突然ですが、クイックQuize。
①81%
②30%
これは、直近の有価証券報告書から算出した以下の2つの会社の自己資本比率です。
(※自己資本比率 = 純資産 / 負債純資産合計)
東急電鉄と中外製薬。
①と②、どちらが東急電鉄かわかりますか?
どちらが中外製薬でしょうか?
自己資本比率が高いということはそのままですが負債純資産計(総資産)に占める、株主資本が厚いということ。
逆に自己資本比率が低いということは、負債の割合が高いということ。
つまりたくさん借金をしてレバレッジをかけているということです。
①より②の方が借金をたくさんしているということ。
この質問は、東急電鉄と中外製薬どちらの方が積極的に借金していると思いますか?
という質問に変換もできます。
答えです。
①が中外製薬で②が東急電鉄。
①81%(中外製薬)
②30%(東急電鉄)
なぜ二つの会社の自己資本比率はこんなに違うのでしょうか?
バランスシートの右側をどう構成するかを検討することも経営者やCFOの重要な仕事です。
偶然このような自己資本比率になったのではなく、両社の優秀な経営陣が熟慮したうえでのバランスシートなのです。
中外製薬が負債の節税効果を捨ててまで、これほど高い自己資本を保っているのはなぜでしょうか?
一見堅実経営に見える鉄道会社の東急電鉄が、自己資本比率たったの30%で積極的にレバレッジをかけているのはなぜでしょうか?
その理由は、両者のビジネスリスクの違いです。
製薬会社は万に一つの製薬開発成功が将来の業績を左右します。
過去に開発できた医薬品の特許には期限があり後発薬が出てくるため永続してキャッシュを生んでくれるわけではありません。
製薬会社のビジネスリスクは非常に高いということです。
ビジネスリスクが高いから、過剰な財務リスク(レバレッジ)はとれないのです。
鉄道会社はどうでしょう。
都内在住の人ならよりわかると思いますが、毎日何も考えずに電車に乗っていますし電車なしで都会生活を送るのは不可能ですよね。
都内の移動で鉄道は必要不可欠。
都内の鉄道事業ってバフェットが言う有料ブリッジなんです。
黙っていてもキャッシュは降ってくる。
鉄道会社のビジネスリスクは相対的に低いのです。
ビジネスリスクが低いから、財務リスク(レバレッジ)は多めにテイクできるのです。
企業のリスク = ビジネスリスク(BSの左) + 財務リスク(BSの右)
企業のリスクはこう分解できます。
資本主義社会でビジネスを継続するにはリスク管理が必須です。
稼ぐためにはリスクを取る必要があるけれどもリスクを取り過ぎてキャッシュが枯渇しては大変です。
なるべく儲けたいけど流動性リスクにも備える。
この微妙な最適均衡点を探った結果が両者の自己資本比率の違いとなって表れています。
ビジネスリスク | 財務リスク | 企業リスク | |
中外製薬 | 高い | 低い | 最適リスク |
東急電鉄 | 低い | 高い | 最適リスク |
資本主義社会ではリスクを取らないとお金は絶対に稼げません。
それは企業も個人も同じ。
リスクを管理することはリターンを狙うよりも大切なこと。
いつも増収増益の圧力に晒されている株式会社の経営者は自分たちがどれ位リスクを取ることができるのか必死に考えています。
ビジネスとはリスク管理です。
金融資産くらいリスクとれば
前置きが長くなりました。
みんななるべくお金を稼ぎたいですよね。
誰だって、お金はたくさん欲しい。
お金が欲しいから仕事していますよね。
普通のサラリーマンは誰だってそうです。
給料貰えるから、朝の満員電車も我慢できるんです。
サラリーマンがたくさんお金を稼ごうと思う時に考えるべきことは、企業と同じです。
リスク管理。
というかリスクテイクしろって話。
サラリーマン稼業も楽ではないです。
毎朝同じ時間に起きて、同じ満員電車に乗って朝9時から夕方18時まで(+残業)働く。
本当にご苦労様です。
でもね、残念ながら忙しさとリスクは関係ありません。
サラリーマン稼業はノーリスクです。
リスクフリー。
あなたが勤めている会社のビジネスリスクをテイクしているのは従業員のあなたではなくて株主です。
従業員はただ会社に雇われて給料という固定給と引き換えに労働サービスを提供しているに過ぎません。
従業員はビジネスリスクを負っていないから会社の業績が悪化しても毎月固定給を貰えます。
逆に会社の業績が好調でも、ちょっとボーナスが増えることはあっても給料はそんなに変わりません。
会社の業績変動の影響をもろに被るのは株主です。
会社が突然の業績悪化で大赤字に転落したら、株価が半減したりして株主の財布はズタズタに痛みます。
