直近2年間の米長期金利(米10年債利回り)のチャートです。

2017年は金利が上がるぞ上がるぞと言われ続ける中、低金利が続きました。しかし、2018年になって潮目が変わり金利は急上昇しています。10年債利回りは一時2.9%を超えました。近い内に3%を超えるかもしれません。

そしてこれは、直近2年間のドルインデックスのチャートです。米ドルがすべての通貨に対して強くなったのか、弱くなったのかを示したチャートです。

ドルは2017年から下がり続けています。

この2つのチャートを見て率直にどう感じますか?

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ほぼ完全に逆の動きをしていますよね。
米長期金利と米ドルは逆相関になっています。

米国は2015年末から利上げをしており、特に株式相場が順調だった2017年には3回の利上げを実施しました。米国の金利が上昇すれば、普通に考えればドル高になりそうなもんです。利上げすれば、米国債を始め米国の資産の収益性が高くなるので、ドルは買われそうなもんですよね。

しかし、実際はチャートでご覧の通りドルは逆に売られ続けています。

この米長期金利と米ドルの逆相関の動きをどう解釈すべきでしょうか?

為替の短期的な動きなんて予測できないし、為替を動かす要因は金利だけじゃないから、この逆相関を気にする意味なんてないという意見があろうかと思います。私はこっち派(気にしない派)です。

ただWSJなど読んでいると色んな解釈があるもんやな~とも思います。これ最近のWSJの記事の抜粋です。

居心地の悪い解釈は、米国債利回りの上昇とドル安は、米国資産の価値の今後必要となる割引を織り込んだ動きだというものだ。投資家は減税と財政支出拡大が米国経済に及ぼす影響を警戒している。今のところ米国債とドルは表裏一体なのかもしれない。

ウォールストリートジャーナルより


わっかりにくい表現(笑)!!

ドル安ってどういうことでしょうか?
そのままですが、ドルの価値が下がるってことですね。

2017年からドルの価値が下がり続けています。通貨と物価は表裏一体です。ドルの通貨価値が下がるってことは、米国の将来の物価上昇を示唆しているとも言えます。通貨供給量の割に経済が成長しなければ、通貨の価値は下がります(=物価は上昇する)。

WSJは何を言っているのかと言えば、最近の債券利回り上昇がもっぱら需要サイドに起因するもので、経済成長(供給サイド)を反映したものではない可能性があるということです。だから「居心地の悪い解釈」なんて言ってます。たとえば減税によって企業の資金繰りに余裕が出ても、それが配当や自社株買いで株主に還元されるだけで設備投資に回らない可能性があるということです。要するに「経済成長なき金利上昇」という考えです。

これを一般的に「悪い金利上昇」と言います。

減税や財政支出によってカネだけジャブジャブ増えて、それがインフレを引き起こすものの、企業利益はそれに追いつかない可能性があるということです。

2018年の金利上昇は「悪い金利上昇」なのでしょうか?

私はそうは思いません。金利上昇に伴う株価暴落からいち早く立ち直っているのがアップルやマイクロソフトなどのハイテク銘柄です。これら将来の利益成長が期待されている企業に対してマーケットは楽観的です。株式市場を覗けば、マーケットは決して将来の経済成長(企業の利益成長)に悲観しているわけではないことが分かります。

株式相場は将来の経済に観的
為替相場は将来の経済に観的
こんな感じでしょうか。

どちらが正しいか分かりませんが、株式相場の方がより信頼できると思います。株式相場の方がより合理的なマーケットになっている可能性が高いかなと。強い学術的な根拠はないですが。

ということで、最近金利上昇にもかかわらずドルが売られ続けていますが、それは特に心配しなくていいだろうというのが持論です。パウエルFRB議長も「経済の見通しは力強い」と議会で証言しています。

FRBの利上げペースが早まるリスクはありますが、まだまだ金利は低いです。2018年の利上げが予定通り3回だろうが4回に増えようが、歴史的に見ればまだまだ低金利です。株式相場の活況はもうしばらく続くと思います。