1970年代前半、ニフティフィフティ相場と呼ばれる時期がありました。一握りの優良企業のバリュエーションが飛びぬけて高くなった時期をそう呼びます。ニフティフィフティ(Nifty fifty)を和訳すると「素晴らしい50銘柄」です。

「素晴らしい50銘柄」にはフィリップモリスやファイザー、コカ・コーラ、ペプシコなどがありました。当時のS&P500平均のPER18倍に対して、これら50銘柄の平均PERは40倍を超えていました。

nifty fiftyの中でもとりわけPERが高く評価されていたのがジョンソン&ジョンソン(JNJ)です。当時のJNJのPERは57倍。益回り1%台で、インフレを加味すれば実質でマイナスリターンになります。誰がこんなバリュエーションで成熟企業のJNJを買うのでしょうか。マーケットは不思議です。

現代のアマゾンならわかりますが、当時すでに大企業だったジョンソン&ジョンソンをPER50倍で買えば、長期でも損をしそうなものです。

しかし。

なんと、ニフティフィフティ相場でジョンソン&ジョンソン株に投資して30年保有していれば、投資リターンは黒字なばかりかS&P500平均すら超えたのです。

これは驚くべきことです。無配のグロース株ではなく有配の大企業の株をPER50倍(S&P500平均の3倍超)で買って、株主リターンはS&P500平均を超えたのです。

なぜかと言えば、ジョンソン&ジョンソンが常に利益を上げ続けて複利で成長できたからです。1%台という低い益回りをカバーするくらいに大きく増益できたからです。箱根駅伝の復路で1位が出発して10分後にスタートしたのに、そこから一気にゴボウ抜きして優勝するようなもんです。凄まじい追い上げ。

後から振り返れば、PER57倍という当時のジョンソン&ジョンソンのバリュエーションは異常ではなかったわけです。結果論ですがそう言えます。ジョンソン&ジョンソンという広い経済的堀を持つ高収益な銘柄には、PER50倍という高い値段がついて然るべきなのかもしれません。

コカ・コーラやジョンソン&ジョンソンのような成熟企業は、PERが20倍を超えたらやや割高と見られがちです。

確かに、これらが普通の会社ならPER20倍はやや割高と言えるかもしれません。しかし、コカ・コーラやジョンソン&ジョンソンはniftyなんです。niftyな銘柄にはniftyなりの値段が付いて然るべきではないでしょうか。niftyな銘柄がPER20倍とS&P500平均よりちょっと高いくらいで評価されているのは、割高どころかむしろ割安と言えるのではないでしょうか。

今のJNJの予想PERは16倍。益回り6%。

投資に絶対はありません。「絶対儲かりますよ!」という証券会社の営業マンは信用できないですよね。未来は常に不確実ですから。

でも私は言いたいです。
「JNJに投資すれば(ほぼ)絶対儲かるよ!」って。

ジョンソン&ジョンソンほどNiftyな銘柄がPER16倍で売られているのが不思議に感じます。

マーケットは優良株の評価を常に間違っているんじゃないかって思います。

そんなの傲慢な発想だ!
マーケットはだいたい合理的なはずだ!
って思われるかもしれません。

そうですマーケットは合理的です。

逆説的ですが、マーケットは合理的だからこそ、優良株の評価を誤っているんじゃないかって思うのです。いや、誤っているというと語弊があるかな。う~ん、上手く言えないなあ。

なんだろう、、優良株の長期的な増益力をマーケットは理解しているのだけど、それを株価に織り込めてないと思うんです。織り込みたくても織り込めない。織り込まないんじゃなくって織り込めない。

なぜか?

長期的な増益を待てないからです。
待ちたくても待てないんです。

チャールズ・エリスが指摘する通り、現代の米国株式マーケットを支配しているのは個人投資家ではなく機関投資家です。多くのファンドマネージャーは短中期のリターンを出資者から求められているので、30年も保有銘柄の増益増配を待っている余裕はありません。待っている間にサラリーマンとしての定年を迎えてしまいます。ファンドマネージャーはサラリーマンです。

個人投資家はそんな制約はありませんが、大半の投資家は30年も気長に待つことはできません。人生の時間は有限ですから、30年も投資リターンを待てないのは自然だと思います。「年取ってから金持ちになっても仕方ねーな」って誰しも思うはずです。

マーケットとは自然なものではなく、極めて人間的なものです。なぜなら、マーケットを動かしているのは人間だからです。マーケットとは人間の感情そのものです。

ゆっくりお金持ちになりたい人がほとんどいない以上、ゆっくりお金持ちにしてくれる銘柄が過小評価されるのは当然とも言えます。

あなたは、ゆっくりお金持ちになることを許容しますか?
それともソッコーで爆益をゲットして、さっさと嫌な仕事を引退して悠々自適に過ごしたいですか?

どっちが正しいとかありません。与えられた人生をどう生きるかなんて人それぞれ。

もしあなたが「ゆっくりお金持ちになること」を許容するなら、是非ともジョンソン&ジョンソンのような銘柄を選んで欲しいです。

「JNJに投資すれば(ほぼ)絶対儲かるよ!」
って言いたいです。
(投資は自己責任でお願いしますw。)