逆に最近の任天堂みたいに、業績好調な要素が出てくると株価が急上昇して儲かります。
何度も言っていますが、サラリーマン稼業はノーリスクです。
資本主義社会は基本的にリスクに見合ったリターンを与える仕組みなので、ノーリスクのサラリーマンの給料が安いのは当然です。
サラリーマンの給料は労働者の再生産費用でしかないと、マルクスは『資本論』で言っています。
毎日3食ご飯をたべて、ちょっと余暇を楽しむ、妻と子供を養う、こういったコストをちょうど賄える金額の社会的平均値が給料の金額として決定されていると言っています。
であれば普通のサラリーマンの生活はカツカツが普通ということになります。
だって給料がちょうどカツカツになるように決められているんですから。
そこを少しでも節約して、生活費を社会的平均値より低く抑制することで貯蓄をして金融投資に充てるわけです。
その金融投資にこそ、普通のサラリーマンが給料以外の収入を得て豊かになる道が隠されています。
中外製薬と東急電鉄の例を出しました。
サラリーマンのビジネスリスクは東急電鉄寄りですがその差は大きいです。
東急電鉄はビジネスリスクが低いだけであってゼロではありません、当然ですが。
一方でサラリーマンのビジネスリスクはゼロです。
中外製薬 >> 東急電鉄 >>>>>>>>>>>>>> サラリーマン
東急電鉄はビジネスリスクが低いから財務リスクをとっています。
借金をしてビジネスにレバレッジをかけている。
ではノーリスクのサラリーマンは同じく財務リスクをとって借金すべきでしょうか?
これは発想自体は間違っていません。
バランスシートの左側がノーリスクだから、右側でリスクテイクするという発想です。
でもここで大きな問題が発生します。
財務リスクをとって借金して、そのお金をあなたはどう使うのですか?
もしかして、定期預金ですか?(笑)
企業はビジネスをしているので、借金をしてお金を調達してそれをビジネスに投資して借入利率よりも高い利回りで投資すればいいです。
個人はどうでしょうか?
サラリーマンが借金してそのお金でゼニアの高級スーツ、クロケット&ジョーンズの高級ビジネスシューズ、ロレックスのデイトナ買って仕事したら高いリターンが出ますか(笑)?
ちょっと女子にはモテるかもね。
でもそれで給料なんて上がらないんです。
ノーリスクのサラリーマン稼業に資本をぶっこんでも意味ないんです。
どれだけ頑張っても固定給が基本のサラリーマン稼業に投資しても無駄。
だから自分でビジネスしている人は別ですが、サラリーマンしかしていない普通の人が財務リスクをとっても意味ないんです。
だから、金融資本でリスクをとるしか道が残されていないんです。
株式投資しかないんです。
せめて金融資本ではリスクをとらないと、あなたは全身ノーリスクマンになってしまう。
ここでリスクとらないのでどこでとるの?
資本主義社会はリスクに見合ったリターンを提供する社会と言いました。
そもそもリスクを全くとらないで、お金が欲しいとか言うのが虫が良すぎるのです。
私も含め起業して自分でビジネスする勇気も能力もない凡人サラリーマンが、唯一資本主義社会に参加してビジネスリスクをテイクできる場所が、左下の金融資本なんです。
もうここしか残されていないのです!
金融資本では全力でリスクを取るべき。
人的資本でもリスク取らない、財務リスクは取れない、そして金融資本でもリスク取らないって、もう人生逃げすぎです。
これは貧乏確定です。
金融資本でリスクを取るというのは、具体的には株式投資をするということ。
株式は価値が大きく変動しますし、短期的にも長期的にも価格が大きく変動します。
でもそういうものでしょ、だって株式投資はビジネスですから。
むしろ今まで資産の名目金額が毎日不変だったことに疑問を持つべきです。
諸行無常の世の中なのに、あなたの資産はなぜ不変なのですか。
ノーリスクだからです。
金融資本ではリスク取って多少の価値の変動があっても問題ないでしょ。
あなたにはサラリーマン給料と言う大きな人的資本があるじゃないですか。
サラリーマン給料は一種の確定利付債券です。
あなたはすでにバランスシートの左上に巨額の債券を保有しているのです。
だから、あなたがサラリーマンであるなら金融資本は全力で株式にぶっ込むべきです。
債券なんて買わなくてよい。
債券と株式は逆相関で損益が相殺されるからバランスよく投資しましょう、とか言うアホなFPに騙されてはいけない。
サラリーマン給料という億単位の債券を保有しておきながら、金融投資でも債券買ってどうするんですか?
