回る場合はどういう場合でしょうか?

自社株の使い道としてこんなパターンがあると思います。
①買収対価として自己株使う
②ストックオプションの行使対価として新株ではなく自己株使う
③増資で資金調達をするとき、新株発行ではなく自社株を使う

米国成熟企業の場合③は少ないと思います。営業CFが嫌でもガンガン降ってくる優良企業の場合、わざわざ増資をして資金を調達する必要は少ないです。③のために自社株を温存している可能性は低いと想像しています。

やはり需要があるのは①買収対価と②ストックオプションでしょうか。

子会社の完全子会社化や別企業を買収するときなど、買収のビジネス戦略も大事ですが、同じくらい財務戦略も大事です。買収は数千億円からケースによっては数兆円になる場合もあります。いくら財務格付けの高い優良企業といっても銀行から数千億円を調達するのは容易ではありません。手続きも面倒です。

そんな多額のお金が必要なM&Aに際して自社株があると便利です。自社株を買収の対価にすれば、わざわざ資金を準備する必要がないからです。(まあ、被買収企業の株主が対価として買収企業の株式を嫌がって現金対価を求めることも十分あるので、常に買収対価として自社株が使えるわけではありませんが。)

買収対価として自社株をばら撒いてしまうと、発行済み株式数が実質的に増加します。ただし、買収して新たなビジネスを買うので、その分利益が向上して配当総額の増加も期待できます。

買収対価として自社株を使うと、
一株当たり配当=配当総額 / 発行済み株式数 の分子と分母の両方が増加するイメージです。

だから、買収の対価として自社株を交付することが一概に悪いとは言えません。ただ傾向としてM&Aでは割高な対価を払いがちという問題があります。買収する企業の価値以上の自社株を交付してしまうリスクがあります。それは既存株主に経済的にマイナスです。

②のストックオプションのケースは、会社役員などが株式報酬として与えられた株式割安購入オプションを行使した場合に自社株を割り当てる場合です。ストックオプションは交付時点ですでに会計上費用として適切に処理されており(昔はストックオプションの費用処理制度がなくバフェットもめっちゃ批判していた)、ある程度は株価に織り込まれていると考えられます。

このように、自社株はせっかく買い戻しても再び市場に逆戻りする可能性があります。

 

 

企業は自社株を買い取ってもすぐには消却しません。上記のような使い道があるからです。

とりあえず消却せずに持っておこうと経営者は考えがちだと推測します。(だって自分がもし経営者だったら、たぶん消却しないもん。。)

「せっかく自社株を買い戻して発行済み株式数が実質的に減ったのに、もしかしたらまた市場に戻ってしまうかもしれない」というリスクを投資家は感じているわけです。

あなた自身がそのリスクを感じていなくても、マーケットはきちんとそのリスクを認識しています。そうやって自社株が再びマーケットに出回る可能性がいくらかは株価に織り込まれていると考えるのが合理的です。

1億株の自社株を買い戻してもその内1千万株はまた市場に戻るかもしれない、とマーケットが予測していればどうでしょう?
1億株の買い戻しのすべてが株価に織り込まれるでしょうか?

否。

すべては反映されないはずだと私は考えています。9千万株相当の買い戻し効果しか株価には反映されないでしょう。

自社株買いは立派な株主還元です。
あなたが投資している企業が自社株買いをしたら、大いに喜んで祝杯のビールを飲んでいいと思いますよ。

でもやっぱり、自社株買いは配当に劣ります。

配当を将来に繰り延べるのが自社株買いの本質です。確かに将来の配当増加効果は株価に織り込まれるはずです。でも、自社株買いの効果のすべてが即座に株価に反映されるとは思わない方が賢明です。

 

 

 

株主還元に積極的な優良企業の株が長期投資には適しています。その中でも、特に自社株買いよりも配当をたくさんしてくれる会社の方がより好ましいとは思います。

例えば、ベライゾンコミュニケーションズ(VZ)は配当利回りが4.7%近くもある高配当銘柄ですが、自社株買いはほとんど実施していません。株主還元はほぼ配当です。

この点、私はVZの配当再投資戦略には好意的です。S&P500平均を超えるトータルリターンをもたらしてくれると期待しています。

 - 投資理論・哲学