【MMM銘柄分析】3M(スリーエム)は50年超の連続増配記録を持つ優良コングロマリット
※2017年12月期決算データ反映、BSデータ追加、コメント刷新(2018/4/22)
S&P100構成銘柄を中心に米国企業の業績、財政状態、キャッシュフロー、株主還元状況について過去10年分のデータをグラフ化しています。
データソースはMorningstarです。
今回はスリーエム(MMM)をご紹介します。
スリーエム財務情報
基本情報
会社名 | スリーエム |
ティッカー | MMM |
創業 | 1902年 |
上場 | 1946年 |
決算 | 12月 |
本社所在地 | ミネソタ州 |
従業員数 | 91,536 |
セクター | 資本財・サービス |
S&P格付 | AA- |
監査法人 | PwC |
ダウ30 | ○ |
S&P100 | ○ |
S&P500 | ○ |
ナスダック100 | × |
ラッセル1000 | ○ |
地域別売上比率
セグメント別売上構成比
業績
キャッシュフロー
バランスシート
資産
負債純資産
株主還元
この記事を読むともっとこのグラフを理解できます!
連続増配年数
59年
バリュエーション指標等(2018/4/22時点)
PER:27.5倍 最新情報はこちら
配当利回り:2.5% 最新情報はこちら
配当性向:52% 最新情報はこちら
感想
スリーエムは、化学・電気素材技術を中核としたコングロマリットで、NYダウ30種構成銘柄にも名を連ねる米国を代表する企業の一つです。株式分割する前の2000年代前半には、スリーエム1社でNYダウの10%以上を占めていた時期もありました。
ポストイットを開発したことで有名ですが、ポストイットを含む消費財は複数ある事業の一つに過ぎません。2016年度から事業セグメントを変更しています。工業(Industry)、交通安全とグラフィック(Safety and Graphics)、ヘルスケア(Health Care)、電子機器とエネルギー(Electronics and Energy) 、消費財(Consumer)の5つの事業です。
グローバルでビジネスを展開しています。米国内売上比率は40%ほどで、日本を含むアジア太平洋、欧州等の米国外の売上高の方が多いです。
「経営の選択と集中」と言われる中スリーエムがこのような多角化経営に成功しているのは、数千件以上の特許を持っているからです。ただ特許を持っているだけならその特許の期限が切れたら収益は落ちます。しかし、スリーエムは過去の特許製品を応用して数多くの製品を開発し続けることで高い収益性を保っています。製品種類は5万5千種以上もあります。スリーエムの売上高研究開発費比率は5%以上ありますが、化学工業という業種を鑑みればかなり高い数値です。
財務データを見てましょう。
売上高はFY11以降は300億ドル前後でほぼ横ばいです。FY15とFY16が減収となっているのはドル高の影響が大きいでしょう。米国外売上比率は60%あるのでドル高には弱いです。FY17はドル安が進んだこと、またアジア・中国地域での業績拡大によって増収(実質)増益となりました。
グラフからは分かりずらいですが、FY17の純利益・EPSはFY16から微減しています。業績好調にもかかわらず減益となっているのは、昨年2017年の税制改革に伴う一時費用が発生したためです。米国外の留保利益に対して7.6億ドルの税金費用を計上しました。税金コスト考慮前ではEPSは前年比+12.4%です。実績PER27倍は実態を表していないので注意しましょう。一時的な税金コストを除外したFY17の調整後EPSは9.17ドルで、そこから計算されるPERは約23倍です。
キャッシュフローは美しいですね。毎年莫大なフリーキャッシュフローを稼いでいます。営業CFマージンは20%を超えており高収益。
バランスシートを見てみましょう。過去5年間で固定負債が増えて純資産が減っていることが分かりますよね。自己資本比率は54%から31%に低下しています。これは積極的な自社株買いによって純資産を減らしたためです。ここ5年間の自社株買い金額は219億ドルでフリーキャッシュフローとほぼ同額です。借入を増やしつつ、本業で稼いだ利益以上の資金を株主に返すことでレバレッジを高めています。低金利をうまく活用したバランスシート戦略を構築していることが分かります。収益向上のために負債を積極的に活用しつつも財務安全性を保った綺麗なBSです。
株主還元を見てみましょう。多額のフリーCFが毎年しっかり株主の元に還元されておりDPSは右肩上がりです。連続増配年数はなんと59年です。プロクター&ギャンブルの60年に匹敵します。配当性向52%で業績も好調が続いているので、今後の増配も問題なさそうです。