30年超の長期間では株式の実質リターンは必ず債券を上回ります。
資本主義社会が崩壊しない限り。
日々の生活費を生活防衛資金として利率が低くとも普通預金に置いておくことは合理的です。
でもね、その生活防衛資金を超える部分、あなたがリスクに晒してもよいと決断した資金でまで債券に投資して一体全体何がしたいのですか?
生活防衛資金として生活費の2年分を確保しておきながら、毎月の積立投資で個人向け国債10年物を買ってる奴とか正直何を目指しているのか意味不明です、理解不能。
価値観は人それぞれだし、別に他人が合理的に資産運用していなくても私には関係ないのでいいんですけどね。
債券投資すべきなのは、人的資本でリスクを取っている人。
起業して自分で会社経営している人が、稼いだお金を債券で置いておくのは合理的だと思います。
人的資本で多大なリスクを負担しているから、金融資本ではリスクは抑えるという発想は自然。
要は全体として適切にリスクを取って、リスクを管理していくということ。
でも多くのサラリーマンに必要なのは、リスク管理ではない。
そもそも、リスクを取っていない人が大半だから。
まずは給料から貯蓄して金融投資を始めることがスタート。
そして金融投資は株式のみでOK。
サラリーマンの金融投資で債券は不要。
100%全力株式を強く推奨します。
他の記事で載せてくれているグラフが示すように、やはり長期では現金や債券よりも株式なのは歴史が証明しているのですね。
「現金や債券よりも株式」で私個人に関連する話として、
勤めている会社の確定拠出年金で月々の拠出を全額定期預金にしておりましたが、毎月給料を貰っているわけだから、リスクを取って先進国(MSCIコクサイ指数に連動)株式のインデックスファンドに変えました。
(信託報酬約0.22%)
今まで定期預金にしていた分もこの株式インデックスファンドに少しずつスイッチしています。
債券ではありませんが、現金(定期預金)よりも60歳までの長期間を株式に拠出する選択にしてみました。 会社が揃えてくれている商品ではこちらのインデックスファンドが一応、一番信託報酬が低いファンドです。 ゆっくりと株式が上昇していってほしいです。
羨ましい!
私が勤めている会社は月1万円を限度に確定拠出的な制度がありますが、そのような株式インデックスファンドは選べません。
30年レベルの長期であれば、株式投資が債券を上回るのことはほぼ確実です。
合理的な変更だと思います。
私も2017年からの個人型確定拠出はチェルシーさんと同じくMSCIコクサイ連動型でいくつもりです。
こんにちわ。
大分古い記事にメッセージを残してしまい、すみません…
確定拠出年金の話が出ていたので、ひとつ参考程度にお聞きしたいのですが、Hiroさんは現在個人型確定拠出年金は運用されているのでしょうか?しているとしたら、上記のようにMSCIコクサイ連動型1本なのでしょうか?
現在、確定拠出年金(私は企業型ですが)の運用見直し中で、この色々お得な制度を利用してリスクを取らないのは損かな、ということでビビりながらも野村外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)1本の運用にしてしまおうかと考えております。
お時間の余裕のある時に、参考程度に教えていただけると幸いです。
こんにちは。
いえ、古い記事まで読んで頂きありがとうございます。
>Hiroさんは現在個人型確定拠出年金は運用されているのでしょうか?
いいえ、私はiDeCoはやっておりません。
私の会社の場合、月々の拠出限度額が1.2万円(年14.4万円)になることがわかり、1万円ならもういいやと思いiDeCoは運用しておりません。
仮に私がiDeCoをやるとしたら、たわらノーロードのNYダウか、もしくはMSCIコクサイ連動の商品を選ぶと思います。
確かS&P500連動の対象商品はなかったはずです。
eMAXIS SlimシリーズのMSCIコクサイ連動の商品が、もっとも信託報酬が安かったと記憶しています。
(最近、投資信託やETFに関する情報に疎いので、間違っていたらすみません。)
MSCIコクサイ1本の運用で全く問題ないと、個人的には思います。
iDeCoとNISA(つみたてNISA)はフルに活用したいところですよね。
長期になればなるほど、非課税の恩恵がリターンに目に見えて表れます。